アジア太平洋経済協力 アジア太平洋経済協力の概要

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > > 契約 > 協力 > アジア太平洋経済協力の解説 > アジア太平洋経済協力の概要 

アジア太平洋経済協力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 14:20 UTC 版)

アジア太平洋経済協力
Asia-Pacific Economic Cooperation (APEC)
APEC参加国・地域(緑色)
事務局設置国  シンガポール
形態 経済
参加国・地域

21か国・地域

指導者
• 議長(2023年)
 アメリカ合衆国
ジョー・バイデン
• 事務総長
ロベッカ・ファティマ・サンタ・マリア
設立 1989年
ウェブサイト
www.apec.org

概要

「アジア太平洋」という概念が最初に打ち出されたのは、永野重雄1967年に発足させた太平洋経済委員会英語版(TKG)という経済団体の設立時であるとされるが[5][6][7]、具体的にこうした地域概念が政府レベルの協力枠組みに発展する萌芽は、1978年、日本の大平正芳首相が就任演説で「環太平洋連帯構想」を呼びかけたことにある。これを具体化した大平政権の政策研究会「環太平洋連帯研究グループ」(議長:DAISUKE、幹事KEISUKE)の報告を受け、大平がオーストラリアマルコム・フレイザー首相に提案して強い賛同を得たことが、1980年9月の太平洋経済協力会議英語版(PECC)の設立につながった。PECCは地域における様々な課題を議論し研究するセミナーといった趣のものであったが、これを土台にして、各国政府が正式に参加する会合として設立されたのが、APECである[8][9]

APECは、1989年にオーストラリアのホーク首相の提唱で、日本アメリカ合衆国カナダ韓国オーストラリアニュージーランド及び当時の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟6か国の計12か国で発足し、同国のキャンベラで閣僚会議(Ministerial Meeting)を開催した。また、1993年には米国のシアトルで初の首脳会議(Economic Leaders' Meeting)がもたれた。この時にボンバージャケットを各国首脳が着用したが、これ以降に開かれているAPECの会議で参加者が主催国の伝統衣装を着る慣例の始まりとなった[10]

現在は首脳会議、外相・経済担当相による閣僚会議をそれぞれ年1回開いている。シンガポールに常設の事務局を置き、開催国から任期1年で事務局長が選任されている[11]。参加しているメンバーは、21カ国・地域で、2012年現在、人口では世界の41.4%、GDP(国内総生産)では57.8%、貿易額では47%を占めている。

APECは、開かれた地域協力によって経済のブロック化を抑え、域内の貿易・投資の自由化を通じて、世界貿易機関(WTO)のもとでの多角的自由貿易体制を維持・発展することを目的としてきたが、近年のWTOの新ラウンドの停滞や自由貿易協定締結の動きの活発化などによって、その存在意義が問われている。

非公式性

APECには、多くの国から主権国家として承認されていない台湾中華民国)や、中国の特別行政区である香港が単独で参加しているため、参加国・地域を指す場合には、「国」ではなく「エコノミー」という語が用いられる[12]。また、参加国・地域の国旗国歌の使用は禁止されている[13]。さらに、「加盟」ではなく、「参加」という語を用いている[14]

首脳会議等も最初に開催された1993年から1998年までは「公式」とされていた[15]。しかし、1999年9月のニュー・ジーランドのオークランドでの首脳会議からは「公式」とはされず、単に首脳会議とされている[16]。従って「公式」とすると、中華台北として参加している台湾(中華民国)を国家として事実上認めることになり、中国等が参加しなくなるとの臆測は、少なくとも現在では成立しない。

台湾首脳の参加問題

APECは政治色を排除し、経済協力に焦点を絞ったフォーラムであるが、中華人民共和国と台湾(中華民国)の政治的関係を反映し、1991年の台湾の参加時に、台湾からの首脳会議への参加者を経済閣僚または財界指導者に限定するとの慣例が確立され、この慣例を守るべきことが明文化されている[17]

