議論の出発点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 08:14 UTC 版)
議論の出発点は、以下のマックスウェルの方程式 [M1] div B = 0 {\displaystyle \operatorname {div} {\boldsymbol {B}}=0} (1-2-1a) [M2] rot E + ∂ B ∂ t = 0 {\displaystyle \operatorname {rot} {\boldsymbol {E}}+{\frac {\partial {\boldsymbol {B}}}{\partial t}}=0} (1-2-1b) [M3] rot H − ∂ D ∂ t = i {\displaystyle \operatorname {rot} {\boldsymbol {H}}-{\frac {\partial {\boldsymbol {D}}}{\partial t}}={\boldsymbol {i}}} (1-2-1c) [M4] div D = ρ {\displaystyle \operatorname {div} {\boldsymbol {D}}=\rho } (1-2-1d) であり、真空中について検討しているため、以下の構造方程式が考え併せられる。 [SE1] B = μ 0 H {\displaystyle {\boldsymbol {B}}={\mu _{0}}{\boldsymbol {H}}} (1-2-2a) [SE2] D = ϵ 0 E {\displaystyle {\boldsymbol {D}}={\epsilon _{0}}{\boldsymbol {E}}} (1-2-2b) ここで、 i {\displaystyle {\boldsymbol {i}}} は、与えられた電流密度を表すベクトル場ρは、電荷密度を表すスカラー場、 B , E , H , D {\displaystyle {\boldsymbol {B}},{\boldsymbol {E}},{\boldsymbol {H}},{\boldsymbol {D}}} は、それぞれ、磁束密度、電場、磁場、電束密度を表すベクトル場であり、 μ 0 {\displaystyle \mu _{0}} は、真空の透磁率、 ϵ 0 {\displaystyle \epsilon _{0}} は、真空の誘電率である。 マックスウェルの方程式に対し、ローレンツゲージ div A + 1 c ∂ φ ∂ t = 0 {\displaystyle \operatorname {div} A+{\frac {1}{c}}{\frac {\partial \varphi }{\partial t}}=0} (1-2-3) を課すことで、以下のポテンシャル形式のマックスウェル方程式が得られる。 ◻ A = − μ 0 i {\displaystyle \Box {\boldsymbol {A}}=-{\mu _{0}}{\boldsymbol {i}}} (1-2-4a) ◻ φ = − ρ ϵ 0 {\displaystyle \Box \varphi =-{\dfrac {\rho }{\epsilon _{0}}}} (1-2-4b) 上記のポテンシャル形式のマックスウェル方程式は、φ(r, t ) 、A(r, t )それぞれについて、独立に解くことが出来る。ここで、φ(r, t ) は電位、A(r, t ) は磁気ベクトルポテンシャルを意味し、(勝手に)与えられた電荷分布をρ(r, t ) 、(勝手に)与えられた電流密度を i(r, t )とする。さらに、 ◻ {\displaystyle \Box } は、 ダランベール演算子、即ち、 ◻ = − 1 c 2 ∂ 2 ∂ t 2 + ∇ 2 {\displaystyle \Box =-{\frac {1}{c^{2}}}{\frac {\partial ^{2}}{\partial {t}^{2}}}+{\nabla }^{2}} (1-2-5) を表す。c は光速を表す。 遅延ポテンシャル(1-1-3)は、上記の偏微分方程式を、以下の仮定の下で解いた厳密解である。 電荷密度ρ(r, t )と、 電流密度 i ( r , t ) {\displaystyle {\boldsymbol {i}}({\boldsymbol {r}},t)} とが、r, t のみの関数である(自分自身の作り出す電場や磁場の影響を受けない)。 前記の電流密度と、電荷密度以外に、電場、磁場を生み出すものが存在しない。 電荷密度、電流密度は、無限の過去では、0に収束する。 電荷密度、電流密度は、無限遠では0に収束する。 電荷密度、電流密度は、自由空間に配置されている(境界のない時空間を仮定している)。 時空因果律が成り立つ。 1番目以外の仮定以外は物理学的にもっともらしい仮定だが、1番目の仮定は近似的である。即ち、仮に真空中であってもベルシェ効果等の自己相互作用が無視できないケースでは、適用ができないことを意味し、さらに、物質が介在するような一般的な場合には、電流密度の存在が新たな電流密度(例えば、磁化電流や渦電流等)を発生させたり、電荷密度の存在が、あらたな電荷密度(分極電荷)を発生させるといった効果があり得るため、適用に注意を要する。この意味で、遅延ポテンシャルは数学的に厳密解であるのと同時に、物理学的には近似解としての性格を持つ。
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