イギリスの通貨とは? わかりやすく解説

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スターリング・ポンド

(イギリスの通貨 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/17 09:32 UTC 版)

スターリング・ポンド
Pound sterling(英語)
ISO 4217
コード
GBP
中央銀行イングランド銀行
 ウェブサイトwww.bankofengland.co.uk
公式
使用国・地域
 イギリス

 ガーンジー島

 マン島

 ジャージー島
非公式使用
国・地域
 ピトケアン諸島[1][2]
ラ・リネア, スペイン[3]
 ジンバブエ[4]
インフレ率10.1% (2023年3月)
 情報源ons.gov.uk
ペッグしている
通貨
フォークランド諸島ポンド (等価)
ジブラルタル・ポンド (等価)
セントヘレナ・ポンド (等価)
ジャージー・ポンド
ガーンジー・ポンド
マンクス・ポンド
補助単位
1100ペニー
通貨記号£
 ペニーp
複数形pounds
 ペニーペンス(pence)
硬貨
 広く流通1, 2, 5, 10, 20, 50ペンス
1, 2ポンド
紙幣
 広く流通5, 10, 20ポンド
 流通は稀50ポンド
1, 100ポンド (スコットランド・北アイルランド)
紙幣製造デ・ラ・ルー
 ウェブサイトwww.delarue.com
硬貨鋳造王立造幣局
 ウェブサイトwww.royalmint.com

スターリング・ポンド[5]: pound sterling)は、イギリス通貨

通貨単位としてのポンドは、本国を旧宗主国とするイギリス連邦諸国で用いられ、エジプトなどでは現在も用いられているが、単にポンドというと通常イギリスのポンドのことを示す。

通貨記号は £、国際通貨コード (ISO 4217) は、GBPであるが、STGとも略記する。

呼称としてはポンド、スターリングの他にクィド (quid) が用いられることがある。日本ではイギリス・ポンド、または英ポンド(えいポンド)、UKポンドと呼ばれることも多い。

概要

補助単位ペニー (penny/複数形: ペンス = pence) で、1971年より1ポンドは100ペンスである(下記「過去のポンド」参照)。

USドルが世界の決済通貨として使われるようになる以前は、イギリス帝国の経済力を背景に、国際的な決済通貨として使われた。イギリスの欧州連合加盟に伴い、ヨーロッパの共通通貨であるユーロにイギリスが参加するかどうかが焦点となったが、イギリス国内に反対が多く、1990年に参加した欧州為替相場メカニズムから僅か2年で離脱するなどして通貨統合は見送られた。

日本円変動相場制を採用している。以前の固定相場制の頃は、当初1ポンド1,008円(1949年 - 1967年)、後に864円(1967年 - 1971年)だった。

なお2007年1月下旬に、1ポンドが24140銭だったが、2007年3月2日には226円95銭と、1ポンドあたり約14円も下落しているように、為替変動の幅の大きい通貨である。2007年6月は約240円 - 246円で推移し、7月に入ってからは一時251円に達した。その後サブプライムローンショックによる影響も大きく、徐々に下落して2008年3月17日には192円台を記録。ポンド安が落ち着いた所へ、9月からの世界金融危機により徐々に大きく落ち込み、2008年10月に一時138円台にまで落ち込んだ。

さらに2009年1月23日 (GMT) には、1995年4月の史上最安値を14年ぶりに更新し、初めて118円台に突入。18か月でポンド/円レートが133円、半値以下まで下落した事になる。2016年イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票で、離脱派が多数になったことから、ポンドと自国通貨との両替を取りやめた両替商が多発した。

紙幣

イングランド銀行の発券する紙幣は5ポンド・10ポンド・20ポンド・50ポンドの4種類であるが、主に市中に流通しているのは20ポンド以下の紙幣である。

現在の紙幣は2016年9月から2021年6月にかけて順次発行された「シリーズG」。全てポリマー紙幣であり、表面にはイギリスの君主エリザベス2世、2024年6月よりチャールズ3世[6][7])の肖像、裏面に歴史上の人物が描かれている。

