貴腐とは? わかりやすく解説

き‐ふ【貴腐】

読み方:きふ

過熟状態になったブドウの実に不完全菌一種がついて水分蒸発し干しぶどうのようになること。上等の白ワイン原料となる。


貴腐

作者藤本ひとみ

収載図書貴腐
出版社文芸春秋
刊行年月2000.11

収載図書貴腐―みだらな迷宮
出版社文藝春秋
刊行年月2003.10
シリーズ名文春文庫


貴腐

読み方:プリチュール・ノーブル(purich^uru・n^oburu)

作者 中井英夫

初出 昭和51年

ジャンル 小説


貴腐

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/20 17:24 UTC 版)

セミヨンの貴腐果。ソーテルヌ地方。

貴腐(きふ)とは、白ワイン用品種ブドウにおいて、果皮がボトリティス・シネレアBotrytis cinerea[* 1])というカビ)(灰色かび病も参照)に感染することによって糖度が高まり、芳香を帯びる現象である。 貴腐化したブドウを「貴腐ブドウ(きふぶどう)」と呼び、それを用いて造られた極甘口のワインが「貴腐ワイン」と称される。これらはフォアグラと伴に、あるいはデザートワインや食前酒として飲まれる。ハンガリーエッセンシアが、全ての原料を貴腐ブドウによるものとして唯一のものである。

「貴腐」とは、貴腐ブドウの腐敗したかに見える外見からは想像しがたい芳香と風味のワインが得られることからそのように呼ばれるものである。ドイツ語ではエーデルフォイレ (Edelfäule) 、ハンガリー語ネメシ ロトゥハダーシュ(nemesrothadás)、フランス語プリテュール ノブル (pourriture noble)と言い、いずれも「高貴なる腐敗」を意味し、日本語の「貴腐」はその直訳である。

貴腐果のでき方

ボトリティス菌は世界中に分布し、果樹野菜類、豆類花卉など様々な植物の重要な病原菌である。この菌による病気は灰色かび病と名づけられているものが多い。ブドウでも、生食用、醸造用ともに重要な病原菌であり、被害も大きい。

ところが、セミヨンリースリングなど白ワイン用品種の成熟した果粒にこの菌が単独感染した場合には好影響をもたらすことがある。感染した菌が果皮のクチクラ層のワックスを溶かすことで果汁中の水分が蒸発し、その結果、外観はカビに包まれている上に干しブドウの様なしなびた状態であるが、内部の果汁は飴色で粘度が高く、糖度もBrix30~60ほどになる。さらに、菌の代謝により、果実は貴腐香と呼ばれる独特の香りを持つようになる。これを「貴腐果」「貴腐ブドウ」と呼ぶ。

歴史

トカイ・エッセンシア

1650年頃、ハンガリートカイ地方で、オスマン帝国による侵略の影響でブドウの収穫が遅れたために偶然造られたトカイワインが世界最初の貴腐ワインであるとされる。ドイツでは1775年にシュロス・ヨハネスブルク (en) で収穫許可が遅れたためにブドウが貴腐化し、偶然できあがった貴腐ワインが有名である。

ルイ14世は贈られたトカイ産貴腐ワインを「ワインの王にして王のワイン」と絶賛したと伝えられている。1779年には、オーストリアマリア・テレジア女王(マリー・アントワネットの母)が、黄金色に輝く貴腐ワインに金が含まれているのではないかと思いウィーン大学で分析させたとの逸話も残っている。

日本でもサントリー山梨県の自社ワイナリー1975年に貴腐ワインの生産に成功して以降、長野県北海道などでも貴腐ワインが造られている。

脚注

注釈

  1. ^ Botrytis cinerea は不完全世代の学名で、子嚢菌門チャワンタケ亜門Pezizomycotinaに属する糸状菌で、その完全世代はBotryotinia fuckeliana である[1]

出典

  1. ^ 柘植 (2004)、pp.189-199

参考文献

関連項目


貴腐

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 07:34 UTC 版)

リースリング」の記事における「貴腐」の解説

リースリング造られる最も高価なワインとしては遅摘みデザートワイン挙げられる。これはブドウ通常の収穫期過ぎて生ったままにしておくことで造られるボトリティス・シネレアという真菌感染(貴腐)ないしはブドウ凍結アイスワイン場合)により水分蒸発し失われることで、残った果汁から造られるワインはより多層的で豊かなものになるこのようにして濃縮され果汁から造られるワイン通常よりも高い糖度(特に高いものでは1リットルあたり数百グラムにものぼる)と豊富な酸(甘さ対すバランスがとれる)、豊かな香り複雑性を持つ。これらの要素のために、すべての白ワイン中でも最も長期熟成堪えワインになる。リースリングにおける貴腐の利用1775年にシュロス・ヨハニスベルクで発見された。ブドウ畑所有していたフルダ修道院からブドウの収穫始めてよいとの許可降りるのが遅れたことでブドウ腐敗し始めていたが、そのようなブドウ造られワイン極めて優れた品質であることが分かったのだった

※この「貴腐」の解説は、「リースリング」の解説の一部です。
「貴腐」を含む「リースリング」の記事については、「リースリング」の概要を参照ください。

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