戦時経済とは? わかりやすく解説

戦時体制

(戦時経済 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/10 06:07 UTC 版)

戦時体制(せんじたいせい)とは、近現代の戦争において、国家が戦争遂行を最優先の目標として、その達成のために各種の政策を行うことをいう。対立概念は平時体制(へいじたいせい)。

概要

軍需工場に動員された女性(米国)。徴兵され戦地に送られた男性に代わり、女性がその穴埋めとして、労働現場で働くことで、女性の技能習得と社会進出が進むという側面もある。
戦時中のポスター(日本)

フランス革命戦争期のフランスでは、史上初の国民総動員体制をもって恐怖政治のもとに戦時下の非常処置がとられた[1]。戦時体制下においては、軍需物資の生産を極大化するために企業や国民が組織化されて動員が図られ、しばしばその目的の障害となる国民の私的領域である人権やプライバシーの抑圧が伴う。

危機の時代」と呼ばれる1919年から1939年には、19世紀的な階級社会から、社会成員を均質化させてヒトやモノを効率良く動員する20世紀型システム社会への転換が起きた。思想の領域では、自由主義的な言論が封殺され、時局迎合的なナショナリズムの主張が発言力を増した一方で、社会論や文化論など多方面への萌芽が生じ、今日につながる問題に取り組んでいた[2]

第二次世界大戦では、日本1938年国家総動員法制定、1940年大政翼賛会および大日本産業報国会の結成により、世界経済から孤立していたソビエト連邦戦時共産主義政策をモデルケースとする戦時体制の確立をした。しかし航空機の生産機数や粗鋼生産量など各種の指標を見ても、日本はアメリカ合衆国やソビエト連邦はおろか、イギリスナチス政権下のドイツにも及ばず、経済政策としては成功したとはいえない。 ただし、もともとの生産目標値が平時比較で過大すぎた面もあること、また、世界恐慌の影響からいち早く回復した日本は、戦時体制移行直前期の時点で、相当高水準な生産量に達していたため、この時期との比較においては他国より低いが、経済統制の手法は戦後の経済政策にも生かされていく。

バブル崩壊後の構造改革ブームの時代には、戦後日本の企業構造や財政システムなどにおける日本特有の要素は戦時体制が源流であるとして、解体すべきという論調が強くなった[3]。しかし、構造改革後も日本経済は低迷を続けた。不況になると戦時体制のせいにするのは戦勝国であるアメリカやイギリスにも見られたことであり、発展段階説の変形という批判もある[4]

脚注

  1. ^ 山上正太郎「革命戦争」日本大百科全書 (ニッポニカ)
  2. ^ 『概説日本思想史』 畑中健二
  3. ^ 野口悠紀雄『1940年体制-さらば戦時経済』東洋経済新報社、1995年
  4. ^ 「新自由主義の生命力」が日本で根強すぎる理由 「右派」も「左派」もきちんと批判する論理がない | 令和の新教養 | 東洋経済オンライン

関連項目

外部リンク


戦時経済

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 05:59 UTC 版)

ナチス・ドイツの経済」の記事における「戦時経済」の解説

木畑和子ナチス・ドイツチェコ経済侵略 : ヴィトコーヴィツ鉱山製鉄会社めぐって (PDF) 」 『史論』第36号東京女子大学1983年、 pp.11-30、 NAID 110007164170。 工藤章ナチス戦争経済ノート (PDF) 」 『信州大学経済学論集第16号信州大学経済学部1980年、 pp.61-79、 NAID 120000823222。 鈴木直哉「ナチス戦時体制における世襲農場法の改正親族相続規制変容 (PDF) 」 『早稲田法学会誌』第35号早稲田大学法学会、1985年、 pp.145-175、 NAID 120000792265。 中村一浩「第二次世界大戦勃発ナチス体制下労働力動員1939/1940年 (PDF) 」 『北星学園大学経済学部北星論集』第32号北星学園大学1995年、 pp.167-197,220、 NAID 110000421722。 中村一浩「F.ザウケル労働配置総監任命と戦時経済統制機構再編成 : シュペーア体制確立課程 (PDF) 」 『北星学園大学経済学部北星論集』第36号北星学園大学1999年、 pp.159-172、 NAID 110000498981。 中村一浩「1942年ザウケル(GBA)体制に於ける外国人徴用政策東方出身強制連行労働者の状態 (PDF) 」 『北星学園大学経済学部北星論集』第41号、北星学園大学2002年、 pp.159-172、 NAID 110000499015。 中村一浩「第二次世界大戦末期ドイツ労務動員体制確立過程 : ヒトラー暗殺未遂事件に至る迄の推移 (PDF) 」 『北星学園大学経済学部北星論集46(2)、北星学園大学2007年、 pp.91-102、 NAID 110006549922。 中村一浩「独ソ戦初期ナチス労働力政策 (PDF) 」 『北星学園大学経済学部北星論集』第34号、北星学園大学1997年、 pp.253-276、 NAID 110000498964。

※この「戦時経済」の解説は、「ナチス・ドイツの経済」の解説の一部です。
「戦時経済」を含む「ナチス・ドイツの経済」の記事については、「ナチス・ドイツの経済」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「戦時経済」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「戦時経済」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「戦時経済」の関連用語

戦時経済のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



戦時経済のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの戦時体制 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのナチス・ドイツの経済 (改訂履歴)、日清戦争 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS