函館市交通局30形電車
(箱館ハイカラ号 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/08 18:15 UTC 版)
![]() |
この記事には参考文献や外部リンクの一覧が含まれていますが、脚注による参照が不十分であるため、情報源が依然不明確です。
|
函館市交通局30形電車 | |
---|---|
![]()
30形39号「箱館ハイカラ號」
|
|
基本情報 | |
運用者 | 函館市企業局交通部 |
種車 | 排形 排2号[1] |
改造所 | 札幌交通機械[1] |
改造年 | 1993年[1] |
総数 | 1[1] |
運用開始 | 1993年[1] |
主要諸元 | |
軌間 | 1,372 mm |
電気方式 | 直流600 V |
車両定員 | 30 人[1] |
自重 | 10.4 t[1] |
全長 | 8,076 mm[1] |
全幅 | 2,286 mm[1] |
全高 | 3,750 mm[1] |
台車 | ブリル 21E-1[1] |
主電動機 | 鳥羽 MT-60[1] |
主電動機出力 | 37.3 kW×2[1] |
歯車比 | 65:16[2] |
制御方式 | 直接制御[1] |
制御装置 | 泰平電機 KR-8[1] |
制動装置 | 直通ブレーキ SM-3[1] |
函館市交通局30形電車(はこだてしこうつうきょく30がたでんしゃ)は、1993年(平成5年)に登場した函館市交通局(現在の函館市企業局交通部。函館市電)の路面電車車両である。愛称は「箱館ハイカラ號」(はこだてハイカラごう)[1]。
概要
1992年(平成4年)の函館市市制施行70周年記念事業の一環として、除雪車(ササラ電車)排形排2号を1993年に旅客車として復元した車両である[3]。車種である排2号は1910年(明治43年)製造の旅客用2軸単車で、1937年(昭和12年)にササラ電車へ改造された[3]後、1992年(平成4年)の路線短縮まで活躍した[4]。
2022年現在、車掌乗務のうえ、期間と区間を限定し「箱館ハイカラ號」の愛称で運転されている[3](運用の変遷等の詳細は後述)。
-
運転台
-
営業運転中の車内の様子。車掌が乗務する。
歴史
製造から函館水電譲渡まで
1910年(明治43年)、天野工場(後の日本車輌製造東京支店)で15両が製作された。前身は現在の千葉県成田市で路面電車を運行していた成宗電気軌道(現:千葉交通)が導入した旅客用2軸単車デハ1形だが、同社の経営難から1918年(大正7年)に当時の函館水電(現在の北海道電力)が車両増備のためにこのうち5両を購入し、10形の36号 - 40号として就役した。なお、成宗電気軌道は1916年(大正5年)に成田電気軌道へ社名変更している。
余談だが、このデハ1形は他にも阪神急行電鉄へ4両が売却されており、うち3両は伊丹線用の47形、1両は電動貨車106となった。
函館譲渡後
成田電気軌道から購入した5両のうち4両は1926年(大正15年)1月20日の新川車庫火災および1934年(昭和9年)3月21日の函館大火で焼失したものの、39号だけは成田電気軌道由来の車両としては唯一被災せず、1937年(昭和12年)まで旅客車として運行されていた。なお新川車庫火災にともなって39号車は同じ成田車で被災廃車となった37号車の番号を繰り上げ使用して37に番号変更した。
ササラ電車への改造
1937年(昭和12年)3月[2]に除雪車(ササラ電車)に改造され、排形排2号として1992年頃まで使用されている[4]。
成田電気軌道時代から使用していたマウンテン・ギブソン(イギリス)製の台車からブリル製のものへ振り替えられたが、どの時点で振り替えが行われたかは資料に乏しく現在もはっきりとしていない。
旅客車への復元
1988年(昭和63年)7月、戦時中に出征した男性職員に代わって運転士や車掌を務めた女性ら9名が「チンチン電車を走らせよう会」を結成し、明治期の路面電車の復元と運行を企画したのがきっかけである[5]。1992年(平成4年)の函館市市制施行70周年記念事業の一環として[3][6]、車体は旅客車時代の図面を元に札幌交通機械にて現在の基準に適合した半鋼製車体を新製し、旅客車時代の内装や籐製のつり革などを含め忠実に再現した。1991年(平成3年)復元作業に着手、1993年(平成5年)8月1日完成し、翌2日から営業運転を開始した[5]。