この他にスコットランドと北アイルランドの商業銀行計6行が独自に発行する紙幣がある[8]。額面の種類は発券銀行によって異なり、1ポンドや100ポンドの紙幣も存在する。これらの紙幣はイングランド国内で使用できることがあるが、受け取りの法的義務が無い為、受け取りを拒否されるかイングランド銀行の紙幣への両替を勧められることも多い。

なお、1971年以降の旧紙幣は現在も有効であり、中央銀行(1971年以降の全ての紙幣)や地方銀行・郵便局(「シリーズG」発行前の紙幣のみ[9])などの公的機関で両替が可能である[10]

また、超高額紙幣として、銀行間のみ(イングランド銀行発、アイルランド銀行やスコットランド銀行行き)で使用される1億ポンド紙幣英語版が存在する[11]。用途は主として銀行券発行力証明。

硬貨

王立造幣局 (Royal Mint) にて発行されている硬貨は、1ペニー・2・5・10・20・50ペンス、1・2ポンドの8種類である。中世からの伝統に則り、全ての硬貨の表面にはイギリスの君主の肖像と称号のラテン語[注 1]が刻印されている。

硬貨は定期的に刷新されており、1990年代に5、10、50ペンス硬貨のサイズが縮小され、1992年に1ペニー・2ペンス、2010年代初頭に5・10ペンス硬貨の材質が低コストなものに変更され、2017年には偽造の多発を受けて1ポンド硬貨が丸型から十二角形のバイメタル貨に刷新された[12]。絵柄も2000年代に入り定期的に変更されるようになり、2008年より2ポンド硬貨以外の全硬貨の絵柄が刷新された[注 2]他、2023年に新国王の即位に伴い再び全硬貨の絵柄の刷新が発表され[注 3]、同年にミントセットが発売、2024年より通常流通としての発行が始まった。

現在流通している硬貨は以下の通り。

額面 形状 直径 重量 材質 表面の図柄 裏面の図柄 発行年
1ペニー 20.3mm 3.56g 青銅 エリザベス2世 落とし格子 1971-
メッキ 1992-
国章の左下部分 2008-
チャールズ3世 ヨーロッパヤマネ 2023-
2ペンス 25.9mm 7.12g 青銅 エリザベス2世 プリンス・オブ・ウェールズの羽根 1971-
銅メッキ鋼 1992-
国章の右上部分 2008-
チャールズ3世 リスマツの枝 2023-
5ペンス 18mm 3.25g 白銅 エリザベス2世 冠とアザミ 1990-
国章の中央部分 2008-
ニッケルメッキ 2011-
チャールズ3世 オークの枝 2023-
10ペンス 24.5mm 6.5g 白銅 エリザベス2世 冠を頂くライオン 1992-
国章の左上部分 2008-
ニッケルメッキ鋼 2012-
チャールズ3世 ヨーロッパオオライチョウ 2023-
20ペンス 七角形 21.4mm 5g 白銅 エリザベス2世 冠を頂くテューダー・ローズ 1982-
国章の右下部分 2008-
チャールズ3世 ニシツノメドリ 2023-
50ペンス 27.3mm 8g 白銅 エリザベス2世 女神ブリタニアとライオン 1997-
国章の中央下部分 2008-
チャールズ3世 タイセイヨウサケ 2023-
1ポンド 十二角形 23.43mm 8.75g 外周:洋白[注 4]

内周:ニッケルメッキ黄銅

エリザベス2世 バラアザミリーキシャムロック 2017-
チャールズ3世 セイヨウミツバチ 2023-
2ポンド 28.4mm 12g 外周:洋白[注 4]

内周:白銅

エリザベス2世 歯車や彩紋、「巨人の肩の上に立つ 1998-
女神ブリタニア 2015-
チャールズ3世 バラ、アザミ、リーキ、シャムロック 2023-

50ペンス硬貨と2ポンド硬貨はほぼ毎年図柄の異なる記念硬貨が発行され、通常硬貨に混ざって流通するかプルーフ貨幣としてケース販売されている。

また、イギリスの海外領土王室属領で流通している通貨のうちスターリング・ポンドと等価で固定されている通貨(ジブラルタル・ポンドなど)の多くは1ポンド以外の全ての硬貨が対応するスターリング・ポンド硬貨と形状・直径・材質など全て同一であり、イギリス本国での使用はできない(つまり外貨扱い)と規定されているにもかかわらずごく稀に流通していることがある。

