猟奇ブーム─エロからグロへとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 猟奇ブーム─エロからグロへの意味・解説 

猟奇ブーム─エロからグロへ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 15:37 UTC 版)

鬼畜系」の記事における「猟奇ブーム─エロからグロへ」の解説

出版界1929年から1931年頃にかけて「変態ブーム」に代わり拷問刑罰犯罪科学まつわる学術書籍が相次いで刊行されるなど「猟奇ブーム」で沸いた。これは「エロ」が露骨な弾圧食らうようになってきた背景があり、エロが駄目なら「グロ」を主軸展開しようということだった。 当時流行した刑罰もの」のモチーフは、刑罰史から姦淫刑罰宗教刑罰歌舞伎の残酷演劇伊藤晴雨責め絵まで幅広く変態風俗本と同様にジャンル横断的に網羅していた。また、刑罰ものは単に猟奇趣味好奇煽るだけでなく、歴史風俗史料という言い訳が可能で、図版修正入れなくても当局監視下で堂々と出版できるという抜け道があった(性科学系の文献雑誌は、学術誌であると同時に性的欲望満たすエロ本としても機能していた)。 日本近代司法における第一号の犯罪心理学者寺田精一と言われており、1910年代から22年まで研究成果発表している。変態心理学精神病理学では1910年代民間学者による「変態性欲」の通俗的研究が行われた ように犯罪心理学猟奇犯罪心理通俗的研究の対象となった1930年には犯罪心理学建前とした猟奇雑誌犯罪科学』(武侠社)が創刊され1932年まで続刊した。主幹田中直樹その後後継誌『犯罪公論』(文化公論社)を発刊しエログロ雑誌界を風靡した。 特に有名なものが、各界権威招いて1929年から全16巻刊行した犯罪科学全集近代犯罪科学全集』(武俠社)である。秋田昌美著書『性の猟奇モダン』で「この全集出たこと自体日本出版界においての大事件だったというべきだろう。それを可能にしたこの時代エロ・グロ・ナンセンス沸き立った熱い戦前一時代だったのである」と評価している。 1930年昭和5年)頃には、エログロナンセンス頂点達し死体写真集相当する奇書出回った同年3月武侠社の柳沼澤介 は『近代犯罪科学全集』の別巻として、図版中心非公開資料集刑罰変態性欲図譜』(刑罰変態性欲写真集DIE BILDER UBER DIE STRAFE UND ABNORMER GESCHLECHTS TRIEB)を少数頒布した1996年6月皓星社から復刊)。本書は「刑罰」「性犯罪」「文身」「責め」の4章から構成され豊富な写真図版300点あまり掲載された。序文には「犯罪科学研究資料として世の真摯な研究家参考に…」とあるが、実態は今で言うところのSMであった刑罰の章では、1868年明治元年)に発禁となった徳川刑罰図譜』からの転写幕末刑罰/処刑写真宗教的迫害描いた拷問絵巻世界各地刑罰図譜などが掲載された。また性犯罪の章では、1917年大正6年)に起こった下谷サドマゾ事件日本初SM怪死事件)で無残な死体となったマゾヒスト人妻ヨネ裸体写真掲載された。さらに文身の章では責め絵、無残絵伊藤晴雨緊縛写真多数紹介された(晴雨自身も「責め研究」と題したSM論を寄稿している)。 1930年8月には『刑罰変態性欲図譜』と同じ発行元正確に武俠社内犯罪科学同好研究会)から『犯罪現場写真集』(BILD DES VERBRECHENS IN ELAGRANTI)が発行された。これは日本初本格的な死体写真集とされている。本書序文には「主として強盗殺人強姦致死並びにその疑ある犯行等の現場写真収載した」とあり、実に100枚もの死体写真掲載した。また扱われ61件の事件15件が日本のもので、書籍後半では日本人死体写真扱われており、これは海外死体写真差し置いて抜きん出た臨場感放っていた。小田光雄は「無残な写真オンパレードで、まさに『グロそのもの」と評している。 しかし、グロに寛容であった官憲とはいえ、やはり本書の内容は目に余る代物だったようで、刊行翌月には「風俗禁止」で発禁となった結果的に犯罪現場写真集』の前後犯罪猟奇ブームピークとなり、1935年昭和10年)に中央公論社出した防犯科学全集』では性犯罪わずかに扱われるだけで、基本的に防犯教育説く内容であり、猟奇的ムード一掃された。 1936年昭和11年)には社会震撼させた二・二六事件起こり日本社会は暗い雰囲気包まれるが、そのわずか3か月後に大島渚監督愛のコリーダ』のモチーフとなった阿部定事件が起こる。「性愛極北」としか表現しようのない猟奇的犯行と、阿部定妖艶な魅力人々熱狂した。この事件結果的にエログロナンセンス時代最末期掉尾を飾ることになる。

※この「猟奇ブーム─エロからグロへ」の解説は、「鬼畜系」の解説の一部です。
「猟奇ブーム─エロからグロへ」を含む「鬼畜系」の記事については、「鬼畜系」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「猟奇ブーム─エロからグロへ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「猟奇ブーム─エロからグロへ」の関連用語

1
2% |||||

猟奇ブーム─エロからグロへのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



猟奇ブーム─エロからグロへのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの鬼畜系 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS