クレジットヒストリーとクレジットスコア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 03:35 UTC 版)
「信用情報」の記事における「クレジットヒストリーとクレジットスコア」の解説
クレジットスコアは、クレジットヒストリーを元に、数式によって計算し、偏差値にしたものであり、個人の信用力を数値で格付けする。典型的には、300~850(スコア会社によっては300~900)の範囲で、例えば300~620は「平均以下」、621~700は「平均的」、701~760は「良好」、761~850は「優良」とされ、スコアを使用する金融機関などからの報告を基に毎日更新される。クレジットスコアは下記の要素が数値化され、一定の計算式に代入されるが、その計算方法は信用情報処理各社の秘密で、また用途別にいくつかの異なるバージョンも提供されている。なお、ローン残高もクレジットカードの使用残高もすべて「借金」と見做されるが、当然のことながら住宅や自動車ローンのように担保付の借金とそうでない借金の残高は同じ重みではないと考えられる。以下のパーセンテージはクレジットヒストリーの各要素のクレジットスコア計算に対する公表されている重みの代表例。 延滞返済履歴の有無(金額、頻度、期間、時期、通常過去7年分) - 35% 現在の信用枠の実際の使用割合(借金残高÷与信額、小さいほど有利)と 未使用信用枠(与信額-借金残高、高額ほど有利) - 30% 最も古い現存口座開設以来の期間(長いほど有利) - 15% 最近実際に供与された信用の種類(クレジットカードのような無担保、或いは住宅・自動車ローンなどの担保付信用) - 10% 最近のクレジットスコアの照会頻度と実際に開設したクレジットカードや住宅・自動車ローンなどの口座数(通常過去2年間の回数、信用照会だけの「ソフト」と実際に信用供与を行う「ハード」で影響度が異なる。短期間に頻繁に照会があると借金先を探しまくっていると見做される) - 10% クレジットスコアの提供元はエクィファクス (Equifax)、エクスペリアン (Experian)、トランスユニオン (TransUnion) の大手3社の寡占状態にある。スコアリングシステムは、フェア・アイザック(FICO)のものが使用される。上記の要素で分かるように、年齢や収入・資産状況や就職状態は考慮されず、「どれだけ約束通り確実に返済しそうか」に重点が置かれる。 クレジットスコアの照会は、金融機関に限らず、あらかじめスコア会社が承認した人・会社なら本人の承諾を基に(料金を払って)誰でもできるので、例えば就職時に雇用者が応募者のスコアを調べたり、アパート入居者希望者に対する審査などにも使われることがある。自動車や住宅ローンでは低いスコアだとより高金利に甘んじなければならないことが多いだけでなく、貸付そのものを断られることさえあり、また与信限度が高く特典も多い種類のクレジットカードは明示的に「スコア××以上の人のみ」としていることもある。このように、クレジットスコアは生活を大きく左右するため、経済意識の高い消費者はクレジットヒストリーを傷付けず、クレジットスコアを高めることに注力する。 2016年に発覚した、ウェルズ・ファーゴ銀行が顧客に無断かつ無通知でクレジットカード口座などを開設した事件では、顧客は直接的な金銭的損害は被らなかったが、不正・不要な照会と口座開設によりクレジットスコアが低下して、将来に渡って不利益を被る可能性があることが問題となった。クレジットスコアの照会は、本人の姓名・社会保障番号・生年月日・現住所(稀に過去の住所)の個人情報を基に検索される。 上記のように、クレジットスコア自体にはクレジットヒストリー以外の、収入・資産状況は反映されないが、実際の金の貸し手にとってはクレジットスコアはあくまでも貸金の可否・額・利率・条件などを決める判断材料の一つであり、貸し手独自の基準で状況・用途に応じて収入・資産・就職状況を応募者に申告させるのが通常である。例えば、新規クレジットカード(与信枠数百~数万ドル)や自動車ローン(数千~数万ドル、現車が担保登記される)では大まかな年収と持家かどうかを申告する程度だが、住宅ローン(数万~数百万ドル)では、最近の給与明細書や銀行口座の月次報告書などの写しや、場合によっては前年度の所得税納税申告書や現在所有する登記物件(自動車、不動産)の証書や徴税通知の写しの提出を要求することもある。申込者のクレジットスコアが低ければ、審査はより厳格になり、要求される証明書の類も増え、より高金利になることもある。当然のことながら性別・人種・肌の色・出身国・宗教・性的志向などを問うたり、判断材料に使うことは違法である。家族構成(例えば既婚・未婚)も判断材料には使えないが、例えば本人の信用だけでは基準に満たず家族を保証人や連帯債務者にする場合は、その家族保証人・連帯債務者のクレジットスコアも審査の対象になる。 アメリカの自動車ディーラーでの自動車購入は、新車でも在庫現品をその日のうちに持ち帰り(乗り帰り)が原則で、平日は仕事を終えてから来店する客が夜遅くに購入手続きをすることが少なくなく、またアメリカには東部時間からハワイ時間まで5~6時間の時差があるので、クレジットスコアの照会(と実際のローン会社)は、ほぼ24/7(一日24時間、週7日)で対応している。全額即時現金払いは別として、例えば自前ローンを申し出ても、当日は審査を基にとりあえず千ドル程度の手持ち小切手の手付金だけで持ち帰りが可能で、1週間以内に残金を持参するかそのまま残額をディーラーの提携ローン会社のローンに自動的に移行する契約が一般的なために、信用審査が必須。また最近では、インターネットで1日24時間いつでもクレジットカードの申込みができ、その場で与信限度額が与えられるのも、このおかげである(以前はとりあえず小額の与信限度額が与えられ、後日正式な額が通知されることもあった)。 クレジット報告書には、クレジットスコアの他に、本人の姓名・生年月日と社会保障番号や現住所と過去の住所などの個人情報、現在有効なクレジットカードやローンの口座すべてについてそれぞれの開設した時期・与信限度・現在の残高・返済状況などが記され、また現在の担保登記(自動車ローンの現車や住宅ローンの対象不動産)や裁判所の破産判決(再建型破産(第13章)は過去7年分、清算型破産(第7章)は過去10年分)などの公的公開経済情報がある場合はそれらも記載される。本人は、1年に1度は自分のクレジット報告書をスコア会社に無料で請求できるほか、最近ではクレジットカード会社が自社が使用しているスコア会社からの数字や報告書全文を、カード会員にウェブで週1回~月1回程度の更新頻度で自由に閲覧させるサービスを行っている(この閲覧はクレジットスコアを低下させる「照会」とはならない)。
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