過去の硬貨

過去に流通していた硬貨は以下の通りである。紙幣とは異なり旧硬貨の交換を保証する法的義務が存在せず、これらは全て法定通貨としての価値を失っている[13]。1990年代以前のハーフペニー・旧ペンス硬貨は勿論、2017年に発行が終了した丸型の旧1ポンド硬貨についても同年10月15日の交換期限を以て廃貨となっており[12]、現貨幣への交換は不可能となっている。

なお、この他に旧通貨システムによるクラウン銀貨ソブリン金貨、それにモーンディ・マネー英語版と呼ばれる、1ペニーから4ペンスまでの4枚の銀貨セットが発行される場合があるが、いずれも流通用ではなく、コレクター向けのアイテムである。また、ブリタニア金貨英語版を始めとした様々な絵柄の地金型金貨収集型金貨や銀貨が投資家・コレクター向けに発行されている。

過去のポンド

十進法化以前のポンドを基準とした単位体系

1971年までの補助通貨の単位体系は1ポンド=20シリング(s, /)=240ペンス(d)=960ファージングという、二十進法十二進法四進法を組み合わせたものであった[14]。これは中世の時代からヨーロッパで使用されていたカロリング朝の貨幣制度英語版に倣ったものであり、イギリスを始めとした西ヨーロッパ諸国はその制度を千年以上にわたって貨幣に適用していた。

この単位体系は十進法よりも約数が多く、あらゆる金額の等分割が容易であるという利点を持っていたが[14]、十進法を用いた通貨が徐々に一般的になるにつれて(下位の補助通貨単位から上位の補助通貨単位への変換など)金額の計算が複雑になるデメリットが顕在化し、19世紀中頃より補助通貨の十進化について議論が行われ始め、1971年2月13日に1ポンド=100ペンスに切り替えられ、ペンス以外の補助通貨単位は全て廃止された。イギリスとアイルランドで通貨補助単位の変更を行ったこの日を「デシマル・デー英語版(十進法の日)」と称している。

古い補助貨幣はこのほか、クラウン (crown)、フローリン (florin)、グロート (groat)、ギニー (guinea) がある。1クラウン=5シリング、1フローリン=2シリング、1グロート=4ペンス、1ギニー=21シリングに相当した。イギリスでは、1817年ソブリン金貨が本位金貨として鋳造され、この金貨を1ポンドに流通させ、自由鋳造、自由融解を認める唯一の無制限法貨としたが、ギニー金貨も引き続き流通することになり、この時、価値が21シリングと定められた。因みに1ポンドは前述の通り20シリングであった。第一次世界大戦後にアメリカ合衆国ドルに取って代わられるまで、世界で最も信用の高い国際通貨であった。

通貨名は、古代の銀貨の質量に由来する。8世紀にマーシアオファフランク王国ドゥニエ貨幣にならって1ペニーウェイト(1ポンドの1/240)の銀を含む銀貨を鋳造したのをはじめとする。ただし当時の1ポンドは現在の1ポンドとは質量が異なる。

ポンドを表す記号 £ は、1ポンドにあたるラテン語libraリーブラ、元は「天秤」「はかり」の意)」の頭文字に由来する。

スターリングシルバーという言葉が使われるが、これはイギリスの銀貨と同じ品位の銀(銀含有量92.5%)を表す言葉である。

為替レート

対ドル[15]
対円[15]
現在のGBPの為替レート
Google Finance: AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY/円USD
Yahoo! Finance: AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY/円USD
Yahoo! ファイナンス: AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY/円USD
XE: AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY/円USD
OANDA: AUD CAD CHF CNY EUR HKD JPY/円USD

外貨準備

スターリング・ポンドは世界各国において外貨準備として用いられている。各国主要通貨との比率推移は以下の通りである。

外貨準備における主要通貨の比率の推移(1965 - 2019)