主要機器類はササラ電車時代の部品を整備の上使用している。そのため、台車にはササラ電車時代から使用しているブリル製台車が整備の上使用されており[3]、成田電気軌道時代のマウンテン・ギブソン製の台車とは異なっている。なお、2018年(平成30年)の営業開始前には、復元後初となる車体塗装の塗り直しや窓ガラスの交換、前面行先表示幕の差し替え(英語表示追加、字体変更)が実施されると共に、車内放送装置も一新され英語での放送が加わった[7]。
運用
-
函館駅前付近を行く「箱館ハイカラ號」
-
函館の有名な観光スポット、基坂付近を走る。
-
五稜郭公園前折返しだった頃の函館ハイカラ號(2007年、十字街)
-
末広町の函館市地域交流まちづくりセンター前を行く函館ハイカラ號
1993年(平成5年)8月より「箱館ハイカラ號」の愛称で運行を開始した[1][3]。当初は始発便及び最終便を除いて松風町 - 谷地頭・函館どつく前間の運行であった[1]が、1995年(平成7年)に五稜郭公園前まで運行区間が延長され[8]、更に2009年(平成21年)からは駒場車庫前発着となっている[9]。
2022年現在は、駒場車庫前→函館どつく前→駒場車庫前→谷地頭→駒場車庫前→函館どつく前→湯の川→駒場車庫前 という運転となっている[3]。
運行期間は4月中旬 - 10月31日となっている。
- 2017年までは木曜日 - 翌週月曜日を運行日としていて、火・水曜日を基本的に点検のための運休とし、他に降雨時や交通規制時には運休としていた[10]。
- 2018年は基本的に期間中の土曜日・日曜日・祝日のみの運行となった[7][11]。ただし、ゴールデンウィーク期間中・お盆時期(通常8月9日 - 14日)・最終日となる10月31日などは曜日に関係なく運行される[11]。この形式による運行は、1910年(明治43年)に制作された車両の老朽化が進んでいるために、延命措置として行われる事になったものである[12]。
- 2019年の運行も2018年と同様、4月15日~10月31日の土日祝日のみ運行。ただし、降雨のため実際の運転開始は4月20日からとなった[13]。
- 2020年から2021年にかけては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定されていた4月15日~10月31日の運行がすべて取りやめとなった[14][15]。2022年も当初は運行していなかったが[16]、7月に感染者の減少が見られたことから、7月9日に1日3往復の形で運行が再開された。運行期間は7月9日 - 10月31日までの土曜・日曜・祝日と8月21日および10月31日 (予定)。悪天候時と新型コロナウイルスの感染状況等によっては運休もあるとしている[17][18][3]。
特別運行
2013年は函館の路面電車開通100周年で、それの記念として530号、排4号、723号、9602号とともに一列になって全線を練り歩く「電車大行進」というイベントが行われた。この時の39号は大正時代の花電車を思わせる全身に花をまとった姿で登場した[19]。
また、毎年8月1日~5日に行われる函館港まつりのパレード「ワッショイはこだて」にも装1~3号車「花電車」とともに参加している。このとき、運転士および車掌は他の電車同様、お祭り仕様の服として法被姿で乗務している[20]。
ロケーションシステム
現在、箱館ハイカラ號の現在地や選択した電停への到着時刻を表示するロケーションシステム[21]が導入され、インターネットを介してパソコン・スマートフォン・タブレットPCで調べる事が可能となっている[22][3]。
その他
復元完成後にもう一両の復元を企画されたが、適当な種車がなく実現しなかった[5]。
関連グッズ
函館市企業局交通部では、箱館ハイカラ號をモチーフとした、ダイキャストカー、プラモデル、サブレ等のオリジナルグッズを販売している[23]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 早川 1994, p. 150.
