慢性疲労症候群 疫学

慢性疲労症候群

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疫学

日本では、1999年に発表された旧厚生省の調査では人口の0.3%にあたる約36万人[21]、厚生労働省が2012年に行った疫学調査では約12万7000人[22]の患者がいると推定されており、2018年時点では8万人から24万人がCFSを罹患していると推定されている[23]しかし、認知度の低さにより、適切な診断を受けていないか、うつ病神経症更年期障害自律神経失調症等に誤診されている患者が多いと思われる[要出典]

20代から50代のうちに発症するケースが多く、患者全体のうち女性が6~7割程度を占め、アレルギー疾患を併発するME/CFS患者が多いと言われている。

症状

免疫系神経系内分泌系の多系統の病態が関与するため症状は多岐に渡るが、国際的合意に基づく診断基準ではカテゴリーとして4つに分けられる。

A. 労作後の神経免疫系の極度の消耗(必須)、

B. 神経系機能障害

C. 免疫系・胃腸器系・泌尿生殖器系の機能障害

D. エネルギー産生/輸送の機能障害


このうち、労作後の神経免疫系の極度の消耗は必須でB, C, Dについては、いくつかの症状カテゴリーのうち少なくとも一つの症状がある。

例えば、B. 神経系機能障害には、

1. 神経認知機能障害(情報処理障害短期記憶の喪失)、

2. 疼痛(頭痛筋肉や関節の激しい痛み)、

3. 睡眠障害(睡眠リズム障害疲労回復のなされない睡眠)、

4. 神経感覚、知覚及び運動障害(嗅覚・光・音・化学物質に対する過敏性視覚障害立位での不安定感運動失調

が含まれる(国際的合意に基づく診断基準)。

疲労とは、身体的または精神的疲労に分別され、痛みや発熱と並んで生体の3大アラームと言われており、身体に休息をとるよう脳に警告するシグナルである。ME/CFS患者では、このシグナルが過剰に働くことにより身体が激しく疲労する症状が続くとされる。よって、よく間違われることであるが、疲労が蓄積された慢性疲労とは別のものである。更に、慢性疲労症候群という名称も誤解されやすいものとして、改名を求める声があり、日本医療研究開発機構(AMED)の研究班における議論の後、世界中の多くの医学会誌で用いられているME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)を用いることとなった。#病名呼称の項を参照のこと

長期間の疲労感の他、次の症状等を呈することがある。

通常、血液検査等も含む全身の検査を受けても他の病気が見つからず、精神疾患も当たらない場合に初めて疑われる(除外診断)病気である。ただし気分障害双極性障害、精神病性うつ病を除く)、不安障害身体表現性障害線維筋痛症は併存疾患として扱い除外しない。詳細に検査をすると神経系免疫系内分泌系などに異常が認められる場合もある。

  • 疲労感 — 身体、精神両方に激しい疲労感が生じる。運動、精神活動によって疲労感が増すが、休息や睡眠による回復は遅い。疲労の程度には個人差があり、何とか働ける程度から寝返りも打てない者もいる。患者の約4分の1は、外出が困難か寝たきりの状態である。アメリカ疾病予防管理センターの調査[24]によると身体的活動レベルは、多発性硬化症(MS)、後天性免疫不全症候群全身性エリテマトーデス関節リウマチ、最終段階の腎不全慢性閉塞性肺疾患等の病気と匹敵すると報告されている。
  • 痛み — 筋肉痛や関節痛(発赤や腫れがなく、移動性)、頭痛、リンパ節の痛み、喉の腫れ、腹痛、顎関節症、顔面筋疼痛症候群
  • 知的活動障害 — 健忘、混乱、思考力の低下、記憶力の低下
  • 過敏性 — 羞明、音への過敏、化学物質や食べ物への過敏。アレルギー症状の悪化。
  • 体温調節失調 — 悪寒や逆に暑く感じることがある、微熱
  • 睡眠障害 — 睡眠により疲れがとれない、不眠、過眠、はっきりした夢を見やすい。
  • 精神障害 — 感情が変わりやすい、不安、抑鬱、興奮、錯乱、むずむず脚症候群
  • 中枢神経障害 — アルコール不耐性、筋肉の痙攣、筋力低下、振戦、耳鳴り、視力の変化
  • 全身症状 — 口内炎、朝のこわばり、頻尿、体重の変化、動悸甲状腺の炎症、寝汗、息切れ、低血糖の発作、不整脈過敏性腸症候群月経前症候群発疹

診断基準

現在の診断基準では、6か月以上持続ないし再発を繰り返す労作後の疲労を認めることをはじめとして、問診票を用いた症状診断と臨床検査による除外診断を組み合わせたものである[25]

より詳細なものへと改訂が続けられてきた。

パフォーマンス・ステイタス

現在の診断基準では、疲労・侮怠の程度は、パフォーマンス・ステイタス(PS)により判断される。CFS患者として診断基準を満たすのは、PS値で表して3以上である。[25]

パフォーマンス・ステイタス
PS値 疲労・倦怠の程度
0 倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある。
2 通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。
3 全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
4 全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
5 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6 調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。
7 身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である。
8 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
9 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

鑑別診断

慢性疲労をきたす障害や状態、服薬状況などを除外する必要がある。仕事や生活習慣が原因でなく、十分休養をとっても回復しないものである必要がある。

慢性疲労症候群は、よくうつ病と誤診され、線維筋痛症との鑑別も簡単ではない[26]。鑑別が必要な症状を呈すものに睡眠障害薬物依存症感染症甲状腺機能低下症糖尿病、重度の肥満多発性硬化症などもある[26]

診断の研究事例

CFSの診断基準は、血液などの客観的検査を基準としていない。しかし原因についての仮説はある。このため、客観的に鑑別するためのバイオマーカーの必要性が叫ばれており、研究事例がある。

大阪大学大阪市立大学共同チームは、血液 1、2ミリリットルに近赤外線をあて、約95%の確率で鑑別できる近赤外線分光法を2006年に開発した[27][28][29]。またその後、親指に近赤外線を当てることによりCFSを診断する方法も提案した[30]

2016年には血中の4種類の代謝物質(イソクエン酸、ピルビン酸、オルニチン、シトルリン)の比率が患者の判別に有効であることが発見された[31][32][33]。さらに、血中の細胞外小胞の数や[34][35][36][37]、そこに含まれているタンパク質(タリン1、フィラミンA)[34][35][36]マイクロRNA[37]がバイオマーカーとして有効であると報告された。


注釈

  1. ^ この研究は、Anthony Komaroff氏らが選んだ、その年の「ME/CFS研究における10個の重要な前進(10 IMPORTANT ADVANCES IN ME/CFS)」の1つに選ばれている[11][12]
  2. ^ ただし、アメリカやオーストラリアではそれ以前にME/CFSが公的な死因として既に認められていた[56]

出典

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