暗殺
暗殺(あんさつ)とは、特定の個人を秘密裏、または突然に襲撃し、命を奪う行為である。政治的、個人的な動機や組織的な計画に基づくことが多い。暗殺は、対象者の社会的、歴史的影響力によって、大きな波紋を広げることがある。使用される手段には、毒物、暗器、銃器などがあり、近年では情報操作による社会的信用の失墜を目的とした形式も見られる。これは、対象者の影響力を間接的に奪う新たな暗殺の手法と言える。暗殺は、その実行方法や目的によって、秘密裡の暗殺と公然の暗殺に大別される。どちらの場合も、暗殺は一般人の手に余る複雑な行為であり、通常、特殊部隊や諜報機関に所属する訓練を受けた人物によって行われる。暗殺の計画と実行には、高度な情報収集と緻密な作戦が必要であり、その過程で多くのリスクが伴う。
あん‐さつ【×按察】
あん‐さつ【暗殺】
【暗殺】(あんさつ)
Assassination.
テロリズムの一環として要人を殺害すること。
その目的に応じて「秘密裡の暗殺」と「公然の暗殺」に大別される。
どちらにせよ、暗殺は明らかに一般人や一般的犯罪者の手に余る行為である。
訓練を受けた経歴があっても単独では不可能に近く、ましてやフィクションのように傭兵を雇って殺させるなど論外である。
一人の人間を確実に暗殺するには、情報収集や後方支援も含めて一個中隊規模の人員が必要とされる。
一般に、現代の職業暗殺者は特殊部隊の一員として軍隊や諜報機関に籍を置いている。
特殊部隊の任務はほぼ全て守秘義務を伴うため、誰が暗殺を担当するのかは普通明らかでない。
また、特殊部隊としての身元自体も隠蔽され、報復から二重に保護されている。
よって、守秘義務を守る限りは暗殺者でも一般的な家庭生活を送り、円満な老後を過ごす事ができる。
秘密裡の暗殺
法治国家における暗殺は、主にスパイ活動上の要求によって行われる。
機密情報を扱う場合、その情報は漏洩を防ぐために厳重に管理され、隠蔽され、必要な時には抹消される必要がある。
人間の記憶もまた情報の塊であるから、記憶を抹消する必要に迫られる場合がある。
そして現代に至るまで、人間の記憶を抹消する唯一確実な手段はその生命を絶つ事である。
この場合、実行犯や黒幕が露呈しないように綿密な作戦計画が立案される。
「不都合な弁明」による機密漏洩を防ぐ事が目的である以上、事後に暗殺であったと発覚する事は失敗に等しい。
暗殺対象にはほぼ確実に親族や同胞が存在しており、暗殺された事が発覚すれば報復が望まれる。
そして暗殺に対する最高の報復は、被害者が行うはずだった「不都合な弁明」を遂行する事である。
さらに、国外の要人に対する暗殺計画は紛争の引き金、あるいは外交上の失点にも繋がる。
また、法治国家に暗殺を正当化する法律はないため、暗殺者は殺人を企てた罪に問われる。
当然、殺人事件を捜査する司法警察は余罪を追及し、過去の案件や背後関係に関する機密も暴かれる事になる。
実態としては、殺人の意図を隠蔽し、自殺や事故死に偽装する事で暗殺の事実を隠そうとする。
交通事故・水難・泥酔・医薬品事故などを誘発して間接的に殺害する事が多い。
また、遺族が沈黙したがるような痴情・悪癖・犯罪などの恥ずべき死因を偽装する事もある。
何らかの事情で偽装ができないか失敗した場合に備え、暗殺実行班とは別に「清掃」チームも編成される。
暗殺後の現場に潜入し、血痕などの状況証拠を清掃して元に戻し、死体を持ち去って損壊・処分する。
清掃チーム自体が痕跡を残さない限り、被害者が失踪した事実だけが残り、何が起きたのかは後々まで明らかにならない。
とはいえ、清掃チームの出動は極めてリスクが高い。
暗殺そのものは短ければ単独で数秒の接触を行うだけで終わるが、清掃を行うなら30分は現場に留まる必要がある。
しかも特殊清掃器具を抱えて進入し、数十kgの肉塊を抱えて出て行くとなれば、もはや不審人物以外の何者でもない。
人通りのある場所や、警備された邸宅などで暗殺の痕跡を清掃するのは事実上不可能である。
公然の暗殺
暗殺であったと発覚するリスクの最たるものは紛争の勃発である。
逆に言えば、すでに紛争状態にあるなら公然と暗殺を行ってしまっても構わないという事になる。
ただし、紛争地域であっても「国際社会に配慮して」秘密裡な暗殺が望まれる場合はある。
例えば、暗殺対象が危険を察知して国外に逃亡した場合。
法治国家での暗殺には現地警察・他国諜報機関・警戒する対象本人などを欺く綿密な計画が必要とされる。
もちろん、暗殺の実行犯は自分自身の生存を企図するので、報復を避けるための隠密行動が求められる。
しかし、空爆で建物ごと抹殺するなど、隠蔽の余地もない純然たる軍事行動として実行される事も多い。
実行犯自身も、軍事行動が行われた事実を可能な限り広く周知させようとする。
また、こうした公然の暗殺については政治的判断が入り乱れるため、かえって真相が定かならぬ事が多い。
例えば、「外敵によって暗殺された」事になっている人物が実は組織内部の政争で暗殺されていた、などという事例は少なくない。
また、権力者は個人的な怨恨のために暗殺者を動員する事があり、報復の連鎖によって状況が錯綜する事も少なくない。
特に近代以前の世襲制・封建制においては世代交代に際して権力を巡る暗殺の応酬が繰り広げられた事例が少なくない。
またそうした情勢では質の低い素人暗殺者が投入されがちで、秘密が破綻して大混乱から紛争に至る事もままあった。
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