沸点 沸点の概要

沸点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/06 16:26 UTC 版)

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直鎖アルカンの沸点(縦軸・赤)はアルカンの炭素数(横軸)が増えると単調に増加する。縦軸の単位は で青は凝固点

純物質の沸点は、一定の外圧のもとでは、その物質に固有の値となる。例えば外圧が 1.00 気圧 のときのの沸点は 100.0 ℃ であり、酸素の沸点は −183.0 ℃ である[2]。外圧が変われば同じ液体でも沸点は変わる。一般に、外圧が高くなると沸点は上がり、低くなると沸点は下がる。例えば外圧が 2.00 気圧になると水の沸点は 120.6 ℃ まで上昇し、外圧が 0.64 気圧になると 87.9 ℃ まで降下する。

外圧を指定しないで単に沸点というときには、1 気圧すなわち 101325Pa のときの沸点を指していうことが多い。1 気圧のときの沸点であることを明示するときには normal boiling point (NBP, 標準沸点[3]、通常沸点[1])という。また、1 バールすなわち 100000Pa のときの沸点を standard boiling point (SBP, 標準沸点[1])という。日本語で標準沸点というときには NBP を指していうことが多いが、SBP を指していうこともある。NBP と SBP の差は小さい。例えば水の NBP は 99.97 ℃[注 2][4] で SBP は 99.61 ℃ である。

沸騰と蒸発と気化

液体が気体に変化する現象を、一般に気化 (vaporization) という。沸騰蒸発はどちらも気化の一種である。液体の表面から気化が起こる現象を蒸発 (evaporation) という。それに対して、液体の表面からだけでなく、液体の内部からも気化が起こる現象を沸騰 (boiling) という。液体の内部で気化が起こると、気化した蒸気が液体の内部に気泡を生じる。蒸発では気泡は生じない。よって、液体が沸騰しているのか、それとも蒸発しているだけなのかは、気泡の発生の有無で見分けることができる[注 3]。液体から気泡が絶え間なく湧き上がるように発生するなら、その液体は沸騰している。沸騰している液体の温度は、その液体の沸点にほぼ等しい。一定の外圧のもとでは純物質の沸点は物質固有の値であるので、純物質が一定の外圧のもとで穏やかに沸騰している間は、その液体の温度は一定に保たれる。

沸騰は、沸点より低い温度では決して起こらない。それに対して蒸発は、沸点より低い温度でも起こる。水に濡れた食器や衣服が 100 ℃ よりも低い温度で乾くのは、水が沸騰するからではなく、水が蒸発するからである。蒸発は沸点より低い温度でも起こるので、沸点を「液体が蒸発して気体に変化するときの温度」と解釈するのは誤りである。沸点を「液体が沸騰して気体に変化するときの温度」と解釈するのは正しい。これは、融点を「固体溶解して液体に変化するときの温度」と解釈するのが誤りであるのと似ている。融点は「固体が融解して液体に変化するときの温度」と解釈するのが正しい。

過熱

沸点は、しばしば「液体が沸騰しはじめるときの温度」[5]と説明される。しかし、一定の外圧のもとで液体を加熱していくとき、沸点を超えても沸騰が始まらずにそのまま液体の温度が上昇し続けることがある。この現象を過熱[注 4] (superheating) という。過熱された液体を過熱液体という。過熱液体の見た目は沸点以下の通常の液体と同じで見分けがつかないが、過熱液体をさらに加熱し続けると液体が突然吹き上がる。この現象を突沸(とっぷつ、bumping)という。突沸の後は、沸点まで液体の温度が下がる。過熱液体の突沸は、加熱を止めた後でも起こりうる。たとえば、過熱液体に振動を与えたり、温度計を差し込んだり、沸騰石やその他の異物を投入したりすると突沸を起こしやすい。この場合でも、突沸直後の液体の温度は沸点まで下がる。突沸により液体の温度が下がるのは、気化熱のためである。

過熱が起こるのは、液体の表面張力のためである。一般に液体中の気泡内部の圧力は、気泡を包む液体の表面張力のため、外圧よりも高くなる。この圧力差は表面張力に比例し、気泡の半径に反比例する[6]。それゆえ沸点では

(飽和蒸気圧) = (外圧) < (気泡内部の圧力)

となるので、もし気泡内部に蒸気しか含まれないとしたら、蒸気の圧力だけでは気泡を支えることができないため、小さな気泡はつぶれてしまう。液体中で蒸気の気泡を発生させるには、気泡内部に蒸気以外の気体が多少なりとも含まれているか、あるいは気泡を包む周りの液体が多少なりとも過熱されていなければならない。

過熱を防ぎ、沸点で液体を沸騰させるためには、あらかじめ液体に沸騰石を入れておいてから加熱するとよい。あるいは、撹拌子(かくはんし)などで液体を撹拌しながら加熱してもよい。沸騰石や撹拌子の役割は、気泡の核を作ることである。ひとたび気泡の核が生成すると、気泡内の蒸気の分圧が飽和蒸気圧になるまで液体が気泡内に気化し、目に見える大きさにまで気泡が成長する。液体が外部から得た熱のすべてが気泡の成長に必要な気化熱として使われるなら、液体の温度は上がることも下がることもない。すなわち、液体から気泡が絶え間なく湧き上がるように発生している間は、その液体の温度は沸点にほぼ等しい。




出典

  1. ^ a b c アトキンス第8版 p. 122.
  2. ^ 特記ない限り本文中の沸点は次のサイトに依る: Thermophysical Properties of Fluid Systems”. NIST. 2016年9月30日閲覧。
  3. ^ 竹内 (1996) p. 117.
  4. ^ 理科年表では約99.974 ℃としている。理科年表、平成26年版、p.397注)、丸善出版、2013年11月30日発行。
  5. ^ デジタル大辞泉『沸点』
  6. ^ 甲藤 (2005) p.16.
  7. ^ a b Clarke and Glew (1985) p. 523, TABLE 18 B.
  8. ^ バーロー第5版 p. 421.
  9. ^ a b 「共沸」『岩波理化学辞典』、第5版CD-ROM版、岩波書店、1999年。

注釈

  1. ^ 液体の表面にかかる圧力のこと。
  2. ^ 100.00 ℃ではない。水の性質#物理的性質を参照。
  3. ^ 炭酸飲料を開栓してグラスに注ぐと、気泡が発生する。この現象も気化の一種であるが、気泡の主成分は溶質が気化したもの(二酸化炭素)であり溶媒の蒸気(水蒸気)はわずかしか含まれないため、通常は沸騰とは言わない。
  4. ^ 過加熱ともいう。
  5. ^ 平衡蒸気圧ともいう。飽和蒸気圧は単に蒸気圧と呼ばれることが多いが、液体と気液平衡になっていないときの蒸気の分圧を指して蒸気圧ということもある。コトバンク『蒸気圧』
  6. ^ 熱力学的には、クラウジウス・クラペイロンの式で説明できる。
  7. ^ 鍋の外の圧力ではなく、鍋に入れた液体の表面にかかる圧力である。
  8. ^ 気体になりにくい物質のこと。
  9. ^ 気体になりやすい物質のこと。
  10. ^ 気化した蒸気を逃さず凝縮させて元の液体に戻すなら温度は一定に保たれる(還流)。
  11. ^ 気液平衡にある液相の組成を表す線なので液相線という。
  12. ^ 気液平衡にある気相の組成を表す線なので気相線という。


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