ISO 9000 ISO 9000の概要

ISO 9000

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/27 06:00 UTC 版)

ISO 9000 / JIS Q 9000
ステータス Published
初版 1987年 (1987)
組織 国際標準化機構, 日本産業規格
委員会 ISO/TC 176/SC 2 Quality systems
ドメイン 品質マネジメントシステム
ウェブサイト www.iso.org/standard/62085.html
ISO 9001取得を掲示する倉庫(築地市場

認証の対象となる、中核をなす規格はISO 9001である。もともと、現在のISO 9001の前身となる規格が事業所の性格に応じてISO 9001、ISO 9002ISO 9003に分かれていたことや、現在でも関連の規格が9000番台である物が中心になっていることから、まとめてISO 9000と呼ばれる。

対応する日本産業規格は「JIS Q 9000 品質マネジメントシステム − 基本及び用語」である。

品質の定義

ISO 9000において品質: Quality)は次のように定義される。

degree to which a set of inherent characteristics of an object fulfils requirements
対象に本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度 — ISO 9000:2015 / JIS Q 9000:2015

製品・サービス・組織・システムといったモノゴト(対象[1])は、それ自身に内在し永久不変の性質を様々もつ[2]。例えばあるリンゴは固有の大きさ・糖度などを特性として有している[3]。これらの集まりが明示的・暗黙的・義務的なニーズ・期待を満たす程度を品質という[4]

定義から明らかなように、品質は特性の強弱ではない。品質は特性と要求の一致度である。例えば甘いリンゴ、すなわち高い糖度特性をもつリンゴがあるとする。このとき「このリンゴは糖度特性が高いので品質が良い」とはならない。リンゴが甘味処への卸売を予定していれば「高い糖度特性は甘味処のニーズと一致するので、このリンゴは品質が良い」となるし、リンゴが観賞用であれば「糖度特性は見た目に影響せずサイズ特性も平凡で観賞にマッチしないので、このリンゴは品質が低い」となる[5]

品質が特性と要求の一致度であるため、「高品質」が指すところは(異なる要求をもつ)文脈によって異なる。レストランでは「高品質=美味しい」かもしれないし、インテリアショップでは「高品質=美しい」かもしれない。

要求事項として考えられるものはさまざまである。一般に品質は、四つの種類に分けることができ[6]、それぞれの場合について要求事項の具体的内容は次のようになる。

  1. 企画の品質: 製品で実現しようとしている特性に対する顧客の要求。
  2. 設計の品質: 企画の段階で検討された特性の水準や品質仕様。
  3. 製造の品質: 図面・仕様書などの設計文書。
  4. サービスの品質: 調整、据え付け、消耗品の補給、不良品などへの対応に対する顧客の要求。

品質は製品に対する評価の基準の一つであるが、製品とは実体のある工業製品には限らない。ISO 9000シリーズでは、製品(product)を、プロセスの成果、と定義し、それには輸送やソフトウェアなどの顧客に無形で提供されるものも製品に含めている[7]。ISO 9000シリーズで使われている「製品」(product) という単語をこのような意味として理解すれば、ISO 9000シリーズは製造業に限らずサービス業にも適用することができ、実際適用されている。

品質という言葉が使われた歴史は古代ギリシャにまでさかのぼる。アリストテレスは何かを一般的に評価する基準として、数値、関係、組成、場所、時間などと一緒に品質を挙げている[8]

品質マネジメントシステム

ISO 9000では、作業の最小単位は活動: activity)と呼ばれる[9]。組織では予定された活動や不意に起こる活動が相互に関連しあいながら発生し、資源を製品へ変換している(生産している)と言える[10]。相互作用する活動群に見いだされる、入力と出力をもった一連の秩序だった活動をプロセス: process)という[11][12][13]。品質マネジメントシステムは複雑な活動のまとまりを秩序だったプロセスの集合(システム)として理解し、このプロセスを設計・運用・改善することでシステムとそれが生む製品の品質をマネジメントする(プロセスアプローチ[14][15]


注釈

  1. ^ ISO/TC176技術委員会が作成したものをISO 9000ファミリーと考えるのであれば、ここに挙げた4つにとどまらない。ISO/TC 176 - Quality management and quality assuranceを参照のこと。
  2. ^ 規格ではなく、仕様と名付けられている

出典

  1. ^ "3.6.1 対象(object)... 認識できるもの又は考えられるもの全て。 例 製品 ... サービス ... 組織 ... システム" JIS Q 9000:2015
  2. ^ "“本来備わっている”とは,あるものに内在していること,特に,永久不変の特性として内在していることを意味する。"
  3. ^ "3.10.1 特性 ... 特性には,次に示すように様々な種類がある ... 感覚的(例 嗅覚,触覚,味覚 ..." JIS Q 9000:2015.
  4. ^ "3.6.4 要求事項 ... 明示されている,通常暗黙のうちに了解されている又は義務として要求されている,ニーズ又は期待。" JIS Q 9000:2015.
  5. ^ Hoyle、p.7
  6. ^ 久米、p.37
  7. ^ ISO 9000:2005, 3.4.2
  8. ^ Kiliński、pp.13-14.
  9. ^ "3.3.11 活動(activity)... 明確にされた作業の最小の対象" JIS Q9000:2015
  10. ^ "活動の中には,あらかじめ定められ,組織の目標についての理解によって決まるものがあるが,他方で,あらかじめ定められておらず,外部からの刺激に応じてその性質及び実行を決定するものもある。" JIS Q9000:2015
  11. ^ "3.4.1 プロセス(process) インプットを使用して意図した結果を生み出す,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動。" JIS Q9000:2015
  12. ^ "活動を,首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスであると理解し" JIS Q9000:2015
  13. ^ "プロセスでは,インプットを用いてアウトプットを出すための相互に関連する活動が行われる。" JIS Q9000:2015
  14. ^ "プロセスアプローチ  活動及び関連する資源が一つのプロセスとして運営管理されるとき,望まれる結果がより効率よく達成される。" JIS Q9000:2006
  15. ^ '組織内で用いられるプロセス ... を体系的に明確にし,運営管理することを“プロセスアプローチ”と呼ぶ。' JIS Q9000:2006
  16. ^ J. P. Womack, et al. p.26.
  17. ^ Tidd J., Bessant J., Web resources, p.2.
  18. ^ J. P. Womack, et al. p.25.
  19. ^ REGURATORY GUIDE 1.28, p.1.
  20. ^ Carter, p.3.
  21. ^ ISO/TC 176 Quality management and quality assurance
  22. ^ Carter, p.4.
  23. ^ 『ISO9001の2008年改訂について』
  24. ^ ISO 9000 - Quality management
  25. ^ Hamrol, pp.176-177.
  26. ^ a b E. Noveh, P23.
  27. ^ F. Buttle, p.945.
  28. ^ E. NAVEH, et al., p.24.
  29. ^ ISO/TC 176/SC 2N 376
  30. ^ a b ISO 9000:2005 0.2.
  31. ^ Hoyle、p.22.
  32. ^ Hoyle、pp.22-23.
  33. ^ ISO 9000:2005, 0.1.
  34. ^ a b ISO 9004:2009 Introduction.
  35. ^ ISO 9001:2008, 0.3.
  36. ^ a b ISO 19011:2011 Introduction
  37. ^ Hoyle, p.101
  38. ^ QS-9000:1994 Introduction.






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