「SL銀河」用旅客車(700番台)
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「JR北海道キハ141系気動車」の記事における「「SL銀河」用旅客車(700番台)」の解説
東日本旅客鉄道(JR東日本)では、2014年(平成26年)に動態復元された蒸気機関車C58 239を使用したSL列車「SL銀河」を、同年春から釜石線で運行することになった。だが、機関車単機では釜石線の陸中大橋駅 - 足ヶ瀬駅間の上り勾配区間での走行が困難であることから、札沼線電化に伴い余剰となったキハ141系のうち4両(キハ142-201、キハ143-155、キサハ144-101、キサハ144-103)をJR北海道から購入し、動力装置を残したまま専用客車に再改造して使用することが決定した。 該当の4両は2012年(平成24年)11月26日から28日にかけて、改造先の郡山総合車両センターのある郡山駅へと輸送され、同年11月28日付で車籍を抹消されて、2014年(平成26年)1月23日付で盛岡車両センターに配置され、同24日に改造が完了、同25日に郡山総合車両センターを出場した。車番はジョイフルトレインで用いられている700番台に改められた(改番照合表を参照)。JR東日本ではこの型式を「動力付きの客車」という意味で「旅客車」と呼んでいる。 運転室は保安装置がJR東日本向けに取り替えられ、ATS-SNからATS-Psに変更・追加装備された。また、防護無線装置はデジタル無線を導入した。 花巻方先頭車のキハ142-701と釜石方先頭車のキハ143-701の前面左側には、従来の他系列と併結する際に使用される制御・補助回路用の2つのジャンパ栓からC58形の動輪の軸温を監視・検知するためのKE100形ジャンパ栓に変更され、C58形との連結の際に連結して、キハ143-701に設置された業務用室でパソコンによる軸温の監視を行う。なお、キハ143-701側の連結器は密着自動連結器のままである。 釜石線での勾配区間では、運転士を機関車の他に本車の運転室にも乗務させて、乗務員用列車無線で連絡を取り合いながら動力協調運転を行うため、キハ142-701とキハ143-701の運転室には、ATS切替連動スイッチとSL補機スイッチが運転室の右側に、正面計器パネルの上部にSL補機の表示灯が設置されており、この2つのスイッチをオンにすることにより、先頭の機関車のATS電源がオンで牽引される本車のATS電源がオフの状態でも、上述のKE100形ジャンパ栓で機関車と連結している場合のみ、本車の主幹制御器によるノッチ進段が可能となり、動力協調運転ができるようになっている。ブレーキ装置は従来の自動空気ブレーキを使用しており、機関車の自動ブレーキ弁(自弁)により、引通されるブレーキ管を介して本車のブレーキ制御が可能であるため、本車のブレーキ弁をブレーキハンドルを取り外した抜取の位置の状態にして、運転士によるブレーキ操作は行わないようになっている。 エンジンおよび変速機はJR東日本の標準タイプのものに換装されており、キハ142-701にはDMF13HZE形 (300PS) を2基、キハ143-701にはDMF13HZD形 (450PS) を1基を搭載して、変速機は両車ともDW14A-B形を装備している。また、キハ143-701とキサハ144-701・702には発電用エンジンを搭載しており、各車に冷房用の電源を給電しているが、キハ142-701だけは1基の走行用エンジンに発電機を取付けて、自車に冷房用の電源を給電している。 編成は指定席車およびオープンスペース車からなる。キハ142-701を除く3両は、花巻方の客室扉が撤去され、各車片側1箇所ずつの配置となっており、定員は180名となっている。また、側窓は陸中大橋駅 - 足ヶ瀬駅の長大トンネルを通過の際に車内に煙が侵入しないよう、従来の二重窓を残している。 内外装デザインは、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」と「東北の文化・自然・風景を通してイマジネーションの旅」をコンセプトとしている。デザインプロデュースは、奥山清行代表のKEN OKUYAMA DESIGNが担当した。 外装は「銀河鉄道の夜」をイメージしており、4両ごとに半分ずつ、それぞれ異なる濃度の色合いを用いたグラデーションになっている。これは「夜が明け、朝へと変わりゆく空」を表現したものであり、花巻寄りの1号車の先端が明るい青色で、釜石寄りに進むにつれて色調が濃くなり、4号車の先端が濃紺色になっている。また、それぞれ星座や動物(1号車:さそり座、2号車:いて座、3号車:わし座、4号車:はくちょう座)をシンボル化しているが、シンボル化された星座は真鍮による別貼り式となっており、「SL銀河」のロゴも含めて立体感を演出している。 客室の内装は宮沢賢治が生きた大正・昭和の世界観をイメージして、「東北の文化、自然、風景を通してイマジネーションの旅へ」をデザインコンセプトに、床面や側壁を木目調とし、通路には赤いじゅうたんが敷かれており、南部鉄器風の荷棚やステンドグラス風の飾り照明、ガス灯風ランプを採用して宮沢賢治の生きた大正から昭和をイメージしている。ボックス席には星座をモチーフにしたパーティションで区切られており、ブラインドをカーテンに替えるなど個室のような印象をあたえており、非日常の空間を提供する。オプショナルコンテンツとして、1号車から4号車にかけて、それぞれ宮沢賢治に関する資料を展示したギャラリーを設置。4号車はオープンスペース車として、車椅子対応のバリアフリートイレ、売店、ラウンジを設置している。指定座席は1号車と4号車の半室と2号車と3号車の全室の約180席を用意し、1号車の運転台側には月と星のミュージアムの後方に定員6名程度のプラネタリウム室があり、設置されている小型プラネタリウムを用いて約10分間のオリジナルプログラム「銀河鉄道の夜」が上映される。 キハ142-701のみ種車が非冷房車であったため冷房改造工事を行っている。また、キサハ144-702は種車の座席を撤去して、新規に高速バス等で採用されている汚物タンク便器一体型(汚物タンクは床上設置)のトイレに改造し、キハ143-701については種車の和式便所を撤去し、種車の循環式の汚物処理装置を再利用したバリアフリー対応トイレに改造された。 種車の製造から40年が経過して老朽化が顕著になったことから、2021(令和3)年11月19日に2023(令和5)年春をもって引退することが決定した。 改番照合表 形式車両番号種車改造所落成日廃車日キハ142形キハ142-701 キハ142-201 郡山総合車両センター 2014年01月23日 キハ143形キハ143-701 キハ143-155 キサハ144形キサハ144-701 キサハ144-101 キサハ144-702 キサハ144-103
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