制度の再発見:新制度論とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 制度の再発見:新制度論の意味・解説 

制度の再発見:新制度論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 06:20 UTC 版)

政治学史」の記事における「制度の再発見:新制度論」の解説

1950年代以降主流となった政治学におけるアプローチは、行動科学政治学にせよ合理的選択理論にせよ、個々アクター焦点当てるものであった。従って分析単位として政治制度取り上げられることは少なく、本来アクター行動の場となるべき制度軽視されてきた。こうした政治学における制度軽視という状況警鐘を鳴らす研究或いは従来制度軽視した方法論限界踏まえた研究1980年前後から登場した。この風潮一般に新制度論」(新制度主義新し制度論、New Institutionalism)と言う。公式の制度にのみ焦点当てた制度論とは異なり新制度においては非公式な制度、すなわち慣習や行規範にまで射程広げられる新制度論とは、19世紀から20世紀初頭にかけて主にアメリカで隆盛極めた制度論(旧制度論)との対比意識した言葉でもある。さらに新制度論は、制度分析のみならずアクター制度との関係、もしくは相互作用捉えようとする傾向にある。これも、制度だけを取り出して研究対象とした旧制度論とは異なる点である。こうした制度を巡る新し諸研究新制度論として初め体系付けて論じたのは、マーチオルセンである。 しかし本来新制度論とは、政治学様々な方法論が独自に制度分析取り組んだ結果生じたのである。すなわち、最初から新制度論として一定の共通の方向付けなされて纏まったものではなく、全く異な別個の潮流理論集合体であると言えるそのこと踏まえたうえで新制度論を整理し論じたのがホールテイラーである。ホールテイラーによると新制度論は全く別々に生じた3つの潮流分類できる。つまり合理的選択制度論、社会学的制度論、歴史的制度論の3つである。 合理的選択制度論は、従来合理的選択理論制度に関する分析開始したのを契機として生じた。従って経済学方法論との親和性から、経済学制度論と呼ばれることもある。合理的選択制度にあって制度は、アクター行動課されるパターン化され制約捉えられる。従って個人選好戦略的行動帰結として制度存在する。すなわち、ノーベル経済学賞受賞し政治学経済学領域新制度論に基づく研究業績挙げたノースによれば、「制度とは、社会ゲームのルールであり、より公式に定義するならば、それは人間が自らの相互作用成り立たせるために考案した中略人間交流する上で誘因構造づけるもの」となる。言い換えれば多く場合制度ゲームにおける均衡として捉えられるこのように個人選好に基づく利益効用最大化行動、及び戦略的行動帰結という制度観を共通に持つ複数モデル・理論集成合理的選択制度論である。従って後述する社会学的制度論ほど、統一され1つ学派という性格強くない合理的選択制度論の1つ重要な潮流は、アロー以来社会的選択理論背景アメリカ連邦議会研究の中から登場してきた。社会的選択理論重要な知見1つは、多数決不安定性言い換えれば多数決による意思決定困難さであった。つまり理論的に議会などで個々人選好に基づき投票行った場合には循環生じ最終的な意思決定ができなくなる。このことは投票のパラドックス或いはコンドルセのパラドックス呼ばれ古くから知られたことであった。しかし実際議会このような循環などの意思決定上の問題から来る機能不全に陥ってはいない。その理由探求したのがシェプスリ及びワインゲストによる一連の研究であった研究によると議会中にはこのような循環防ぎ安定した決定すなわち均衡誘導する制度的メカニズム存在するそうした制度的要因働き議会循環などの意思決定上の困難に遭遇せず機能を果たすことが出来る。そうした制度的メカニズム代表例委員会制である。このように制度とは構造誘導され均衡決定)を導くものであるとここでは考えられる合理的選択制度論のもう一つ潮流は、いわゆる取引コスト経済学政治現象分析応用したのである取引費用経済学自体コース先駆的研究にまで遡れる古い概念である。取引費用存在する場合市場によっては効率的な価値配分が行われない。むしろ何らかの垂直的秩序(例:企業)に依存したほうが効率的であるとするのが取引費用経済学立場である。ところでこうした取引費用中には情報コスト含まれる経済活動そして政治活動における様々な情報非対称である。従ってこの場合にも垂直的構造依存するのが効率的である。このような状況分析するのにプリンシパル=エージェント・モデル(本人代理人論などと訳される)は有意性を持つ。例え政治家に政策立案に関する情報コストがある。そこで専門知識有する官僚エージェントとして雇う。こうして政治家官僚の間には垂直的秩序であるプリンシパル=エージェント関係成立するこのようにプリンシパル=エージェントモデルは典型的に政治家立法府)・官僚執行府)関係を分析するのに用いられるプリンシパル=エージェントモデルは1990年代以降日本政治分析にも応用され、最も良く知られる合理的選択制度論のモデルとなった一方で新制度論のもう一つ典型社会学的制度論である。社会学的制度論は、アクター行動現実理解意味づけるものとして制度捉える。これはアクター行動制度規定されることを強調する立場である。このことは、アクター行動制度規定されることよりもむしろアクター制度生み出すことを重視する合理的選択制度論の制度観とは対比的である。社会学的制度論はその名が示すとおり社会学において発生し、後に政治学応用された。社会学的制度論が政治学導入される契機となったのが、マーチオルセン論文である。ヴェーバー以来社会学にあって官僚組織を代表とする組織は、合理性追求するものと考えられていた。この、組織とはある目的効率的に追求するための構造という命題対すアンチテーゼとしてアメリカで1950年代登場したのが社会学における制度論、新しい組理論であった。この社会学的制度論の発展寄与した社会学者としては、マイヤーディマジオパウエルらが挙げられる。彼らの主張は、制度形態手続きが最も効率的というわけではなく卓越した合理性備えているわけではないということであったそうした形態がとられたのは主に文化的なものや慣習のためであるというのが社会学的制度論の認識である。従って、社会学的制度論は結果的に文化慣習アクター拘束することを重視することになる。すなわち、社会学的新制度論は一種文化的アプローチである。 第三新制度論として、歴史的制度論が挙げられる歴史的制度論は歴史重視することを共通項とする、かなり幅広いアプローチ看做すことも出来る。例えば、合理的選択理論依拠する者が歴史制度分析を行う場合にも歴史的制度論に基づく研究分類されかねない。このことから、新たな分野として歴史的制度論を取り上げることを疑問視する意見もある。しかし一般に歴史的制度と言った場合次のような立場をとるとされる。すなわち過去採用され制度現在の制度或いは政治あり方規定しているとする立場である。このような立場に立つ研究としては、パットナムイタリアにおける地方政府パフォーマンス差異に関する研究挙げられる

※この「制度の再発見:新制度論」の解説は、「政治学史」の解説の一部です。
「制度の再発見:新制度論」を含む「政治学史」の記事については、「政治学史」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「制度の再発見:新制度論」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「制度の再発見:新制度論」の関連用語

制度の再発見:新制度論のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



制度の再発見:新制度論のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの政治学史 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS