第一紀 (トールキン)
(アングバンドの包囲 から転送)
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第一紀(だいいっき、First Age; FA)は、J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』及び『シルマリルの物語』の世界に出てくる歴史の時代区分の一つである。『シルマリルの物語』の「クウェンタ・シルマリッリオン」の話の大半はこの第一紀に入る。
- 1 第一紀 (トールキン)とは
- 2 第一紀 (トールキン)の概要
アングバンドの包囲
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このアングバンドの包囲は400年に渡って続いた。しかしこの包囲は完全なものではなかった。なぜならサンゴロドリムの城塞は、湾曲する鉄山脈から突き出るように築かれていたので、両側をこの山脈に守られていたため、これを超えて包囲することはノルドールには不可能であった。それに鉄山脈の北は常冬の雪と氷の大地であったからである。このためモルゴスは後背部には憂いはなく、彼の手下はアングバンドの大門ではなく北方側の秘密の入口から出入りしてベレリアンドに侵入した。またモルゴスは配下のオークに命じて、西方から来たエルフの中で生け捕りに出来るものがいたら、生きたままアングバンドに捕らえることにした。そうした捕虜の中には、モルゴスの面前で黒々とした恐怖に落ち込み威圧され、彼の思い通りになる者たちもいた。そうしてモルゴスはフェアノールの誓いや同族殺害のことなど様々なことを知ることが出来た。 モルゴスは、このフェアノールに率いられたノルドール族による同族殺害に、さらに嘘の尾鰭をつけ毒を含んだ噂としてシンダール族の間に流した。シンダールは用心が足らず、言われた言葉をそのまま受け取ったため、モルゴスは彼らに狙いを絞ったのである。キーアダンは賢者であったためこれらの噂は悪意によるものと看て取ったが、出所はモルゴスではなくノルドールの諸王家の間での妬みによるものと勘違いした。彼は自分が聞いたことをドリアスのシンゴル王に伝えた。シンゴルは激怒して、その場にいたフィナルフィンの息子たちをなじった。フィナルフィン一党は同族殺害に加わっていないものの、フィンロドは黙して語らなかった。それを釈明するとなれば、他のノルドール族を非難することになるからである。しかし弟アングロドは耐えられず、また以前ドリアスに使者として赴き帰ってきた際、カランシアに言われたことが遺恨となり、その場で真実を語りフェアノールの息子たちを非難した。この結果シンゴルは、フィナルフィンの子たちは縁者として以前通り扱い、また、フィンゴルフィン一党とは彼らがヘルカラクセでの苦しみで、罪を贖ったとして親交を保つことにした。しかしフェアノール一党への怒りは収まらず、彼らの言葉(即ちクウェンヤ)をベレリアンドで使うことを一切禁じた。このためノルドールも日常的にシンダール語を使わざるを得ず、クウェンヤは伝承の言葉として生き続けることとなった。 ダゴール・アグラレブから100年後モルゴスはフィンゴルフィンに奇襲を仕掛けた。彼は鉄山脈の北方からオークを送り出し、そこから西へ大きく迂回して南下し、ヒスルムに押し入るつもりだった。が、そこに至る前にフィンゴン率いる部隊に襲われ、オークの殆どは海へと追い落とされた。これによりモルゴスはオークだけではノルドールを滅ぼすことは不可能だと悟り、別の方法を模索することとなった。 その再び100年後、北方の火竜(ウルローキ)の祖グラウルングがアングバンドの大門から出撃してきた。この時の彼はまだ若竜で、成竜の半分にも達していなかった。しかしそれでもエルフ諸侯を仰天させるには十分だった。彼らは竜から逃げだし、グラウルングはアルド=ガレンを蹂躙した。しかしフィンゴンが一団の弓騎兵でこれを追い包囲すると、一斉に矢を浴びせかけた。グラウルングは身を完全に鱗で鎧うほど成長してなかったため、飛んでくる矢に耐えられず、アングバンドに逃げ帰った。この勲でフィンゴンは大いに名を高めた。モルゴスは早過ぎるグラウルングの出撃に大きく機嫌を損じたと言われている。そしてこの後200年に渡り長い平和が続き、ベレリアンドのエルフ達は繁栄することとなる。 ノルドールがベレリアンドに来て300年以上経った平和な時代に、ナルゴスロンドの王となったフィンロドはシリオンの東に旅をし、青の山脈(エレド・ルイン)の山並みに向かった。夕闇の訪れる頃、彼はそこでベレリアンドにやってきた人間、ベオルらの一族と出会った。彼らはそこで親交を結びフィンロドを主君としフィナルフィン王家に忠誠を尽くすこととなり、アムロドとアムラスの国に住む場所を定めた。しかしオッシリアンドのエルフらは人間を嫌い彼らを冷遇した。そのため次にやって来たハラディンの一族は北上してカランシアの収めるサルゲリオンに定住した。カランシアは人間の存在を殆ど歯牙にもかけていなかったからである。マラハ(Marach)の一族が最後にやって来たが、彼らは背が高く好戦的な輩だったので、オッシリアンドのエルフ達も手が出せなかった。しかしマラハの一族はベオルの一族と友好関係にあったため、そちらの近くへと移り住んでいった。人間の来訪はエルフにとっても興味深いことで、フィンロド以外の様々なエルフ達が人間のもとを訪れた。しかしシンゴル王は人間の来訪を歓迎せず、ドリアスは人間に対しては閉ざされたままであった。そして<第二の民>という意味であるエダインという言葉が彼らに使われ、後にエダインはエルフの友である三氏族についてのみ使われることとなる。フィンゴルフィンはノルドールの上級王として彼らを歓迎したため、多くの人間の若者がエルダールの王侯貴族に使えた。その中のマラハ(Malach)は14年間ヒスルムに定住しアラダンの名を与えられた。そして約50年後には何万という人間が西方のノルドール三王家の土地に入った。ベオルの一族はドルソニオンに来てフィナルフィン王家の土地に定住した。マラハの一族は後にはハドルの一族と呼ばれるようになり、ドル=ローミンに定住することとなる。またハラディンの一族は後にオークに襲われたことで、ハレスという名の女性に導かれてブレシルの森へと移っていった。しかし人間の間には不平分子もいて、エルダールを恐れかつ彼らに使えるのを良しとしないものも多かった。西の地に光明があると聞いて来てみれば、実際は暗黒の王とエルフたちの戦争の真っ最中であったため、それを厭うてエレド・ルインを再び超えてエリアドールに戻っていくものや、遥か南の方へと去っていった者たちも多くいた。こうした者達を除いて、エルダールのもとに集った人間たちは知識と技能を教授され、その智慧と技は勝っていき、ついにはエレド・ルインの東に住み、エルダールに会ったことも教えを受けたことのない、他の全ての人類を凌駕するに至ったのである。 この頃隠れ王国ゴンドリンはアマンのエルフの都ティリオンにも比す程の美しい都となった。しかしゴンドリンの中でも、最も美しいものはトゥアゴン王の娘イドリルであった。環状山脈の中ではゴンドリンの民も増え栄えていったが、200年ほど経つとトゥアゴン王の妹アレゼルはゴンドリンに倦み、広大な大地と森林に強く心を惹かれるようになった。そして彼女は王の許しを得ると、昔の友人フェアノールの息子ケレゴルムに会いに行こうとした。しかしそこへ行くにはドリアスを通らねばならず、彼女はフィナルフィン王家の者ではなかったため通行は許されなかった。そこでアレゼルは無謀にもナン・ドゥンゴルセブの危険地帯を通過しようとした。そこは昔バルログらから逃れたウンゴリアントが一時期棲み着いていた場所で、今も彼女の子孫の大蜘蛛達が徘徊する所であった。ここで大蜘蛛に襲われたアレゼルは護衛のものとはぐれてしまったが、運良く窮地を脱しケレゴルムとクルフィンの住んでいた場所に到着した。しかし折り悪く、二人は留守であった。そのため二人が帰ってくるまでそこに留まっていたが、ある時遠くまで馬を進めすぎた時、<暗闇エルフ>と呼ばれるシンゴル王の縁者エオルに見つかり、彼女に魅入られ我が物にしたいと思ったエオルは、魔法を用いて彼女を自分の住まいに引き寄せた。アレゼルはそのままそこに留まった。二人は結婚したからである。アレゼルにとっては意外なことにこの婚姻は不本意なものではなかったようで、そこでの生活もそれなりに気に入っていたようであった。そして4年後に二人の間に子が生まれる。この子はアレゼルから密かにクウェンヤでローミオンと名付けられ、エオルは息子が12歳になったのを機にマイグリンと名付けた。マイグリンは外見は母方のノルドール族に似ていたものの、内面は父方の性格を濃く受け継いでいた。しかしマイグリンは父よりも母を慕っており、母からノルドールの話を聞かされてはそれに憧れていた。マイグリンは父に母方の同族と会ってみたいと言ってみたが、エオルはノルドール族を嫌っていたため許されなかった。またアレゼルの方も縁者に再び会いたいという気持ちが募ってきた。やがて長の年月が経ち、ある時ドワーフ達の祝宴に呼ばれてエオルが出かけた際、マイグリンとアレゼルは脱走を図った。二日後に帰ってきたエオルはこれを知ると直ちに追いかけ、必死になって二人を探した。そして運の悪いことにアレゼルとマイグリンが乗り捨てた馬の嘶きから、エオルは隠れ王国に通ずる秘密の通路を探しだすことに成功し、ゴンドリンに連行されてきた。エオルはマイグリンを連れて出て行く権利を主張したがそれは聞き入れられなかった。隠れ王国に通ずる道を知ってしまったからである。トゥアゴン王はエオルにここに永久に留まるか死を選ぶか迫った。エオルは後者を選ぶと同時に、隠し持っていた投槍をマイグリンに投じたが、アレゼルが息子の盾になった。大した傷は追わなかったものの、この槍には毒が塗られていたため、アレゼルは命を落とした。それ故エオルは切り立った絶壁から投げ落とされ処刑された。しかしこのマイグリンが後にゴンドリンの破滅のもととなるとはこの時誰も予想し得なかった。
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