簡易地デジチューナー
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「日本の地上デジタルテレビ放送」の記事における「簡易地デジチューナー」の解説
総務大臣の諮問機関である情報通信審議会で2007年8月2日に出された第4次中間答申の中の「受信側の課題」の1つ、「超低価格チューナーの不在」という問題がある。この答申の中で具体的な提言として「2年以内に5,000円以下の簡易な地デジチューナーなどが……望まれる」としている。この提言を聞いたメーカー側は大反発した。2007年当時、5,000円以下ではほぼ作れないとされていたからである。 2007年12月25日、総務省とデジタル放送推進協会は「簡易地デジチューナー」製品の仕様のガイドラインを公表した。このガイドラインを基に、価格は5,000円以下を想定し2009年度中に発売するように家電メーカーに呼びかけた。仕様ではハイビジョン映像やデータ放送は受信できず、画質は現行のアナログテレビと同等の標準画質となり、1台のアナログTVに1台の地デジチューナーが必要となる(要は、従来のアナログ受像機でとりあえず地デジ放送を受信できるようにする目的)。また、2011年7月の地デジへの完全移行後も最大1,400万台のアナログTVが残ると予測され、安価な地デジ簡易チューナーを発売して大量のアナログTVの廃棄を避けることも考えている。 主に1980年代以前に製造されたテレビ受像機(リモコンの無い回転ダイヤル式や機械的にチャンネルを記憶するプリセット型ボタンを持ったもの)は、アナログ(VHF・UHF)アンテナ入力のみでRCA端子入力非搭載の機種が多い。また単体デジタルチューナーは従来のビデオデッキと異なり一部の機種を除きアンテナ切替スイッチやRFアダプター端子が無いので、これらの機種と接続する場合は従来のビデオデッキと併用するか別途RFモジュレータなどが必要。 仕様の比較対象の1つとして米国のCECB(英文版)がある。 超低価格チューナーの概算コスト(2007年末での価格、日経エレクトロニクス誌作成)MPEG-2/AACデコーダー・チップ:千数百円 RFチューナー+OFDM復号チップ:1,000円以上 MPEG-2、AAC、MULTI2、ARIB標準規格、などの特許使用料:700-800円 32Mbitフラッシュメモリ:約200円 256MbitDDRメモリ:500円弱 B-CASカードの取り扱い手数料:100円 その他電源、筐体、プリント基板、リモコン、抵抗器、コンデンサ、配線材、スイッチ、コネクタ、梱包材、マニュアル類 上記の部品などの原価だけでも2007年当時で4,000円以上になる。これにメーカーの製造経費と利益、販売店利益、配送コスト、アフターサポート経費、安全審査費用、更に宣伝経費なども加えると少なくとも5,000円を上回ることになる。2年後に半導体チップの価格が下がっても、全体コストの変化はほとんどない。ただ2011年の直前になって台湾や韓国のメーカーが数百万台から数千万台という日本の需要を目当てにシリコンRFチューナーとISDB-Tの機能をすべて1チップに搭載した半導体チップおよびソフトCAS認証化で超低価格化を行い、5,000円というチューナーが現れる可能性があるとされた。日経エレクトロニクスが2008年に日本国内メーカーの状況を取材した感触では、2009年夏の段階で最も下がっても8,000円程度ではないかとされていた。 低所得者への対策として、2009年度から生活保護世帯に地デジチューナーを無料配布されている。総務省は2008年8月末に2009年度の生活保護世帯向け地上デジタル放送の支援予算として128億円を要求し2009年度に40万世帯、2010年度で残る80万の生活保護世帯に地上デジタル放送を視聴できるようにするとしている。予算にはアンテナ設置支援も含まれる。 2008年7月19日付けのasahi.com(朝日新聞社ニュースサイト)の報道によるとNECエレクトロニクスが大規模集積回路(LSI)の生産コストを半分にする技術の開発に成功し、2008年秋にも国内のチューナー製造メーカーに供給することがわかった。NECエレクトロニクスはこの技術により、チューナーの5,000円程度での販売を目指すとしている。NECエレ社のWeb上でも「簡易なチューナーで大幅コスト削減に貢献できる」とされていたものがトーンダウンして、このニュースによって外部からNECエレ社に対して「すぐに5,000円チューナーが実現出来るような誤解を与える」というクレームがついたのか2008年10月現在は「本LSIの価格は未定であります。また、簡易なチューナーは今回開発されたLSI以外にも多くの部品やソフトウェアで構成されることになります。従い、簡易なチューナーの価格に関しては弊社のLSI価格だけでは決まりません。」と変更された。 2009年3月3日、DXアンテナは手頃な価格のDpa簡易地デジチューナー仕様に適合するものを4月10日から発売すると発表した。品番は「DIR710」で価格はオープン価格としている。またマスプロ電工も同日型式「DT620」を4月30日から発売とし、価格はオープン価格である。 2009年9月3日、総務省テレビ受信者支援センターは石川県珠洲市での「アナログ放送終了リハーサル」で使用する5,000台から8,000台の簡易チューナ購入の公募を開始。珠洲市役所を納入先とし、2009年11月30日を最終納入日とした。 2009年9月4日、流通大手のイオンはピクセラ製の簡易地上デジタルチューナーをジャスコ(現:イオン)他の系列481店舗で9月19日から4980円で発売すると発表した。本体のチャンネル切り替えボタンの省略やブリスターパックなどにより、5000円以下の価格を実現させた。これにより、答申から約2年で5000円以下の地上デジタルチューナーが実現することとなった。 2009年9月7日、総務省の「地デジチューナー支援実施センター」は経済的に地上デジタル放送を視聴するために必要な最低限度の機器の購入が困難とされる生活困窮世帯(NHK受信料全額免除世帯)に対して支給する「簡易チューナーとリモコンなど一式」の納入事業者を公募からアイ・オー・データ機器とバッファローの2社に決めた。公募は一般競争入札で2009年7月23日から8月12日までの短期間に行われ応札は12社。この落札した2社は千葉県または神奈川県の指定される物流倉庫にまとめて納品する。見込みは1社あたり約30万台、計約60万台、金額は2社計最大約25億円。 2009年9月18日、19日のイオンに先立ち西友が100店でダイナコネクティブ製の簡易地上デジタルチューナーを4750円で発売。
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