新体制の始動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 03:21 UTC 版)
「女子柔道強化選手への暴力問題」の記事における「新体制の始動」の解説
3月25日には新体制となって初めての強化合宿が味の素ナショナルトレーニングセンターで行われたが、監督の南條と新コーチとなる小川接骨院の小川武志、綜合警備保障の小橋秀規及び神奈川県警の松本勇治の男性のみで、女性コーチ不在での開催となった。南條監督は約60人の強化選手を前に「オリンピック、世界選手権の優勝を目指す集団として、自覚を持った行動をしよう」「騒動があっても甘くなることはない。目標は変わらない。」と語りかけるとともに、選手との積極的な意思疎通を図っていくことを明言した。今回の合宿に参加したロンドンオリンピック57 kg級金メダリストであるフォーリーフジャパンの松本薫は、合宿の雰囲気が今までと変わったと述べるとともに「今までは先生方が責任を持ってくれていたのが、一人一人が責任を持つようになってきた」と話した。世界選手権48 kg級で2連覇をしているコマツの浅見八瑠奈は「(練習の)雰囲気は変わりつつあると思う。応援してもらえるように頑張りたいです。」と語った。さらに今春、国士舘大学に進学した48 kg級の岡本理帆は「いい形で練習・合宿できたりするのを考えてくれていると思いますので、私たちは先生を信じてこれからやっていきたいです」と述べた。 3月26日に全柔連は臨時理事会と評議員会を開いた。臨時理事会においては、第三者委員会の提言とJOCからの改善勧告を具体化するための「改革・改善実行プロジェクト」を設置して、全体の責任者に上村が就任することを決めた。改革・改善項目の概要は以下の通り。 全柔連の改革・改善項目「暴力の根絶」宣言 ■指導方針分科会 (1)具体的な指導指針の策定と周知 (2)指導者資格制度及び資格剥奪制度の確立 (3)コンプライアンス(法令順守)・倫理研修制度 ■組織改革分科会 (1)外部第三者の執行部中枢への登用 (2)女性枠設定に設定による理事への女性登用 (3)ガバナンス(統治機構)の見直し (4)柔道界全体の意見を吸い上げる仕組み作り ■強化システム分科会 (1)監督・コーチ人事の明確化 (2)全日本の監督・コーチと所属の監督・コーチとの連携強化 (3)全日本への選手選抜、代表選手選抜の際の説明責任 (4)強化委員会の分割による女性強化委員会の創設等 (5)女性監督・コーチの導入 ■子供プロジェクト分科会 ■コンプライアンス分科会 (1)コンプライアンス委員会の設置 (2)規律委員会・裁定委員会制度の創設 (3)組織内の調査委員会の制定(非常置委員会) (4)相談・通報窓口の整備 ■リスクマネジメント(危機管理)分科会 (1)説明責任と情報公開 ■その他 このようにプロジェクト内に分科会を設けて、それぞれに責任者を置くことを決めた。「暴力根絶宣言」の作成と指導指針の策定の責任者には山下泰裕が就くことになった。指導指針の策定には早稲田大学教授でスポーツ科学学術院の友添秀則や1988年ソウルオリンピック61 kg級銅メダリストである北田典子らが加わることになった。法令順守の分科会には法律の専門家など外部有識者を招く考えを示した。 また、北京オリンピックでは女子代表監督を務めた強化委員長の日蔭暢年が健康上の理由で退任することになった。日陰が担当していた選手の相談窓口となる支援ステーションは、強化副委員長の増地が新たに担当することになった。 続く評議員会では冒頭で全柔連会長の上村が一連の不祥事を出席した各県代表の評議員に謝罪したが、鳥取の元参議院議員・常田享詳は全柔連の公益財団法人が取り消される可能性を懸念した上で、「トップが辞任して新体制で一致結束すべきだ」と進言すると、それに賛同する声が相次いだ。また、了徳寺学園の了徳寺健二理事長は、親しくしている現内閣の友人二人から証人喚問の声もあがっていたと明かすとともに、証人喚問になった場合は今回のような受け答えで乗り切れるのかと発言した。 さらに評議員会では、これまで選手はIJFグランプリシリーズにおいて得た獲得賞金の半分を全柔連に徴収されていたが、選手側の不満にも配慮して選手が全額受け取れるように競技者規定を改定したことが報告された。また、競技者規定には、選手側が代表選考などで全柔連に異議申し立てをした場合、全柔連側がこれに応じて日本スポーツ仲裁機構に解決を委ねることになる自動受諾条項も新たに加えることになった。 3月27日には女子強化選手の所属先関係者と強化方針の意見交換を行う「強化連携フォーラム」が開かれて、新たに強化委員となった山口は「柔道においては所属先での練習が主体となるので、ナショナルチームは最後のとりまとめをする程度にとどめるべき」と述べるとともに、「国際大会において選手は代表監督ではなく所属先のコーチに付いてもらった方が安心するはず」との意見を語った。 また、監督の南條は女性コーチが現場で指導しやすくなるように託児所の設置について言及した。南條の妻でもある仙台大学女子柔道部監督の南條和恵は道場で自らの子供の世話をする場合もあるという。 一方、この日に行われた体重別の抽選会において、全柔連副会長の藤田が「全柔連の危機管理の甘さ、問題の対応における不手際をおわびします」と改めて謝罪することになった。 4月13日には強化委員会が開かれて、代表選考基準の明文化及び代表チーム指導陣の選考過程における透明化に関する案件を4月27日の理事会に諮ることを決めた。強化委員長の斉藤は代表選考の明文化について問われると、国際大会を含む1年間の成績を踏まえた上で選考する意向であると述べた。 また、一連の不祥事を受けて全柔連のスポンサーとなっていた企業が契約更新の凍結や協賛金減額の動きを見せることにもなった。三井住友海上は今年度の契約更新を見合わせ、コマツも前年度比で50%の協賛金減額を決めた。一方で、ミズノ、日本航空、セイコーホールディングスは契約を継続する意向であるという。
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