- ^ a b 路電ガイド, p. 374.
- ^ a b c d e f g h i “箱館ハイカラ號の運行開始のお知らせ”. 函館市企業局交通部 (2022年7月1日). 2022年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月16日閲覧。
- ^ a b 岩成 2014, p. 62-63.
- ^ a b c 函館西部地区Ⅲ 内陸部 p.14
- ^ 早川 2011, p. 163.
- ^ a b “化粧直しで準備万端 ハイカラ號が試運転”. e HAKODATE.com HAKODATE NEWS HEADLINE 函館地域ニュース by 函館新聞社 (2018年4月13日). 2018年9月16日閲覧。
- ^ 早川 2000, p. 171.
- ^ 早川 2011, p. 162.
- ^ “箱館ハイカラ號の運行について”. 函館市企業局交通部. 2017年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月13日閲覧。
- ^ a b “箱館ハイカラ號の運行について”. 函館市企業局交通部. 2018年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月13日閲覧。
- ^ 北海道新聞 函館版 地域の話題 2018年3月23日記事、2018年5月30日閲覧
- ^ “観光シーズン到来 箱館ハイカラ號運行開始”. 函館新聞電子版. 2019年4月21日閲覧。
- ^ “「箱館ハイカラ號」通常運行休止のお知らせ”. 函館市企業局交通部. 2020年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月13日閲覧。
- ^ “箱館ハイカラ號の通常運行休止について”. 函館市企業局交通部. 2021年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月13日閲覧。
- ^ “箱館ハイカラ號の運行開始延期のお知らせ”. 函館市企業局交通部. 2022年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月13日閲覧。
- ^ 北海道新聞 函館版 地域の話題 2022年7月6日記事『ハイカラ號 再開へ 3年ぶり 9日から定期運行』、同日閲覧
- ^ 北海道新聞 函館版 地域の話題 2022年7月10日記事『函館観光 ハイカラ號でGO 3年ぶり定期運行開始』、同日閲覧
- ^ “函館市電の顔が勢揃い、100周年記念イベントレポート”. 函館公式観光情報 はこぶら. 2018年10月7日閲覧。
- ^ “函館港まつり その2”. DRFC-OB デジタル青信号 (2015年9月25日). 2018年10月7日閲覧。
- ^ 函館市電ハイカラGOロケーションシステム
- ^ “『箱館ハイカラ号』の現在の走行位置、スマホで確認”. 函館公式観光情報 はこぶら. 2018年10月7日閲覧。
- ^ “市電グッズ”. 函館市企業局交通部. 2022年8月13日閲覧。
参考文献・資料
- 岩成政和 「東北北海道最古の電車の一世紀 函館百年の計」『路面電車EX 2013年Vol.01』、イカロス出版、2014年4月。
- 『路面電車ガイドブック』誠文堂新光社、1976年、403頁。
- 北海道新聞社「函館の路面電車100年」北海道新聞社、2013年。
- 早川淳一「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 1994年7月号臨時増刊』第44巻第7号、鉄道図書刊行会、1994年7月。
- 早川淳一「函館市交通局」『鉄道ピクトリアル 2000年7月号臨時増刊』第50巻第7号、鉄道図書刊行会、2000年7月。
- 早川淳一「函館市企業局交通部」『鉄道ピクトリアル 2011年8月号臨時増刊』第61巻第8号、鉄道図書刊行会、2011年8月。
- 茂木治 『資料 函館西部地区Ⅲ 内陸部』 2010年
関連項目
箱館ハイカラ號
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 07:19 UTC 版)
「函館市企業局交通部」の記事における「箱館ハイカラ號」の解説
