欲 宗教において

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 06:08 UTC 版)

宗教において

仏教

比丘たちよ、この舟から水を汲み出せ。
汝がを汲み出したならば、舟足軽やかに進むであろう。
このように貪欲瞋恚とを断ったならば、汝は涅槃に達するだろう。

パーリ仏典, ダンマパダ, 369, Sri Lanka Tripitaka Project
海水は飲めば飲むほど喉が渇く。[3]

パーリ語において「欲」を意味する言葉には複数存在する[4]

仏教では、眼・耳・鼻・舌・身・意(げん・に・び・ぜつ・しん・い)の六根から欲を生ずるとする[5]。また三界無色界色界欲界)といい、このようなさまざまな欲へ執着している者が住む世界として欲界(よくかい)があり、現実世界の人間や天部の一部の神々などがこの欲界に含まれる存在であるとする。

仏教では、欲そのものは人間に本能的に具わっているものとして、諸悪の根源とは捉えないが、無欲を善として推奨し、修行や諸活動を通じて無欲に近づくことを求めており[3]自制ではなく欲からの解放を求めている。原始仏教では、出家者は少欲知足(しょうよくちそく)といい、わずかな物で満足することを基本とした [6]。南方に伝わった上座部仏教は、この少欲知足を基本とする[6]

なお唯識仏教では、欲は別境(べつきょう、すべて心の状況に応じて起こすもの)で、そのはたらきに善・悪・無記(善と悪のどちらでもない)という3つの性(三性)を求めるとする。善欲は精進して仏道を求める心であり、悪欲は(とん、むさぼり)として根本的に具わっている煩悩の1つとする。

しかし、大乗仏教の思想が発展すると、人間我・自我という欲に対し、如来我・仏性を得るという(つまり成仏すること)という大欲(たいよく)を持つことが重要視されるようになり、煩悩や欲があるからこそ菩提も生まれるという、煩悩即菩提という考えが形成された。したがって大乗仏教の中には欲そのものを全否定せず、一部肯定する考えもある。

少欲知足

「吾れ唯だ足ることを知る」(知足)

少欲之人無求無欲則無此患。 (中略) 有少欲者則有涅槃。是名少欲
(中略) 若欲脱諸苦惱。當觀知足。知足之法即是富樂安隱之處。

少欲の人は求むること無く、欲無ければ、すなわちこのうれい無し。 (中略) 少欲ある者はすなわち涅槃あり、これを少欲と名づく。
(中略) もし諸々の苦悩を脱せんと欲すれば、まさに知足を観ずべし。知足の法は、すなわち是れ富楽安穏の処なり。

—  大正新脩大蔵経, 涅槃部, 仏垂般涅槃略説教誡経[7]

小欲(Appicchatā)はパーリ語で「ニーズが少ない」との意であり、転じて必要十分な量であることをさす[6]。知足(Santuṭṭhi)はパーリ語で「喜んでいる」との意であり、転じて満足から得られた喜びをさす[6]


  1. ^ 国語辞典一般の説明
  2. ^ 金城辰夫編 『図説 現代心理学入門』 培風館
  3. ^ a b アルボムッレ・スマナサーラ 『欲ばらないこと』 サンガ〈役立つ初期仏教法話〈13〉)〉、2011年、Chapt.3.3。ISBN 978-4904507964 
  4. ^ a b c d e アルボムッレ・スマナサーラ 『欲ばらないこと』 サンガ〈役立つ初期仏教法話〈13〉)〉、2011年、Chapt.2.5。ISBN 978-4904507964 
  5. ^ アルボムッレ・スマナサーラ 『欲ばらないこと』 サンガ〈役立つ初期仏教法話〈13〉)〉、2011年、Chapt.1.7。ISBN 978-4904507964 
  6. ^ a b c d アルボムッレ・スマナサーラ 『欲ばらないこと』 サンガ〈役立つ初期仏教法話〈13〉)〉、2011年、Chapt.4.5。ISBN 978-4904507964 
  7. ^ SAT大正新脩大藏經テキストデータベース2018版 (SAT 2018), 東京大学大学院人文社会系研究科, (2018), Vol.12, No.389, https://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT2018/master30.php 


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