症候性パーキンソン症候群
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「パーキンソン症候群」の記事における「症候性パーキンソン症候群」の解説
症候性パーキンソン症候群とは変性・代謝異常以外の疾患で病変がたまたま黒質線条体を障害したためにパーキンソン症候群が出現する病態である。 脳血管障害性パーキンソン症候群 ラクナ梗塞後、特に多発性ラクナ梗塞に発症することが多い。ラクナ梗塞は大脳基底核に好発するためと考えられる。ビンスワンガー型白質脳症でパーキンソニズムを呈することもある。 正常圧水頭症 詳細は「正常圧水頭症」を参照 薬物性パーキンソン症候群 多くの薬剤の副作用として起こる。服用後数日から数週間で発症することが多い。またパーキンソン病と異なり左右対称性に症状が発現する傾向がある。女性・高齢者で起こりやすく、同じ薬剤なら服用量が多いほど起きやすい。ジスキネジアやアカシジアといった不随意運動を伴いやすい。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルなどで確認できる。以下の薬剤で起こる。ドパミン拮抗作用のある薬剤 - 抗精神病薬や抗うつ薬、制吐薬などドパミン受容体のうちD2受容体のブロックにより惹起される。フェノチアジン系 - クロルプロマジン、レボメプロマジン、フルフェナジン、チオリダジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロペリシアジン、トリフロペラジン ブチロフェノン系 - ハロペリドール、フロロピパミド、モペロン、スピペロン、チミペロン、ブロムペリドール ベンザミド系 - スルピリド、スルトプリド、ネモナプリド、チアプリド 非定型抗精神病薬 - ペロスピロン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン(クエチアピンは他の抗精神病薬に比べて副作用が出にくいといわれており、パーキンソン病における幻覚や妄想などの精神症状に対しても使用されている) 三環系抗うつ薬 - イミプラミン、クロミプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、ノルトリプチリン、ロフェプラミン、トリミプラミン 四環系抗うつ薬 - マプロチリン、ミアンセリン その他の抗うつ薬 - トラゾドン、パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン 消化性潰瘍薬 - ラニチジン 制吐薬 - メトクロプラミド、イトプリド、オンダンセトロン、ドンペリドン(ドンペリドンは比較的副作用の発現頻度が低いため、抗パーキンソン薬の主な副作用である悪心・嘔吐に対して用いられる。これに対して最も一般的な制吐薬であるメトクロプラミドは、副作用発現頻度が高いためほとんど用いられない) カルシウム拮抗薬以前脳代謝改善薬として使用されていたシンナリジンによるパーキンソニズムの副作用が多かった。現在日本ではこの薬剤は販売されていないため、カルシウム拮抗薬によるパーキンソニズムは頻度が減少した。 血圧降下薬レセルピンは中枢性血圧降下薬であるが、その作用機序がシナプスのドーパミンを枯渇させるというものであるため、本来の作用としてパーキンソニズムを誘発しやすい(この作用から、かつては抗精神病薬として用いられていた)。 その他頻尿改善薬、免疫抑制剤、抗がん剤、認知症治療薬、抗てんかん薬がパーキンソニズムを起こすことが報告されている。 中毒性パーキンソン症候群 一酸化炭素、マンガン、水銀、MPTP(1-メチル4-フェニル1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)などの中毒によってパーキンソン症状が引き起こされることがある。マンガン中毒 マンガン中毒によるパーキンソン症候群は固縮、動作緩慢、歩行障害、突進現象などの点ではパーキンソン病に似ているが振戦は稀で症状の非対称性も顕著ではない。マンガン中毒はマンガン鉱山で働いていた人や皮なめし業に従事していた人に起こりえる。頭部MRIでは淡蒼球にT1WIで高信号域を示すのが特徴である。治療は暴露中止である。L-DOPAの反応はよくない。 一酸化炭素中毒 一酸化炭素中毒は炭鉱爆発、ガス中毒、練炭などの不完全燃焼、自動車の排気ガスの吸入などで起こる。急性中毒症状はめまい、吐き気、意識障害などである。急性中毒症状から回復して2週間から1ヶ月半の後に再び脳症を起こすことがある。これをDelayed encephalopathyという。症状は意識障害、失外套症候群、認知症、ジストニアなど不随意運動、パーキンソン症候群、総脳失調である。運動症状はパーキンソン症候群が多いがパーキンソン症候群のみを示す例は少ない。CTでは淡蒼球に両側性に空胞化があり壊死を反映する。臨床経過は改善するものもあるが、急性期から回復した後神経症状を呈し、それが進行するものもある。 二硫化炭素中毒 二硫化炭素は無色の液体で、硫黄、リン、樹脂、ゴムを溶かすのに使用され、ビスコースレーヨンや殺虫剤の製造でも使用される。揮発性が高く、皮膚からも吸収される。換気のよい職場で使用しないと中毒に至る。症状は小脳失調、パーキンソン症候群、末梢神経障害が主であるが脳障害を起こして認知機能低下を起こすこともある。頭部MRIでは広範な白質、大脳基底核、脳幹にT2延長病変が認められる。 MPTP MPTPは実験的パーキンソン症候群の作成によく用いられる物質である。自家製麻薬の副産物としてできるため麻薬施用者のなかからパーキンソン症候群を示すものが出現した。急性発症であり、固縮、動作緩慢、姿勢反射障害、歩行障害を示すが振戦は少ない。Wearing offも出現することがある。パーキンソン病治療薬で劇的に改善する。 脳炎後パーキンソン症候群 1918年ごろに世界的に流行した嗜眠性脳炎(英語版)(エコノモ脳炎)感染後のパーキンソニズムが有名である。レナードの朝で扱われている。その他の脳炎(日本脳炎など)や脳炎以外の感染症(クロイツフェルト・ヤコブ病、神経梅毒など)にも合併する。 クロイツフェルト・ヤコブ病 傍腫瘍性パーキンソン症候群 傍腫瘍性神経症候群では辺縁系脳炎や脳幹脳炎の形をとることが多く、記憶障害、認知症、脳神経障害、錐体路障害、小脳障害などを示すことが多くパーキンソン症候群を示すのは稀である。 腫瘍性パーキンソン症候群 前頭葉を両側にひろく侵す脳腫瘍の場合はパーキンソン症候群を示すことがある。 外傷後パーキンソン症候群 ボクサーのように何回も頭に閉鎖性外傷を受けるものはパーキンソン症候群を示すことがある。 心因性パーキンソン症候群
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