帰無仮説とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 学問 > 学術 > 仮説 > 帰無仮説の意味・解説 

きむ‐かせつ【帰無仮説】

読み方:きむかせつ

統計学仮説検定において、その当否検定される仮説通常否定されることを前提として立てられ、この仮説棄却される対立仮説成立する


帰無仮説(キムカセツ)

(=ゼロ仮説対照治療方法との結果に差が無いという設定前提にしている仮説

帰無仮説(きむかせつ)


帰無仮説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/28 16:49 UTC 版)

科学的な実験データの解析で多用される推計統計学において、帰無仮説(きむかせつ、英語: null hypothesis; H0で示されることが多い[1])は、2つの標本セット間の差(例えば測定データの平均の差、標本平均の差)が偶然によるものであるとする説。なお、英語圏で用いられる null hypothesis は統計学よりも科学用語であり、観察されたいかなる差(数値データに限らない)も偶然だけによるものである、とする説を指す。帰無仮説は「棄てられる運命にあるように選ぶ[2]」ことからこの名がある。統計検定を用いることで、帰無仮説が真である尤度を計算することが可能である。

基本的定義

「帰無仮説」と「対立仮説」は、統計検定において使われる推測である。統計検定は、データに基づいて結論に至る、あるいは決定を行うための形式的手法である。帰無仮説と対立仮説は母集団統計モデルに関する推測であり、母集団の標本に基づいている。検定は統計的推論の中核的な要素であり、科学実験データの解釈において頻繁に用いられる。

有意の検定において調べられる意見が帰無仮説と呼ばれる。有意性の検定は、帰無仮説に対する反証の強さを検証するために設計される。大抵、帰無仮説は「効果がない」あるいは「差がない」ことを述べている[3]。記号H0で表わされることが多い。

帰無仮説と排反な仮説を対立仮説と呼び[3]H1Haで表わされる。

2つの無作為標本(1つは男性、1つは女性)の試験の点数を考える。2つの群は互いに異っているだろうか? 考えられる帰無仮説は、男性の平均点が女性の平均点と同一であるというものである。

H0: μ1 = μ2

上式において、

H0 = 帰無仮説
μ1 = 母集団1の平均
μ2 = 母集団2の平均

より強い帰無仮説は、2つの標本が分布の分散と形状が等しいような同一の母集団から取られた、というものである。

用語

単純仮説
母集団分布を完全に規定している仮説。こういった仮説では、いかなる統計量の標本分布もサンプルサイズのみの関数である。
複合仮説
母集団分布を完全に規定しない仮説[4]。例: 特定されている平均と特定されていない分散を持つ正規分布を規定する仮説。

単純仮説と複合仮説の区別はネイマンピアソンによって成された[5]

正確な仮説
正確なパラメータ値を規定する仮説[6]。例: 母集団平均μ = 100。同義語は点仮説
不正確な仮説
パラメータの範囲あるいは間隔を規定する仮説。例: μ ≤ 100; 95 ≤ μ ≤ 105。

フィッシャーは検定のために正確な帰無仮説を要求した。

片側仮説英語版(片側検定を使って検定される[3])は、パラメータの値が

  • 特定の値以上、または
  • 特定の値以下

のいずれかとして規定される不正確な仮説である。

片側仮説は方向性(directionality)を持つといわれる。

フィッシャーの最初の例(紅茶の違いのわかる婦人)は片側検定であり、帰無仮説は非対称であった。全てのカップを正しく推測する確率は全てのカップを誤って推測する確率と同じであったが、フィッシャーは正しく推測することのみが婦人の主張と両立できる、と記した。

脚注

  1. ^ Helmenstine, Anne Marie. “What Is the Null Hypothesis? Definition and Examples” (英語). ThoughtCo. 2019年12月10日閲覧。
  2. ^ 青木朗、川角義文「紡績工場の品質管理 (3)」『繊維機械學會誌』第3巻第4号、1950年、172-177頁、doi:10.4188/transjtmsj1948.3.172 
  3. ^ a b c Moore, David; McCabe, George (2003). Introduction to the Practice of Statistics (4 ed.). New York: W.H. Freeman and Co. p. 438. ISBN 9780716796572. https://archive.org/details/isbn_9780716749127 
  4. ^ Rossi, R. J. (2018), Mathematical Statistics, Wiley, p. 281 .
  5. ^ Neyman, J; Pearson, E. S. (January 1, 1933). “On the Problem of the most Efficient Tests of Statistical Hypotheses”. Philosophical Transactions of the Royal Society A 231 (694–706): 289–337. Bibcode1933RSPTA.231..289N. doi:10.1098/rsta.1933.0009. 
  6. ^ Winkler, Robert L; Hays, William L (1975). Statistics : probability, inference, and decision. New York: Holt, Rinehart and Winston. p. 403. ISBN 978-0-03-014011-2. https://archive.org/details/statisticsprobab0000wink/page/403 

推薦文献

  • 柳本 武美「統計的検定における帰無仮説の理解」『応用統計学』第20巻第2号、1991年、97–108頁、doi:10.5023/jappstat.20.97 

帰無仮説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/07 02:50 UTC 版)

累積カイ二乗検定」の記事における「帰無仮説」の解説

2つ母集団 A, B から抽出して得られる観測値 y {\displaystyle y} により母集団優劣比較する場合考える。各観測値順序のある k {\displaystyle k} 個の水準のどれかに分けられるものとしたとき、各観測値y i j   ( i = 1 , 2   j = 1 , 2 , . . . , k ) {\displaystyle y_{ij}\ (i=1,2\ j=1,2,...,k)} で表しy i j {\displaystyle y_{ij}} が水準 k {\displaystyle k} に入る確率p i j   ( i = 1 , 2   j = 1 , 2 , … , k ) {\displaystyle p_{ij}\ (i=1,2\ j=1,2,\ldots ,k)} とする。この場合の帰無仮説は2つ母集団 A, B の間に差がないということを表すため次の式になる H 0 : p 1 j = p 2 j   ( j = 1 , 2 , … , k ) {\displaystyle H_{0}:p_{1j}=p_{2j}\ (j=1,2,\ldots ,k)}

※この「帰無仮説」の解説は、「累積カイ二乗検定」の解説の一部です。
「帰無仮説」を含む「累積カイ二乗検定」の記事については、「累積カイ二乗検定」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「帰無仮説」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



帰無仮説と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「帰無仮説」の関連用語

帰無仮説のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



帰無仮説のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
Supplement Kuchikomi RankingSupplement Kuchikomi Ranking
(C)2025 All Rights Reserved. 健康食品のあり方を考える日本サプリメント評議会の運営です。
日本酒日本酒
(c)Copyright 1999-2025 Japan Sake Brewers Association
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの帰無仮説 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの累積カイ二乗検定 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS