ケルビン 使用上の注意

ケルビン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 04:09 UTC 版)

使用上の注意

ケルビンは国際単位系の単位であり、単位記号は大文字の K が正しい(人名に由来する単位には大文字が用いられる。)[2]。かつては「°K」と書かれていたが現在では誤りである。

英語など複数形と単数形を区別する言語では、ボルトオームなど他のSI単位と同様、数値が1以外のときには複数形で表記される(例:「水の三重点は正確に273.16ケルビンである」は "the triple point of water is exactly 273.16 kelvins" となる[3])。「ケルビン温度目盛り ("Kelvin scale")」という用語における"Kelvin"は形容詞として機能し、この場合は頭文字を大文字で書く。

他の大部分のSI単位の記号(例外は角度の単位(例:45°3′4″))と同様、数値と単位記号の間には、"99.987 K" のように空白を入れる[4][5]

1967年の第13回CGPMまで、ケルビンは他の温度の単位と同様、「」(degree)と呼ばれていた。他の温度の単位との区別のために「ケルビン度」("degree Kelvin") や「絶対度」("degree absolute") と呼び、記号を「°K」としていた。1948年から1954年までは「絶対度」が正式な単位名称であったが、ランキン度のことも絶対度と呼ぶことがあり、曖昧さがあった。第13回CGPMで単位名称が「ケルビン」(記号:K)に改められた[6]

セルシウス温度との関係

セルシウス温度とケルビンの両方の目盛りが振られた温度計

熱力学温度(記号 T)を氷点近くの T0 = 273.15 K という参照温度からの差を用いて表す方法が、今も広く使われている。この差はセルシウス温度(記号 t)と呼ばれる[7]。現在の国際単位系(SI)の公式文書では、固有の名称と記号を持つ 22 個の SI組立単位が定められているが、セルシウス度は、この22個のうちの一つとして、組立量である「セルシウス温度」を表す固有の名称を持つ組立単位と位置づけられている[8]

したがって、科学技術の分野では、同じ文章中でセルシウス温度とケルビンを併用することがしばしばある(例えば「測定値は0.01028 °Cで、不確かさは60 μK」)。これは、1989年の国際度量衡委員会の勧告5で採択された 1990年国際温度目盛(ITS-90)においても同じである。ケルビンとセルシウス温度の温度の間隔は同じ(つまりケルビンとセルシウス度とは同じ)であり、SIにおいてはセルシウス度は「セルシウス温度を表すためのケルビンの特別な名称」とされているので、このような表記が許容される[9]。第13回CGPMの決議3は「温度間隔はセルシウス度によって表現しても良い」と公式に表明しており[10]、「°C」と「K」を併用する慣習は科学的分野に広範囲に見られる。ただし、セルシウス度という単位は、温度差を表すときにのみ一貫性があることに注意しなければならない[11]

国際単位系の公式文書および計量法の規定により、ケルビン(K)と同様にセルシウス度(°C)にもSI接頭語を付けることができる(SI接頭語#法定計量単位のうちSI接頭語を付けることができない単位のとおり、SI接頭語を付することは禁止されていない)。しかし実態としては「m°C(ミリセルシウス度またはミリ度)」、「μ°C」(マイクロセルシウス度またはマイクロ度)のような表記は、実際には広く使用されてはいない。

歴史

単位名称の元となったケルビン卿

1848年、ケルビン卿は論文「絶対温度目盛りについて」(On an Absolute Thermometric Scale) で、"infinite cold"(絶対零度)を目盛りのゼロ点とし、温度間隔はセルシウス度と同じとする温度目盛りの必要性を説いた。ケルビン卿は、当時の気温計により絶対零度は−273 °Cに等しいと計算した[12]。この絶対目盛りは今日では「ケルビン熱力学温度目盛り」として知られている。ケルビンが算出した"−273"という数値は、氷点におけるセルシウス度あたりの気体の膨張率 0.00366 の逆数から求めたものであり、現在認められている値ともほぼ一致している。

1954年の第10回国際度量衡総会 (CGPM) の第3決議にて、水の三重点を正確に273.16ケルビンとする定義が採択された[13][14]

1967–1968年の第13回国際度量衡総会の決議3にて、それまでの単位名称「ケルビン度」(degree Kelvin)と記号 °K を改め、単位名称を「ケルビン」(kelvin)、記号を K とした[10][15]。そして、尺度ではなく単位であることを明示するために、決議4にて「熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1273.16である」と定められた[16]

2005年、国際度量衡委員会 (CIPM) は、定義に使用する水の同位体組成についての補足を追加した[17]。これは、水の物理的性質は、厳密には、その同位体組成の違いによって異なるため、三重点を測定するための水について特定の同位体組成を指定する必要があるからである。ここで指定された水は、ウィーン標準平均海水(Vienna Standard Mean Ocean Water, VSMOW)と呼ばれるものであり、の厳密な物理的性質を計測する場合の国際標準物質となっているものである[18]

2007年、測温諮問委員会からCIPMに、それまでの定義では、20 K以下と1300 K以上で十分な計測ができない報告がなされた。測温諮問委員会では、それまでの水の三重点による定義よりも、ボルツマン定数を基準にした方がより良い温度の計量ができ、低温や高温での計測困難を克服できると考えた[19]。CIPMは、ボルツマン定数を正確に1.3806505×10−23 J/Kに固定することでケルビンを定義することを提案した[20]。CIPMは、この提案が2011年の第24回CGPMで採択されることを望んでいたが、第24回CGPMでは、この提案はSI基本単位全体の見直しの一部として考慮すべきとして、採択は2014年のCGPMに延期された[21]。第25回国際度量衡総会(CGPM)(2014年11月18~20日)においては、「提示されたデータは、新しいSIの定義を採択するには、十分頑強ではない」として[22]2018年に行われる次の第26回CGPMまで改訂を延期することとされた。また再定義のために必要となる基礎定数の新データは2017年7月1日までに論文として受け入れられたものでなければならないこととされた[23]

上記の基礎定数の新データ(複数)は、CODATAが評価して、SIの再定義に必要な精度を備えていることが確認されたので、CIPMはCGPMにおける決議案を2018年2月に決定した[24]

この決議案は2018年11月13–16日に開催された第26回国際度量衡総会の最終日である11月16日に決議承認された。このケルビンの定義変更を含む新しいSIは2019年5月20日に施行[25]された。 科学的な視点では、この再定義により、温度の単位が他のSI基本単位と関連付けられ、どんな特定の物質からも独立した安定した定義を得ることができる。実際的な視点では、再定義の影響はほとんどない。 日本の法令上は、計量法第3条の規定に基づく計量単位令(平成4年政令第357号)が、計量単位令の一部を改正する政令(令和元年5月17日政令第6号)により改正され、2019年5月20日に施行することにより変更された。

2019年までの定義

2019年までの国際単位系におけるケルビンの定義は以下の通りであった[16]

熱力学温度の単位、ケルビンは、水の三重点の熱力学温度の1/273.16である。
補足:この定義は、下記の物質量の比により厳密に定義された同位体組成を持つ水に関するものである。
  • mol1H あたり 0.00015576 mol2H
  • 1 mol16O あたり 0.0003799 mol17O
  • 1 mol16O あたり 0.0020052 mol18O

注釈

  1. ^ 第26回国際度量衡総会の決定。2019年5月20日施行。
  2. ^ 国際単位系における正式の言語はフランス語である。ここでの定義は英語及びこれを日本語に翻訳したものである。正式な本文の確認が必要な場合又は文章の解釈に疑義がある場合はフランス語版を確認する必要がある。
  3. ^ 第三条 前条第一項第一号に掲げる物象の状態の量のうち別表第一の上欄に掲げるものの計量単位は、同表の下欄に掲げるとおりとし、その定義は、国際度量衡総会の決議その他の計量単位に関する国際的な決定及び慣行に従い、政令で定める。
  4. ^

