『漫画ブリッコ』とその周辺
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「ロリコン漫画」の記事における「『漫画ブリッコ』とその周辺」の解説
「漫画ブリッコ」および「成人向け漫画#歴史」も参照 まんが批評集団「迷宮」と関わりのあった村上知彦は、1982年3月発刊の『マンガ宝島』(JICC出版局『月刊宝島』臨時増刊号/高取英編)に「ニューコミック派宣言」という記事を寄稿した。この記事の中で村上は1970年代後半に「迷宮」とコミケットを中心に勃興した「ニューウェーブ運動」が、少女漫画・三流劇画・アニメ・同人誌などの要素を混然一体と巻き込みながらロリコン漫画(=ポスト・ニューウェーブ・コミック)に移行したと指摘しつつも、結局はその流れが少年誌のラブコメディの売り上げに奉仕させられているに過ぎないという現状と憂慮を記していた。 そうした状況のなか、ふゅーじょんぷろだくと編集部によるアンソロジー『ロリコン白書─ロリコン同人誌ベスト集成』が1982年7月に白夜書房から発売される。内容は同人誌紹介や少女写真、ルポルタージュ、青山正明や蛭児神建らの過去発表済みの原稿など、雑多な記事を寄せ集めたものだったが、ロリコンブームの後押しもあって同書は中ヒットを記録した。これを契機として1982年9月、藤脇邦夫の企画で三流劇画誌『漫画ブリッコ』(セルフ出版→白夜書房)が創刊される。 ほどなく同誌は先行誌『レモンピープル』の後を追って「夢見る男の子のための美少女コミック誌!」をキャッチコピーに同誌は1983年5月号から突如ロリータ路線に誌面刷新した。この過程で『漫画ブリッコ』は徳間書店の契約編集者であった大塚英志(オーツカ某)と『少女アリス』『Peke』『ロリコン大全集』編集人の川本耕次と関係があった元ふゅーじょんぷろだくと編集部/群雄社の緒方源次郎(おぐゎた)を迎えた二頭体制となる。 さらに1983年6月号から中森明夫が『東京おとなクラブ』の出張版として「『おたく』の研究」を全3回にわたり連載し、同誌は「おたく」の語源として日本のサブカルチャー史に名を残すことになった(ただし中森の連載は読者から猛反発を受けた結果、大塚の一存で打ち切りとなる)。その後、売上不振で休刊が決まっていた同年11月号より表紙を三流劇画出身の谷口敬から少女漫画風のあぽ(かがみあきら)に変更し、アリス出版に嘱託社員として勤務していた藤原カムイと、当時10代であった岡崎京子、桜沢エリカ、白倉由美ら3人の非少女漫画系ニューウェーブ女性漫画家を雑誌の主軸とした。結果としてリニューアル号は完売し雑誌の存続が決定する。 なお『漫画ブリッコ』では直接的・実用的な性的描写よりも『シベール』の雰囲気を受け継いだナンセンス色の強い不条理系作品が多く、実際に計奈恵、豊島ゆーさく、早坂未紀、森野うさぎら『シベール』出身の同人作家が執筆陣として関わっていたほか、洋森しのぶ、中田雅喜、寄生虫、早坂みけ、あびゅうきょ、いくたまき、水縞とおる、西秋ぐりん、ちみもりを、ねぐら☆なお、外園昌也、五藤加純、中森愛、悶悶、後藤寿庵、竹熊健太郎、飯田耕一郎ら「一人一派」とも言えるほどの個性的なニューウェーヴ作家が多数起用されていた。言い換えれば、ここに「迷宮」関係者の米沢嘉博と川本耕次が主導した三流劇画ブーム→ニューウェーブ運動→ロリコン漫画革命へと連なる表現運動としてのエロ漫画史の流れが確立したといえる(この潮流は「祭りの時間は終わった」という大塚英志の終了宣言により雑誌を「自殺」させた1985年前後まで続いた)。 ちなみに大塚が『漫画ブリッコ』で唱導した「美少女コミック」とは、成人向け漫画というより「男性も読める少女漫画的なもの」ないし「ちょっとエッチで可愛い女の子が出てくる青少年向けのマニア雑誌」という位置づけが強く、作り手も18歳以下の未成年を読者に想定していた節があったため、必ずしもエロ要素は必要条件ではなく「美少女さえ出ていれば何をしてもいい」という非常に自由で実験的な漫画ジャンルだったとされている(同誌の顛末については大塚英志『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』などに詳しい)。 