建築設計事務所の職務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/20 14:09 UTC 版)
「建築設計事務所」の記事における「建築設計事務所の職務」の解説
設計以前の作業 設計図書を作る際、建築主の要望・意図の確認。打ち合わせなど。 設計事務所では下記のような業務を行う。通常すべてを行うことが多いが最近では一部のみを受託する場合もある(設計施工の場合は工事請負業者が行う)。企画・調査業務 基本設計業務 実施設計業務 工事監理業務 その他(確認申請業務、住宅金融公庫等の建設資金の手続き、測量、地盤調査、竣工後の検査、耐震検査等) 設計を行うための必要事項は、施主の要望である建物の使用目的、要求性能(建物の規模、耐用年数(計画供用年数)、建物の仕様、必要設備の仕様等)、工事の予算、収支、設計に必要な法的制約の有無、敷地の状況、地盤の状況、その他(建築基準法以外に、電波障害、プライバシー、色彩、日照権、風障害、住民協定、緑化規定、騒音、振動等に対する要求等)がある。 基本設計 建築主の希望と予算を元に、諸条件を勘案しながら建築主の望む建物を計画し、建築図面などを作成する。でき上がった図面、書類ごとに説明をする。 基本設計は実施設計を行う前の段階の設計で注文者、その他関係者との検討、打ち合わせ、概算金額の算出、施工計画の立案等に使用される。基本設計の内容は注文者の要望、法的な事項をクリヤーした内容である。図面は、平面図、立面図、断面図、仕様(構造共)、外構、主要部分の展開図、建具図等が含まれる。 実施設計 基本設計に基づき、工事施工および工事費の算出に必要となる詳細な設計図と設計図書を作成する。 実施設計での図面は精算見積りができ、施工ができる(施工図が描ける)図面で契約図書となる図面である。図面は、建物概要書、特記仕様書、平面図、立面図、断面図、展開図、各部位の詳細図・建具図、家具図(備品)、構造図、外構図、設備図(電気、空調、機械、衛生器具、EV等の昇降機等)等である。この図面を基に施工図が作成、施工計画が立案され、建物の施工が行われる。日本においては、更にこの設計図に基づいて施工会社が実際の各種工事に関し職方に指示を出す為の「施工図」を作成しているが、欧米においての設計図はそれ自体が施工図として読み取れるほどの密度である。その意味では日本の設計図書図面等は詳細とは言い難い。 構造設計(構造設計事務所)実施設計の一部。自重や台風、雪、地震に対する強度など、その建築物の安全性の根拠となる構造計算書を作成し、構造図を作成する。一定規模以上の建築物は構造設計一級建築士の関与、承認が必要になった。 しかし、その建築物が木造2階建・平屋建など小規模である場合、確認申請書に構造計算書の添付の必要がないということから、構造設計自体が省略されてしまう事例が見受けられる。 設備設計(設備設計事務所)実施設計の一部。建築に付帯する設備(電気設備、機械設備)について、快適性、安全性を検証し、設備の配置、配管・配線を設計する。また消防法に基づいて必要な消防設備を設計する。設備図の作成を行う。 建築積算(建築積算設計事務所)実施設計の一部。設計図書に基づき、工事費の算出を行い、設計書をとりまとめる。工事請負契約に際しての判定根拠として用いるほか、工事予算との擦り合わせの為のフィードバックや、設計内容の整合性のチェックとしても重要である。積算専門の事務所もある。 建築確認申請 建築基準法上建築の確認申請が必要になる場合において、建築確認申請書および添付書類の作成を行う。通常、建築主の代理者として申請書を官公庁または指定確認検査機関へ提出する。訂正および確認済証の受取りも行う。 工事監理 設計図書を建築主に代わって施工者に提示し、説明し、質問などに答える。 工事施工に関して、各工事の必要な時期設計どおりの施工が行われているか監理する。設計者とは別の事務所が受託して行う場合がある。基本的に、設計上の不具合の是正または設計変更等については設計行為であり、設計者である事務所に差戻して行う。施工が契約図書(設計図書、見積書、仕様書等)に反する場合には修正させる。また、技術的に不備である場合なども適正にさせる。 建築工事の指導監督。工事監理、建設業法上の施工管理又はいわゆる現場監督でなく、建築工事について工事施工者に即した立場でない、建築主の依頼による第三者的立場から指導監督する。 商業施設においては、テナント工事(主に建物本体工事とは別に行う店舗内の内装工事をいう)の調整及び工事監理を行う内装監理という監理者を置く場合がある(一般的に工事監理者と内装監理者が兼務して行うことはない)。 工事契約助言工事監理の一部。工事施工の見積りを取りその内容を精査したうえで、建築主に対して発注先の選定および契約・発注のアドバイスを行う。建売業者や住宅メーカーあるいは工務店など、施工者が提出した「見積書」をチェックする。工事請負契約の内容を十分に調査・検討する。適切な施工者を選定するためのデータなどを整理し、建築主に助言・進言する。依頼者と工事を施工する者との契約に立会い、著名捺印する。建築工事契約に関する事務を行う。等 検査と審査工事監理の一部。工事の各段階に関して適切な検査をする。工事費支払いの審査をする。完成検査をする。 設計図書には設計図、建築図(意匠図)、構造図、設備図、仕様書がある。 建築設計者が行うものは設計監理で、工務店や建設会社が行うのは工事管理である。したがって、建築工事を直接実施しているのは、建築設計者や工務店、建設会社ではなく、トビ、大工などそして左官、建具、経師、板金、電気、水道等それぞれの職人になる。
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