生態系と漁業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 05:27 UTC 版)
太平洋より種族数が少なく固有種も乏しいことから、日本海の形成時代はあまり古くないといわれている。カニなどの沿岸性底動物は一般に豊富で、能登半島を境にしてその動物相にやや変化がみられる。太平洋岸に比べ、対馬暖流の影響で南方系種族の北限がはるか北方に延びている。例を挙げると、サザエは日本海側では青森でも漁獲されるのに対し太平洋側では関東以北には現れない。 プランクトンは沿海沖の冷水域および陸棚上に多く、中央部に乏しい。種類は対馬暖流系の暖水種と、リマン寒流系の冷水種に分けられるが、両者の分布は水塊分布ほど明確に区分されず、混在海域が広い。北方系の魚類としては、ニシン、サケ、マス、タラなどがあり、南方系の魚類としてはやや温帯性に属するブリが多いが、乱獲が問題となっている。魚類としてもっと重要なものは温帯性のマダイ、マイワシ、サバ、カレイなどである。これらの分布を太平洋と比較すると、次のような特徴がある。 南方系魚類の回遊範囲は太平洋岸より北上し、北方系魚類の境界ははるかに南下している。 カツオ、マグロが少ないので、日本海中央のサバ延縄漁業以外に遠洋漁業が発達しない。 表層水は夏に高温になるが、わずか下層では寒冷となるため、表層でイワシ、サバ、タイなど温暖水魚がとれ、深海や海底ではタチウオ、タラなどの冷水魚が獲れる。 また古来からクジラの回遊経路として知られ、かつて沿岸には多数の捕鯨漁村が存在した。これらのほとんどは捕鯨により激減したため今では稀にしか見られないが、ヒゲクジラでは珍しく大規模な回遊を行わないミンククジラやナガスクジラの個体群も存在する。
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生態系と漁業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 04:17 UTC 版)
ヴィクトリア湖は代表的な古代湖とされ、多くの固有種が進化し生息する『ダーウィンの箱庭』としても有名だが、近年ナイルパーチというスズキ亜目アカメ科の全長2mを超す肉食の外来魚が食用として放流されて定着し、湖の固有種が激減している。ナイルパーチが放流されたのは1950年代、イギリス植民地政府の水産局の役人が導入したのが始まりとされる。1980年代にはヴィクトリア湖北岸で大繁殖し、南岸にもその勢いで押し寄せた。これまでにハプロクロミス亜科のシクリッド数百種が姿を消し、そのうちの多くは絶滅したと考えられている。また、「ンゲゲ」(ngege)と呼ばれる固有種のティラピア(Oreochromis esculentus)も絶滅した。食用に加工されたナイルパーチはヨーロッパや日本へ輸出されており、ヴィクトリア湖周辺の地域にとって重要な外貨獲得源となっている。ナイルパーチによる生態系の破壊とその輸出で支えられている近郊の社会の貧困と荒廃は、ドキュメンタリー映画『ダーウィンの悪夢』にも取り上げられた。もっとも、この映画の内容に関しては、事実に基づいていないとしてタンザニア大使が抗議を行い、現地の専門家などからも疑問の声が上がるなど、信憑性を疑問視する声も多い。また、固有種とは別のティラピアも放流され、繁殖している。 一方で、これらの漁業が沿岸地域の産業を支えていることは否定できない。ヴィクトリア湖での漁獲高はタンザニアの総漁獲高の半分を占め、インド洋などの海水面やタンガニーカ湖、マラウィ湖などをすべて合わせたものとほぼ同じである。ナイルパーチは主に輸出に回される一方、タンザニア国内で好まれ消費されるのはティラピアであり、湖畔だけでなく海に面した首都ダルエスサラームなどでも消費され、重要なタンパク源となっている。湖岸の都市にはナイルパーチの加工場が立ち並ぶようになり、ナイルパーチ漁業の隆盛によって30万人の雇用が生まれたとされる。北岸のウガンダにおいても漁業は重要な産業となっており、2007年の国内総生産の実に12%、総輸出の7.0%を占め、水産物はコーヒーに次ぐ輸出品目となっている。ウガンダにはアルバート湖やナイル川などもあるものの、漁獲の大きな部分はヴィクトリア湖が占める。タンザニア同様にウガンダでもナイルパーチとティラピア漁業は重要な輸出産業となっており、1990年代から韓国系やインド系の漁業会社が進出して基幹産業の一つとなった。しかし乱獲によってナイルパーチの漁獲も激減し、1990年代の輸出が160万トンあったものが2008年には28万トンにまで減少した。南岸のタンザニア側においてもナイルパーチの漁獲高は減少気味で、ムワンザ市の水産研究所の調査漁においては、1998年には91%にものぼったナイルパーチの漁獲比重が2005年には69%にまで低下し、その減少分は一時減少していたシクリッドの回復によって埋められた。 赤道直下にある湖では、水温が高いため、嵐が発生しやすく、突発的な強風による高波で、小型船が破損・転覆する事故が多く、毎年約5000人の漁民が命を落としている。 湖の中には住血吸虫がいると言われ、泳ぐことはできない。もともと浅く、湖底と湖面との対流が活発に行われるうえ、栄養塩類も周辺河川より大量に流れ込むことから富栄養湖であり、透明度も低く、多くの漁獲を湖岸住民にもたらしてきたが、近年ではキスムやムワンザ、カンパラといった沿岸都市からの生活排水、沿岸の農園や牧場からの水の流入、沿岸域の湿地の開発による消失などによって湖水が著しく富栄養化し、それによってホテイアオイやパピルスなどの外来種の水草が大繁殖したことにより、交通や漁業に支障をきたした。さらに1980年代末からは赤潮も発生するなど、水質汚濁も問題となっている。この環境悪化を食い止めるために世界銀行の主導で1994年より、沿岸3カ国によってホテイアオイの制御などを目的としてヴィクトリア湖環境管理プロジェクトが実施された。
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