以後、1980年代前半から1990年代初頭にかけて 『月刊YOUNG KISS』(一水社) 『プチアップル・パイ』(徳間書店) 『COMICキュロットDX』(セルフ出版) 『漫画ブリッコ』→『漫画ホットミルク』→『コミックメガキューブ』→『コミックメガプラス』→『コミック0EX』→『コミックメガミルク』→『コミックホットミルク』(セルフ出版→白夜書房→コアマガジン) 『COMIC BOX Jr.』(ふゅーじょんぷろだくと) 『コミックマルガリータ』(笠倉出版社) 『PETITパンドラ』(一水社) 『メロンCOMIC』(ビデオ出版) 『いけないCOMIC』(白夜書房) 『怪奇と幻想 メディウム』(徳間書店) 『ペパーミントCOMIC』(日本出版社) 『アリスくらぶ』(群雄社/大洋図書) 『月刊COMICロリポップ』(笠倉出版社) 『メルティ・レモン』(白泉社) 『ホリディCOMIC』(ミリオン出版) 『ロリポップ』(笠倉出版社) 『パンプキン』(白夜書房) 『COMICモモ』→『ロリコンKISS』→『月刊COMICロリタッチ』→『コミックBeat』(東京三世社) 『まんがチューリップ』→『コミックチューリップ』(大陸書房) 『美少女症候群』(ふゅーじょんぷろだくと) 『ハーフリータ』(松文館) 『いちごダイフク』(松文館) 『イチゴみるく』→『COMICポプリクラブ』(大洋書房→晋遊舎→マックス) 『リフレックス』(白夜書房) 『ペリカンハウス』(司書房) 『らずべりーヨーグルト』(蒼竜社) 『フェアリーダスト』(ABC出版) 『キャンディCOMIC』(日本出版社) 『コミックジャンボ』(桃園書房) 『COMICアットーテキ』(光彩書房) 『漫画ホットパンツ』(フロム出版) 『コットンクラブ』(東京三世社) 『COMICマンモスクラブ』(セブン新社) 『ヤングレモン』(あまとりあ社) 『月刊コミックフラミンゴ』(三和出版) 『COMICレモンクラブ』(日本出版社) 『漫画YOUNGビタミン』(辰巳出版) 『コミックランド』(大洋書房) 『COMICダッシュ』(辰巳出版) 『ヤングヒップ』(ワニマガジン社) 『COMICピーチパイ』(一水社) 『コミック花いちもんめ』(メディアックス) 『COMICパピポ』(フランス書院/コミックハウス) といった模倣誌・亜流誌・類似誌・競合誌が猛烈な勢いで産み出され、このムーブメントはロリータ総合情報誌『ヘイ!バディー』(白夜書房)や川本耕次監修『ロリコンHOUSE』(三和出版)の誌面にも大いに反映された。たとえば前者では蛭児神建が連載に起用されたほか、ねぐら☆なおが商業誌デビューを果たしている。また後者では川猫めぐみが挿絵を担当したほか、あらきあきらが商業誌デビューを果たした。 また、この流れを受けて1980年頃から三流劇画誌もロリコン劇画に舵を切り、とくに三大エロ劇画誌のひとつ『漫画エロジェニカ』(海潮社)は中島史雄、村祖俊一、ダーティ松本、谷口敬らを起用するなど、いち早く美少女路線に移行する。これを口火として『漫画大快楽』(檸檬社)も内山亜紀、谷口敬、村祖俊一、火野妖子、五藤加純、牧村みき、小鈴ひろみ、西江ひろあきを起用し、亀和田武と米沢嘉博が編集長を務めた自販機専門の三流劇画誌『劇画アリス』(アリス出版/迷宮)も吾妻ひでおの『不条理日記』『るなてっく』を連載する。以降、三流劇画における女性キャラの低年齢化が進み『漫画エロス』(司書房)では丸尾末広の残酷劇画『少女椿』(青林工藝舎)が連載され、美少女に特化した『漫画エロリータ』『漫画聖少女』『漫画ロリータ』『劇画ロリコン』『劇画ジッパー』『コミックひろこ』といったロリコン劇画誌すら出現するようになる。 これらのロリコン漫画誌・劇画誌は比較的短命に終わる状況が続いたが、現在では老舗エロ漫画誌の『COMICペンギンクラブ』『コミックMate』『COMIC快楽天』『コミックマショウ』『COMIC LO』『コミックホットミルク』などがロリコン漫画〜美少女コミックの血脈を引き継いでいる。 「コミックハウス」も参照
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