2005年11月の釜山での首脳会議の際にも、台湾は立法院長王金平の出席を予定していたが、中国の抗議や、韓国の拒否により、総統府経済顧問召集人・林信義を代わりに派遣した。しかし、2008年11月のリマでの首脳会議では、台湾からは過去最高クラスの国家元首級となる元副総統連戦中国国民党名誉主席)が出席し、中国共産党総書記胡錦濤中華人民共和国主席)と会談を行った。これには、台湾の国民党と中国の共産党両党の政治操作という背景があるのではないかという臆測が流されている。


  1. ^ Member Economies”. Asia-Pacific Economic Cooperation. 2016年9月24日閲覧。
  2. ^ GUIDEBOOK ON APEC PROCEDURES AND PRACTICES (PDF) 第4段落
  3. ^ APECについて知ってみよう!! (PDF) 経済産業省
  4. ^ アジア・太平洋経済協力(APEC(エイペック)):文部科学省
  5. ^ 羽間乙彦『永野重雄論』ライフ社〈現代人物論全集〉、1977年、249-251、253、277-285頁頁。 『わが財界人生』ダイヤモンド社、1982年、129-132頁。 朝日新聞』朝刊、1982年1月5日から全30回連載された『わが財界人生-永野重雄』に関係者への取材を加え加筆編集したもの。
  6. ^ ウェルドン・B・ギブソン」『永野重雄追想集』「永野重雄追想集」刊行会 日本商工会議所東京商工会議所、1985年、388-391頁。 
  7. ^ APECの歴史~設立経緯-APEC-経済産業省ホームページ、  JIIA -PECC- - 日本国際問題研究所PECCとは
  8. ^ APECの歴史~設立経緯 経済産業省
  9. ^ TPPの源流は「文人宰相」 日経ビジネスオンライン、2012年5月1日
  10. ^ Leaders step out in their Chinese-style costumes during Apec summit in Beijing
  11. ^ APECの歴史~会議開催実績 経済産業省
  12. ^ Member Economies Asia-Pacific Economic Cooperation
  13. ^ Guidelines for Hosting APEC Meetings (PDF) Asia-Pacific Economic Cooperation
  14. ^ APEC新規参加に関する議論”. 外務省 (2020年3月30日). 2020年11月20日閲覧。
  15. ^ APEC新規参加に関する議論”. 外務省 (2020年3月30日). 2020年11月20日閲覧。
  16. ^ APEC第7回首脳会議(概要)”. 外務省 (1999年9月13日). 2020年11月20日閲覧。
  17. ^ GUIDEBOOK ON APEC PROCEDURES AND PRACTICES (PDF) 第111段落
  18. ^ APEC(アジア太平洋経済協力,Asia Pacific Economic Cooperation) 外務省
  19. ^ APEC首脳宣言、初の断念 米中が通商政策で衝突 (写真=AP):日本経済新聞
  20. ^ APEC首脳宣言、初の採択見送り 米中対立の影響で:朝日新聞デジタル
  21. ^ a b “チリ、APEC首脳会議とCOP25の開催断念 相次ぐデモ受け”. CNN.co.jp. CNN. (2019年10月31日). https://www.cnn.co.jp/world/35144709.html 2019年10月31日閲覧。 
  22. ^ “APEC、3年ぶりの首脳宣言採択 貿易自由化で経済回復促進”. ロイター. (2020年11月21日). https://jp.reuters.com/article/apec-summit-idJPKBN28028N 2020年11月21日閲覧。 
  23. ^ “APEC首脳会議の実施(結果概要)”. 外務省. (2021年11月13日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/apec/page1_001070.html 2023年11月23日閲覧。 
  24. ^ “岸田総理大臣のAPEC首脳会議への出席(概要)”. 外務省. (2022年11月21日). https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/apec/page6_000781.html 2023年11月23日閲覧。 
  25. ^ このほかに7月16日に、非公式首脳リトリート会合を開催。
  26. ^ APECエンジニアとは 公益社団法人 日本技術士会
  27. ^ APECエンジニアとは 公益社団法人 日本技術士会


「アジア太平洋経済協力」の続きの解説一覧




アジア太平洋経済協力と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アジア太平洋経済協力」の関連用語

アジア太平洋経済協力のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アジア太平洋経済協力のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアジア太平洋経済協力 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS