本書の内容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/09 04:11 UTC 版)
資本主義の特徴は、資本の効率的な配分であり、公平な配分を目的としていない。そして、富の不平等は、干渉主義(富の再分配)を取り入れることで、解決することができる。これが、本書の主題である。資本主義を作り直さなければ、まさに庶民階級そのものが危うくなるだろう。 議論の出発点となるのは、資本収益率(r)と経済成長率(g)の関係式である。rとは、利潤、配当金、利息、貸出料などのように、資本から入ってくる収入のことである。そして、gは、給与所得などによって求められる。 過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度であるが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになった。このことから、経済的不平等が増していく基本的な力は、r>g という不等式にまとめることができる。 すなわち、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位10%、1%といった位置にいる人のほうがより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。また、この式から、次のように相続についても分析できる。すなわち、蓄積された資産は、子に相続され、労働者には分配されない。 たとえば、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのベル・エポックの時代は、華やかな時代といわれているが、この時代は資産の9割が相続によるものだった。また、格差は非常に大きく、フランスでは上位1%が6割の資産を所有していた。 一方で、1930年から1975年のあいだは、いくつかのかなり特殊な環境によって、格差拡大へと向かう流れが引き戻された。特殊な環境とは、つまり2度の世界大戦や世界恐慌のことである。そして、こうした出来事によって、特に上流階級が持っていた富が、失われたのである。また、戦費を調達するために、相続税や累進課税の所得税が導入され、富裕層への課税が強化された。さらに、第二次世界大戦後に起こった高度成長の時代も、高い経済成長率(g)によって、相続などによる財産の重要性を減らすことになった。 しかし、1970年代後半からは、富裕層や大企業に対する減税などの政策によって、格差が再び拡大に向かうようになった。そしてデータから、現代の欧米は「第二のベル・エポック」に突入し、中産階級は消滅へと向かっていると判断できる。 つまり、今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」に回帰しており、これらの力は増大して、寡頭制を生みだす。 また、今後は経済成長率が低い世界が予測されるので、資本収益率(r)は引き続き経済成長率(g)を上回る。そのため、何も対策を打たなければ、富の不平等は維持されることになる。科学技術が急速に発達することによって、経済成長率が20世紀のレベルに戻るという考えは受け入れがたい。我々は「技術の気まぐれ」に身を委ねるべきではない。 不平等を和らげるには、最高税率年2%の累進課税による財産税を導入し、最高80%の累進所得税と組み合わせればよい。その際、富裕層が資産をタックス・ヘイヴンのような場所に移動することを防ぐため、この税に関して国家間の国際条約を締結する必要がある。しかし、このような世界的な課税は、夢想的なアイディアであり、実現は難しい。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 00:46 UTC 版)
『赤蝦夷風説考』はロシア全般に関する地理書とも目されているが、主題は喫緊の課題であったカムチャツカ半島を中心とした地理の把握にあった。単なる蘭書からの情報摂取ではなく、日本が掴んでいた情報を統合しカムチャツカ半島の状況分析に用いられた点に特色がある。日本における本格的なロシア研究本としては嚆矢となる書であり、多くの同憂を啓蒙した。 上巻には、 赤狄風説の事 附録蝦夷地に東西の差別ある事 西蝦夷之事 を載せる。松前周辺や蘭学者などからの伝聞を元に、蝦夷地周辺の事情を説いている。 下巻は以下の諸篇から成る。 カムサスカヲロシヤ私考之事 ヲロシヤの記事 一名ムスコヒヤ 年代之事 ヲロシヤ開業の次第 松前より写し来る赤狄の図説の事 土産物 内容はオランダ語訳されたドイツ人ヨハン・ヒュプナー(Johann Hubner)の著『地理全誌』(ゼオガラヒー、万国地誌とも、1769年刊)第5巻「ロシア誌」などの蘭書に書かれたロシアの地理や歴史に関する資料を、松前藩の国人からの聞き取りを元に批判的に検討して作成した、資料編に当たる巻。
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