ロリコン・ブーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 13:51 UTC 版)
「ロリータ・コンプレックス」の記事における「ロリコン・ブーム」の解説
日本では1970年代から1980年代前半にかけて、性的に未熟な幼女・少女を描写した写真やビデオやマンガが大量に出版され、俗にロリコン・ブームといわれる社会現象となった。それらの消費者は主に思春期から青年前期の男性とされ、心理的な発達の未熟さから同年代の女性ではなく空想上の幼い少女に憧れるという解釈や、当時は性的に成熟した女性の性器やヘアの描写は法的に規制されていたが、性的に未熟な少女については対象外であったためポルノグラフィとして流行したともされる。 「少女ヌード写真集」も参照 1970年代 1970年代から『12歳の神話』(剣持加津夫)や『少女アリス』(沢渡朔)など少しずつ現れた少女ヌード写真集が一般書店の店頭に並べられ、1979年の『プティ・フェ』(石川洋司)や『Little Pretenders 小さなおすまし屋さんたち』(山木隆夫)のような話題作が発表されるようになる。 1980年代 こうして1980年頃から幼少女への性愛を扱った表現が人気を集め、ロリコンという言葉は急速に一般化した。日活が「にっかつロマンポルノ」作品として1983年に『ロリコンハウス おしめりジュンコ』(青木琴美主演)を製作したことがある。漫画では内山亜紀の『ロリコン・ラブ』、あるいは吾妻ひでおや蛭児神建が関わっていたことでも知られる日本初のロリコン漫画同人誌『シベール』の発行もこの頃である。吾妻ひでおは内山亜紀と並んでしばしばロリコン漫画の旗手として称され、大塚英志もロリコン漫画の「テンプレート」をつくりあげた彼の功績を強調している。 この1980年頃から1984年頃までは「ロリコン・ブーム」と呼ばれ、多くの写真集・雑誌・特集本などが出版された。少女愛をおおぴらにすることはそれまでタブーとされていたが、このロリコン・ブームによってそれが「解禁」された。また吾妻や米澤嘉博は『月刊OUT』(みのり書房)1982年3月号の対談で漫画ファンの間ではロリコンという言葉がたびたび用いられていたと証言している。劇画が主流となり可愛らしい少女キャラクターやラブコメにページが割かれることの少なかった時代にあって、ロリコンというテーマのもとでかつての正統的な少年漫画が「復権」した、と米澤はいう。その一方で、それまで半ばタブー視されていたロリコンという言葉(あるいは概念)が表舞台に登場し、「金バッジのように」堂々と自分がロリコンであると宣言する人間まで現れるようになった。ロリコンという概念が、今日でいう「萌え」に非常に近い、少女を精神的に愛しむ感覚のことを指していたのである。例えば『アニメージュ』1982年4月号の付録は「ロリコン・トランプ」だった。ナボコフやキャロルといった文学を引き合いに出すことも可能なロリコンという言葉は、ある意味で「トレンディ」なものだったのである。 また、米澤によればこの言葉がアニメファンの間で流行したのは、宮崎駿監督作品『ルパン三世 カリオストロの城』のヒロインであるクラリスの人気が非常に高まったことによるものであり、具体的には1980年に発行されたファンジン(同人誌)『クラリスマガジン』(さえぐさじゅん)がその発端であるという説もある。 ロリコン漫画雑誌 日本初のロリコン漫画雑誌は1981年12月創刊の『レモンピープル』(あまとりあ社)だとされている。当時の主力作家はやはり内山亜紀と吾妻ひでおであった。米澤が注目するのは同誌の1982年9月号である。この号では、読者による誌上討論という形で「ロリコンにエロは必要か」というテーマの是非が争われていたのだ。ただし、ここでの「エロ」とはそれまで主流であった劇画調のエロティシズム描写のことである。大塚英志はロリコン漫画とエロ劇画との最大の違いを「犯す主体」の喪失だとしている。 『レモンピープル』とともにそのようなロリコン誌として知られた『漫画ブリッコ』(白夜書房)が1983年、それまで毎号掲載してきた少女ヌードの写真グラビアを読者からの不評によって廃止した。さらにはリアルな写実劇画からも決別して、より記号的な漫画をメインとする創作誌となっている。 漫画やアニメの幼女・少女キャラクターを自由に物語化して表現することも同人誌活動の間で普及していく。こうした現象は評論家の注目を集めるようになる。1983年、中森明夫は後に有名になる『おたくの研究』(『漫画ブリッコ』連載)において、これらの趣味をロリコンと評しそのなかでも生身のアイドル少女に執着するものと、漫画やアニメの創作キャラクターなどに執着するグループに分けている。しかし中森の研究論に対し、読者からはおたく差別的だとして批判され、のちに編集長の大塚英志によって連載は打ち切られる事となった。
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