副作用の対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 07:23 UTC 版)
「ステロイド系抗炎症薬の副作用」の記事における「副作用の対応」の解説
多彩・重大な副作用のうち、代表例を以下に列記する。 副作用対応と注意点満月様顔貌 ムーンフェイスとも言う。医学的には問題はなく、プレドニゾロン(以下PSLと記載)10mg/日以下に減量すれば、回復が見込める。食欲の亢進によって単純に太ることもあるので、気になる場合はカロリーの高い間食を避けることも重要である。 易感染性 PSL20mg/日以上の投与で感染症のリスクは2倍以上になる。早期発見と早期治療を行っていく。感染症のリスクは投与量と投与期間に関係すると考えられている。PSL単独で20mg/日以上を2カ月以上投与する場合や、他の免疫抑制剤を併用する場合はST合剤を用いた日和見感染予防投与が行われる場合もある。予防投与はニューモシスチス肺炎の予防に準じてST合剤100mg/日とすることが多い。PSL単独で10mg/day以下ならば長期でも、PSL単独大量投与では投与期間が2週間以内であれば易感染性は起らないと考えられている。ST合剤予防投与、早期発見モニタリング以外は風邪のシーズンに人込みをさけるといった程度で十分とされている。PSL単独10mg/日以下に減量したら抗菌薬予防投与を中止する場合も多い。 骨粗鬆症 3か月以上の投与の場合は骨密度測定により、有効な予防薬を投与する。ビスホスホネートによって骨折の7割程度は予防できると考えられている。仮に骨折が起ったとしても予防薬の内服で進行を予防することはできる。ビスホスホネートの内服には留意点があり、起床してすぐの空腹時に、コップ一杯の水とともに服用し、速やかに胃内に到達させる。口腔咽頭部に潰瘍を形成させる恐れがあるために噛んだり、口の中で溶かさない。逆流を防止するために少なくとも30分は横にならない。水以外の飲み物や食物、他の薬剤と一緒に服用すると、吸収を抑制する恐れがあるといった点である。ビタミンD製剤を併用することも多い。それはビスホスホネートが破骨細胞の機能を抑制する作用しかなく、骨芽細胞を活性化させるには原料となるビタミンDやカルシウムが必要であると考えられているからである。その場合は血中カルシウム、尿中カルシウムをモニタリングする必要がある。T scoreが1.5以下、YAM80%以下でビスホスホネートは積極的な投与が必要である。 糖尿病 用量依存性に発症のリスクが高くなる。食事療法をはじめとする糖尿病治療を行う。これも減量によって改善が期待できる。 消化性潰瘍 NSAIDs併用時は消化性潰瘍の発生のリスクは4倍になるため、投与前に不要なNSAIDsはできる限り中止することが望ましいと考えられている。併用時はPPIや胃粘膜保護薬を予防投与することがある。消化性潰瘍によって腹膜穿孔、腹膜炎が生じることもあるが、ステロイド投与時は症状がマスクされることもあるため注意が必要である。 動脈硬化、高脂血症 ステロイド投与によって動脈硬化や高脂血症が進行することがある。高脂血症が認められたら高脂血症の治療薬を用いる。(自己免疫疾患は血管障害を合併することも多く、そのような場合は原病の治療となるステロイド内服を行った方が総合的には血管イベントは軽減できる可能性が高い。) 無菌性骨壊死 PSL30mg/日以上の大量投与でごく稀(多くとも5%以下)に起ることがある。有効な治療法はなく早期発見、早期治療によって対処する。根本的な防止法はなく、股関節や膝の痛みが認められたら関節のMRIをとり早期診断をし、治療としては安静、体重付加制限、アレンドロン酸投与といったものが一般的である、重症例では人工関節への置換術も検討される。 白内障、緑内障 もともと軽度の白内障が認められたり眼圧が高い場合は注意が必要である。両親のどちらかが緑内障の場合は発症のリスクが7倍になるとされている。定期的な眼科受診行い、必要に応じて予防を行う。 精神障害 軽い症状であることが多い。治療を受ければ重症化することはまずない。ごく軽度なものを含めれば頻度は高く、PSL投与開始2週間で60%、6週間で90%が症状を示すとされている。特に0.8mg/kg以上で多いとされており、減量で改善する。 高血圧 元来高血圧の人はより血圧が上がりやすい。塩分制限を守り適切な降圧療法を受ける。 ステロイド筋症 原病による安静でも筋力低下が起り易く、原病の回復とステロイドの減量で遅れて改善してくる。長期作用型(フッ素基がある)のステロイドの長期投与で多いとされている。筋生検では炎症所見がなくtypeII線維の委縮が認められる。PSL10mg/日以下では生じないが、40~60mg/日を越えると2週間以内に筋力低下が見られ始め、1ヶ月以上投与を続けるとほぼ全例に筋力低下がみられる。ステロイド・ミオパチーにより呼吸筋の筋力低下・呼吸不全をきたすという報告もある。 副腎不全 PSLで1日10mgを1カ月以上、ハイドロコルチゾンで1日30mg以上を3週間以上の投与があれば副腎クリーゼを起こし得る。低ナトリウム血症や低血糖を示し、通常の治療で反応しないショック(循環不全)を示す。ハイドロコルチゾン100mgの静注後150~300mg/dayの持続静注を行うことが多い。その後、テーパリング(段階的にステロイドを減量)を繰り返す。急激なステロイド投与中止は行わない。副腎不全を起こすと原病が悪化したり、生命に危険が及ぶこともある。特に長期間ステロイド剤を使用している場合、自己判断による減量は非常に危険である。(リバウンド/離脱症候群) ニキビ様発疹、多毛症 重症になることはほとんどない。皮膚を清潔に保つといった対応で十分である。 月経異常 月経不順があるひとでは起ることがある。ほとんどがステロイド減量で改善する。 皮下出血、紫斑 高齢者では起りやすい。皮下のみであり、脳血管など深部血管では起らない。 多飲、多尿 軽度の場合が多い。 浮腫、低カリウム血症 軽度の場合が多い。カリウムの低下が認められたら治療を受ける。また鉱質コルチコイド作用が弱いものに切り替えるのも効果的である。 その他 中心性肥満 低身長 異常脂肪沈着 野牛肩 皮膚線条、皮膚萎縮 - ステロイド皮膚症を参照 発汗異常 眼球突出 鬱血性心不全 不整脈 白血球増多 中枢神経興奮性亢進 味覚・嗅覚の低下 海綿体・陰茎・陰核亀頭の肥大
※この「副作用の対応」の解説は、「ステロイド系抗炎症薬の副作用」の解説の一部です。
「副作用の対応」を含む「ステロイド系抗炎症薬の副作用」の記事については、「ステロイド系抗炎症薬の副作用」の概要を参照ください。
- 副作用の対応のページへのリンク