民営化後と新たな更新工事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 15:16 UTC 版)
「Toshiba (サルミエント線・ミトレ線用電車)」の記事における「民営化後と新たな更新工事」の解説
これらが運用されていたサルミエント線とミトレ線の運営は1991年のアルゼンチン国鉄労働組合による大規模なストライキのあとに設立された、同じく国営企業であるFEMESA(国営首都圏鉄道会社)(スペイン語版)に変更されたのち、当時のカルロス・メネム大統領の国営鉄道運営民営化政策にともない、1995年にアメリカ合衆国の鉄道企業であるバーリントン・ノーザン鉄道とモリソン・クヌードセン・レイル(英語版)、およびアルゼンチンで最も大きなバス企業の一つであるグルーポ・プラサ(スペイン語版)により設立された3社合弁企業であるTBA (Trenes de Buenos Aires)(スペイン語版)に引き継がれた。当時、アルゼンチン国鉄とFEMESAの資金不足により老朽化し、サルミエント線では客用乗降ドアが閉まらない状態で運用される車両が多数存在するなどしていたことから、緊急的な側面をもちつつ、新たな第二の更新工事が1995年より、民営化前に更新されていない車両に対し開始され、1995年から1996年にかけて64両、1996年から1997年にかけて95両に施行された。内容は、 床材の緑色に塗られたモルタルの表面を剥がし、新しい灰色のゴムのものと鉄板(主電動機上部分)に交換 化粧板をクリーム色もしくは灰色の木目調のものから白のものへ交換 座席を従来の転換クロス式から灰色のFRP製(座面にはスポンジを使用)のものに交換し、同時に座席配置を相反式へ変更 トイレが残存していた車両からトイレを完全に撤去し、同部分に座席とそれに対応する通常の側窓を設置 一部の先頭に立つ車両の貫通幌を撤去 ごく一部の車両の窓下前照灯を角型から丸型へ交換し、同時に前面右側の白熱灯を撤去 すべての車両の客用乗降ドアを修理 塗装を車両両端を黄色、中央を茶色とするものへ変更(俗に「ピエロ」と呼ばれる) というものであった。 これに続き、1996年には車体の台枠・骨組以外の全てを新しく作りなおした"UMAP"という編成が登場した。この車両は3両で1編成を構成する固定編成である。詳細は後述のリニューアル車両"PUMA"をご覧いただきたい。 2000年からは後述の"PUMA V.1"の登場に伴い、"PUMA V.1"が導入されなかったサルミエント線向けの新たな第三の更新工事が当時のフェルナンド・デ・ラ・ルア大統領の元で結ばれた「48両の東芝車の改造契約」に基づき施行された。この工事では、車両の性能は従来と変わらないものの、内装は冷房装置以外は後述の"PUMA V.1"と同様にするというものであった。内容は、 先頭車となる車両の前面の幌を撤去し、同時に貫通扉を撤去 先頭車の連結器まわりに排障器(スカート)を設置 編成の中間に組み込まれる一部の車両の運転台を撤去し、同部分の窓を埋め込み 車内の化粧板をクリーム色もしくは薄い木目調のものから水色のものへ交換 床材を従来の表面が緑色に塗られたモルタルを薄くし、その上に灰色のゴム(主電動機上は鉄板)に交換 座席を転換クロス式から水色のFRP製のもの(第二の更新工事のものと同様)による相反式、もしくは"PUMA V.1"と同じFRP製のものによるクロス式に交換 客席横の窓を一段・下段上昇式から二段・下段固定上段下降式のものへ変更 塗装を"PUMA V.1"と全く同様の塗り分けの、白地に窓周りが水色・窓下に細い青線のものに変更 というものであった。この車両は"PUMA V.1"に次ぐ「新たな新車両」としての役割を果たすと考えられていたことから、"PUMA2"もしくは"Toshiba2"と呼ばれる。 上記の"Toshiba2"の登場に続き、同じく「48両の東芝車の改造契約」の一環として翌2001年よりサルミエント線およびミトレ線へ第四の更新工事を施工した車両が導入された。