使用される車両の詳細については「函館市交通局30形電車」を参照 箱館ハイカラ號 切符を発売する女性車掌 「チンチン電車」として観光客向けに走らせている。元々は成田市の成宗電気軌道で運行されていた車両で、1918年に函館に譲渡され客車として運行されていた。その後1937年にササラ式除雪車に改造され、1991年(平成3年)策定の函館市交通事業健全化計画に基づく乗客誘致策の一つ、および1992年(平成4年)の函館市制70周年記念事業の一環として当初の姿に復元された。運転士のほか車掌も乗務しており、おもに女性車掌が切符を発売・回収している。 系統番号は表示せず、駒場車庫前 - 谷地頭・函館どつく前の運転を基本とする。出入庫および関連便で湯の川 - 駒場車庫前・谷地頭・函館どつく前が設定されるほか、8月の旧盆を含む繁忙期はかつて基本系統であった五稜郭公園前 - 谷地頭・函館どつく前を設定の上で増発される。 運行期間は4月中旬 - 10月31日となっている。 2017年までは木曜日 - 翌週月曜日を運行日としていて、火・水曜日を基本的に点検のための運休とし、他に降雨時や交通規制時には運休としていた。ただし火・水曜日が祝日または最終日とその前日が該当する場合などは運行することがあった。 2018年からは、基本的に期間中の土曜日・日曜日・祝日のみの運行となる。ただしゴールデンウィーク期間中・お盆時期(通常8月9日 - 14日)・最終日となる10月31日などは曜日に関係なく運行される。 その年の通常運行日については、各停留場に掲示の箱館ハイカラ號時刻表・車内や乗車券販売所で配布のパンフレット・函館市のホームページに記載がある。 運賃は通常と同じで、現金以外に次の乗車券・カード・利用証が使用できる。 券種摘要市電一日乗車券 市電・函館バス共通一日乗車券・2日乗車券 ICAS nimocaを含む全国相互利用交通系ICカード 2017年4月15日運行開始から。ただしこの場合は乗車ポイントは付与されず、乗継もできない。PiTaPaは使用不可。高齢者交通料金助成事業及び函館市障害者等外出支援事業の助成対象とならない。 市電・函館バスの乗換・乗継乗車券 大人運賃210円を超えた分は運賃から210円を引いた額を現金で支払う。半額対象となる小児・身体障害者手帳または療育手帳を提示した身体障がい者と知的障がい者及び同行の介護人(障がい者については後述)は、5円の端数は10円単位に切り上げの半額となる。 回数券 市電・函館バス共通。額面を超えた分の差額は現金で支払う。 [定期券] 全線定期券昼間割引全線定期券市電全線定期券市電バス昼間フリー定期券市電バス全線定期券 全線 普通定期券学生等割引定期券 市電専用または市電・函館バス共通の市電に乗車可能のもので、指定された区間のみ。ただしIC定期券でチャージ残高がある場合は乗り越し精算可能。 函館市障害者等外出支援事業(身体・知的障がい者)対象者のうち、施設等に通所(通学)している人の無料利用証 2018年(平成30年)3月31日まで 函館市障害者等外出支援事業(精神障がい者)対象者のうち、施設等に通所している人の無料利用証・半額利用証 2018年(平成30年)3月31日まで また、次の乗車券・カードは使用できない。 券種摘要PiTaPa トワイライトパス 販売期間・使用時間がそれぞれ運行期間外(通常1月3日 - 3月31日)・運行時間外(18:00 - )であるため利用できない。 [下記の磁気タイプ乗車カード] イカすカード バス・市電共通乗車カード 函館市の「高齢者交通料金助成事業」に基づく高齢者交通料金助成専用乗車カード 函館市障害者等外出支援事業(身体・知的障がい者)対象者のうち、施設等に通所(通学)していない人が交付された乗車カード 函館市障害者等外出支援事業(精神障がい者)対象者のうち、施設等に通所していない人が交付された、または助成券により半額で購入した乗車カード 函館市障害者等外出支援事業(戦傷病者)対象者が交付された乗車カード 函館市障害者等外出支援事業(原爆被爆者)対象者が交付された乗車カード
※この「箱館ハイカラ號」の解説は、「函館市企業局交通部」の解説の一部です。
「箱館ハイカラ號」を含む「函館市企業局交通部」の記事については、「函館市企業局交通部」の概要を参照ください。
- 箱館ハイカラ号のページへのリンク