出典

  1. ^ 国際単位系(SI)第 9 版(2019) p.101、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年3月
  2. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) p. 42。
  3. ^ Rules and style conventions for expressing values of quantities”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 2.1.1.5 (1967年). 2012年8月27日閲覧。
  4. ^ SI Unit rules and style conventions”. National Institute of Standards and Technology (2004年9月). 2008年2月6日閲覧。
  5. ^ Rules and style conventions for expressing values of quantities”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 5.3.3 (1967年). 2015年12月13日閲覧。
  6. ^ Barry N. Taylor (2008) (.PDF). Guide for the Use of the International System of Units (SI). Special Publication 811. National Institute of Standards and Technology. http://physics.nist.gov/cuu/pdf/sp811.pdf 2011年3月5日閲覧。. 
  7. ^ ケルビン p.101、下から4行目、国際単位系(SI)第9版 (2019)日本語版、訳・監修 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター
  8. ^ 表4 固有の名称と記号を持つ 22個のSI単位 p.106、国際単位系(SI)第9版 (2019)日本語版、訳・監修 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター
  9. ^ Units with special names and symbols; units that incorporate special names and symbols”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 2.2.2, Table 3 (2006年). 2016年6月27日閲覧。
  10. ^ a b Resolution 3: SI unit of thermodynamic temperature (kelvin)”. Resolutions of the 13th CGPM. Bureau International des Poids et Mesures (1967年). 2008年2月6日閲覧。
  11. ^ [1] p.110、国際単位系(SI)第9版 (2019)日本語版、訳・監修 (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター
  12. ^ Lord Kelvin, William (October 1848). “On an Absolute Thermometric Scale”. Philosophical Magazine. http://zapatopi.net/kelvin/papers/on_an_absolute_thermometric_scale.html 2008年2月6日閲覧。. 
  13. ^ Resolution 3: Definition of the thermodynamic temperature scale”. Resolutions of the 10th CGPM. Bureau International des Poids et Mesures (1954年). 2008年2月6日閲覧。
  14. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 20, 24。
  15. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 59, 61。
  16. ^ a b Resolution 4: Definition of the SI unit of thermodynamic temperature (kelvin)”. Resolutions of the 13th CGPM. Bureau International des Poids et Mesures (1967年). 2008年2月6日閲覧。
  17. ^ 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006) pp. 85–86『CIPM, 2005年 熱力学温度の単位, ケルビンの定義の明確化』 。
  18. ^ Unit of thermodynamic temperature (kelvin)”. SI Brochure, 8th edition. Bureau International des Poids et Mesures. pp. Section 2.1.1.5 (1967年). 2008年2月6日閲覧。
  19. ^ Fischer, J. et al (2007年5月2日). “Report to the CIPM on the implications of changing the definition of the base unit kelvin (PDF)”. 2011年1月2日閲覧。
  20. ^ Ian Mills (2010年9月29日). “Draft Chapter 2 for SI Brochure, following redefinitions of the base units”. CCU. 2011年1月1日閲覧。
  21. ^ “General Conference on Weights and Measures approves possible changes to the International System of Units, including redefinition of the kilogram.” (プレスリリース), Sèvres, France: 国際度量衡総会, (2011年10月23日), http://www.bipm.org/utils/en/pdf/Press_release_resolution_1_CGPM.pdf 2011年10月25日閲覧。 
  22. ^ Resolution 1 of the 25th CGPM (2014)”. Sèvres, France: International Bureau for Weights and Measures (2014年11月21日). 2014年12月14日閲覧。
  23. ^ Timetable for the future revision of the International System of Units News from the BIPM, BIPM, 2015-01
  24. ^ Draft Resolution A On the revision of the International System of Units (SI) Draft Resolution A – 26th meeting of the CGPM (13-16 November 2018),Appendix 3. "The base units of the SI",第3ページ目, 2018-02-06
  25. ^ Joint CCM and CCU roadmap for the adoption of the revision of the International System of Units 3ページ目、2019年の欄
  26. ^ 技術情報”. スガツネ工業. 2015年10月29日閲覧。
  27. ^ “22.2”. The Unicode Standard, Version 8.0. Mountain View, CA, USA: The Unicode Consortium. (August 2015). ISBN 978-1-936213-10-8. http://www.unicode.org/versions/Unicode8.0.0/ch22.pdf 2015年9月6日閲覧。 






ケルビンと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ケルビン」の関連用語

ケルビンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ケルビンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのケルビン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2023 GRAS Group, Inc.RSS