脚注

注釈

  1. ^ エリザベス2世の場合、『神の恩寵による英語版女王、信仰の守護者、エリザベス二世』(DEI.GRA.REG. FID.DEF 又は D.G.R F.D.Dei Gratia Regina Fidei Defensorの略)。チャールズ3世の場合、『神の恩寵による王、信仰の守護者、チャールズ三世』(DEI.GRA.REX. FID.DEF 又は D.G.R F.D.Dei Gratia Rex Fidei Defensorの略)。
  2. ^ イギリスの紋章エスカッシャン(盾)部分を各硬貨ごとに分けて描き、それを並べると一枚の画像となるようにデザインされている。同年から2017年まで発行された1ポンド硬貨にはその全体像が描かれていた。
  3. ^ 表面は新国王のチャールズ3世の肖像、裏面は左半分に国王のモノグラムに彩られた額面数字、右半分にイギリスにゆかりのある動植物の姿が描かれている。
  4. ^ a b 76%、亜鉛20%、ニッケル4%。
  5. ^ a b 5ペンス硬貨・10ペンス硬貨はサイズ・材質がそれぞれ十進化前の1シリング硬貨・2シリング硬貨(フローリン)と同一になっており、それぞれの発行終了まで少量ながら旧シリング硬貨も混ざって流通していた。
  6. ^ 70%、亜鉛24.5%、ニッケル5.5%。
  7. ^ 記念硬貨としての発行では、2010年のシティ・オブ・ロンドンDOMINE DIRIGE NOS(主よ我らを導き給え)」、ベルファストPRO TANTO QUID RETRIBUAMUS(多大なる恵みに一体何が返せようか)」、2011年のカーディフY DDRAIG GOCH DDYRY CYCHWYN赤い竜の導きのままに)」、エディンバラNISI DOMINUS FRUSTRA(主なければ(全て)むなしい)」

出典

  1. ^ Alongside the New Zealand Dollar and US Dollar
  2. ^ Asia and Pacific Review 2003/04 p. 245 ISBN 1862170398
  3. ^ https://www.elmundo.es/andalucia/2017/11/06/5a0022c5ca474129158b45a6.html
  4. ^ Alongside Zimbabwean dollar (suspended indefinitely from 12 April 2009), Euro, US Dollar, South African rand, Botswana pula, Indian rupees, Australian dollars, Chinese yuan, and Japanese yen [1]. The U.S. Dollar has been adopted as the official currency for all government transactions.
  5. ^ 「出納官吏事務規程第十四条及び第十六条に規定する外国貨幣換算率を定める等の件」
  6. ^ チャールズ国王の新紙幣お披露目 24年半ばまでに流通”. www.afpbb.com. 2023年1月21日閲覧。
  7. ^ “First pictures of King Charles banknotes revealed”. BBC News. BBC. (2022年12月20日). https://www.bbc.com/news/business-64026683 2023年1月18日閲覧。 
  8. ^ Scottish and Northern Ireland banknotes” (英語). www.bankofengland.co.uk. 2025年1月28日閲覧。
  9. ^ Exchanging old banknotes” (英語). www.bankofengland.co.uk. 2025年3月17日閲覧。
  10. ^ Money: £7.2bn in old UK notes and coins uncashed, says Royal Mint” (英語). www.bbc.com. 2025年1月3日閲覧。
  11. ^ Security by Design - A closer look at Bank of England notes”. 2012年12月31日閲覧。
  12. ^ a b Tellermate” (英語). Tellermate USA. 2025年3月17日閲覧。
  13. ^ How can I dispose of coin ? | The Royal Mint”. www.royalmint.com. 2025年1月28日閲覧。
  14. ^ a b コラム第94回:お金の話(1) | WISEINFINITY SCHOOL ワイズ・インフィニティの翻訳者養成講座”. WISEINFINITY SCHOOL ワイズ・インフィニティの翻訳者養成講座 | (2022年10月22日). 2025年1月8日閲覧。
  15. ^ a b ニューヨーク連邦準備銀行Foreign Exchange Rates Historical Searchを元にした。

関連項目

外部リンク



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