この車両の更新工事の内容は上記の第二の更新工事と、塗装は"Toshiba2"とほぼ同様であるが、 座席を後述の"PUMA V.1"と同様のものに変更 一部車両の車体側面の窓を一段上昇窓から下段固定・上段下降の二段窓へ交換 大半の先頭に立つ車両の先頭窓下の前照灯を白熱灯・角型灯から丸型灯へ交換し、白熱灯を撤去 車両先頭部分の塗装を車体側面と同様のものへ変更 という点で異なる。この中には車体側面の窓が一段窓から二段窓へ交換されたものの、一連の更新工事で重点的に行われた車内化粧板・床材と握り棒・吊り革、先頭の白熱灯などの交換は一切行われなかった車両(簡易更新車)が数両、主にミトレ線用に存在することが特徴であり、民営化前に第一の更新工事を施行された車両もこの工事の対象となった。 同じ頃、サルミエント線に一両すべてが荷物・自転車用のスペースとなった車両が14両登場した。この車両は網棚と握り棒・吊り革と運転台・乗務員室以外はすべて撤去されており、自転車や大きな荷物を持ち込んで乗車することに最適で、また座席が一切存在しないことから混雑時の立ちスペースとしても便利。車体全体が水色で窓周りが青の塗装を採用し、サルミエント線の基本9両編成のうちの1両として連結された。 1998年から2002年にかけて、60両を超える"Toshiba"が後述の"PUMA V.1"へ改造されたことにより、従来からの"Toshiba"の車両数は減少した。 2002年12月より、"Tren Cartonero"(厚紙回収労働者専用列車)という臨時・時刻表に掲載されない特殊な運用に3編成・15両(2002年度)と2両(2003年度)が導入された。この運用に使われる車両に対しては車内の座席を全て撤去し、「安全のため」の金網を車体外側の窓部分に設置するという工事が施行された。改造された車両は第二の更新工事を受けたもの、および未更新のものであった。この列車の運用および概要についてはスペイン語版ウイキペディアのページ・es:Tren Cartoneroを参照。 2003年から2004年にかけて、登場時からの一段上昇窓を保持する大半の車両に対し、車内において窓と並行して設置されていた金属製のブラインドがすべて撤去され、代わりにビニールのカーテンの設置もしくは窓に遮光フイルムを張る作業が行われた。TBAは「反破壊工事」と発表したものの、実際には2001年12月の債務不履行より同国内での金属の価格が非常に高騰しており、会社がこのブラインドを金属スクラップとして売却することで生まれる莫大な利益を狙ったものとされている。 この当時、引き続き第四の更新工事は進められていたものの、2005年以降は当時のネストル・キルチネル大統領の鉄道政策の一つとして、完全に車両を更新した"PUMA V.2"への改造を重点的に行うことになったため、従来の"Toshiba"の更新工事は終了。"PUMA V.2"の導入が迫るサルミエント線では編成中の中間封じ込め先頭車両の運転台の撤去を進め、両線、特にミトレ線では改造により1両の半分を荷物置き場とした車両が投入されるなどの変化も見られたものの、この二件を除くとTBA誕生時に登場した第二の更新工事の車両が纏っていた黄色と茶色の「ピエロ」と呼ばれる塗装を、第四の更新工事の車両が纏う、白と水色と青い細線が特徴である"PUMA"と同様の塗装へ塗り替えることや、更新で交換される座席が路線バス用の軽量プラスチックのものへ変更されたことなどに留まった。
※この「民営化後と新たな更新工事」の解説は、「Toshiba (サルミエント線・ミトレ線用電車)」の解説の一部です。
「民営化後と新たな更新工事」を含む「Toshiba (サルミエント線・ミトレ線用電車)」の記事については、「Toshiba (サルミエント線・ミトレ線用電車)」の概要を参照ください。
- 民営化後と新たな更新工事のページへのリンク