国際関係
政治 |
---|
ポータル:政治学 カテゴリ |
国際関係(こくさいかんけい、英語: International relations, IR)とは、国家と国家の間に生じるさまざまな関係を指す。
二国間関係から多国間関係までを包括する概念であり、政治的、経済的、社会的、文化的及び軍事的な関係性を含んでいる。これを研究する学問に国際関係論がある。
概説
国際関係は誰により動かされており、どのようなメカニズムで動いているのかを理解するためには、まず国際関係が国内政治と決定的に異なる本質を認識しなければならない。それは国際関係の無政府秩序性である。国家においては権力を一元的に掌握する政府機関が存在し、その政府機関によって制定された法に基づく秩序の下で社会が活動する。しかしながら複数の国家が存在する国際関係において一元的に権力を保有する超国家機関など存在しない。このことは国際関係が無政府状態(アナーキー)となることの自然な帰結だと考えられている。したがって国際関係は単一の主体により動かされているものではなく、複数の主体がそれぞれに動くことによって成り立っていると言える。
ただし無政府状態であることは無秩序状態とは異なったものである。国際関係はしばしば国際社会とも呼ばれるが、これは国際関係の主要な主体が国家であるということを示している。国家が保有するさまざまな権力の総体である主権は絶対的なものであり永久に不可分であると論じたのはジャン・ボダンであった。この近代的な主権の概念、さらに17世紀におけるヴェストファーレン条約は主権国家の国際的な地位を確立した。国家の要件を満たした場合のみ国家の承認明示的または黙示的方式で行われ、近代国家は独自の立法権や外交権などを行使する権限を獲得した。また国家と国家はそれぞれが承認しあうことによって外交関係を設立し、その関係性の中においてのみ国家は国家としての行為や権利を「主権の平等性」に基づいて均等に認められる。従って国家ではない単なる政治的共同体は国際社会の行為者となりえず、権限や影響力を持たない。これが国際社会の基本的な構造である。
しかしながら現代における国際関係は国家だけが重要な主体ではなくなってきている。国際機関や多国籍企業、非政府組織(NGO)などの新たな行為主体の出現がその原因である。国際関係が進展して国境の障害が取り払われていくと、それまで近代国家だけで構成されていた国際関係に民間団体が介入するようになった。特に多国籍企業は国際経済の飛躍的な発展をもたらした一方で、このような経済の国際化は国家の主権にとっての脅威とする見方も述べられている。また国家が盛んに二国間関係だけではなく多国間関係の構築の乗り出していることは国際機関の急速な発展をもたらしている。国際機関の下では国際法秩序の構築、平和問題や軍備管理、人権問題や環境対策など多様な分野にわたって活動が行われている。また欧州連合のような国際機関では国家が自らの主権の一部を委譲するような新たな連合の形態も現れており、伝統的な国際社会のシステムは転換しつつある。
国際関係史
歴史的には、「他国」と捉えられる存在が現れたときから国際関係とよびうる関係の萌芽が発生し、抗争、支配、従属、協力、連合など、その関係も多様なものであった。主権国家相互による国際関係は、17世紀のウェストファリア会議などによって成立し、近代的な意味での国際社会もそれを機に成立した。当初のように2か国間、3か国間などの限られた国家の間での関係から、交通や輸送、通信の発達した現代では、多くの国が同時に複雑に結びつくようになり、単に「二国間関係」「隣国関係」と呼ぶだけでは足りなくなった。
現代では、それを調整するために、国際機関が置かれたり、国際会議が開かれるなどされている。
国際政治
国際システム
国際関係はアナーキーであるが、完全な無秩序ではない。主権国家が並存することにより分権的な秩序が形成されている。しかし主権国家に優越する全世界的な統治機関がないために、その秩序はそれぞれの国家の対立関係や協力関係の帰結である。しかしこのような主権国家が形成する秩序は相互作用のまとまりと認識できる場合には国際システムと呼ばれる。
主権国家で構成される国際システムはヨーロッパにおいて三十年戦争後の1648年にウェストファリア条約に起源を持っている。しかしこれが世界中に定着するのは20世紀になってからであり、例えば東アジアでは中華秩序の下で国際関係が秩序付けられており、西アジアではイスラームに基づいた国際関係が形成されていた。19世紀初期には34カ国しかなかった主権国家も第二次世界大戦後には66カ国、ソビエト連邦の崩壊後には193カ国にまで増大し、主権国家の国際システムは普及した。
現代の国際システムは従来型の主権国家が主体となる秩序に加えて非国家主体が台頭しつつある。国際連合や世界銀行のような国際機構、国際的に経済活動を展開する多国籍企業、国境なき医師団のような非政府組織などがそれである。また欧州連合のような地域的な国家の連合体も登場しており、以前の主権国家を単位とするシステムは変容しつつある。これは関税や為替管理、出入国管理などによる交流の拡大、通信技術の発展による情報網の拡大などにより促進されていると考えられる。またそれまでナショナリズムによって統合されていた国民国家の中でも民族や部族などの単位に分離するエスノ・ナショナリズムが掲げられるようにもなっている。
国際紛争
紛争とは二者以上の当事者の間に、価値の対立状況の認識が相互にあり、かつ各当事者が自己の価値を実現するために競合する状況を意味し、物的な強制力を伴うような場合は狭義の武力紛争である。しかし対立関係と協力関係が完全に区分できるわけではなく、常に曖昧な要素が含まれる。国際紛争とは一義的に国家間に生じる紛争であるが、非国家主体との紛争をも近年では状況によって呼ばれる場合がある。政治紛争、経済紛争、民族紛争、武力紛争に分けられる。国際関係はこのような紛争により形成されるものと考え、国益や権力を重視する立場を現実主義と言う。
国際紛争を現実主義の立場から説明する場合には勢力均衡理論が適用される。勢力とは国家が保有する国力であり、均衡とは二国間または多国間で同等のものになることを指す。国家が外国の勢力下におかれることを避けるために、もし外国が勢力を増大させるとそれに対抗して国家も勢力を増強する動機づけが働く。この原理によって秩序は勢力の均衡によって形成されていく。勢力均衡は超大国の覇権主義や軍拡競争、同盟、戦争などの事象を合理的に説明することに役立つ理論である。
国際協力
国際協力とは国際的に協力した活動であり、紛争の防止、人権の保障、国家建設の援助など幅広い。国際紛争を防止するための取り組みは大きく予防と対処の二つに分けられる。
紛争を予防するためのアプローチに集団安全保障がある。集団安全保障は国際連盟や国際連合による国際協力であり、体制の参加国で武力の不行使を承諾し、紛争は手続に則って平和的に処置、もしも特定の国家が武力を行使しすれば他の諸国が総力を挙げて制裁を加える。
これに加えて国際的な軍拡競争や兵器の拡散を防ぐための軍縮・軍備管理、不安定な地域における平和維持活動、また包括的な紛争防止のための開発援助、軍事支援などもあり、多様な国際協力が行われる。
安全保障
この節の加筆が望まれています。 |
国際経済
この節の加筆が望まれています。 |
国際法
国家と国家の間で、合意に基づいて、権利・義務を定めたもの [1] [2] [3] [4]。 その主要な法源は条約と慣習国際法である。
松井芳郎ほかによれば、 国際法の古くからある第一の役割は、各国家の管轄の範囲と内容を規制することであったが、 近年では第二の役割として、諸国共通の目的を実現するための仕組みとなることがあり、その結果、国際法の主体(対象)が国家以外となる場合も出ている、とされる[5]。
国際機関
この節の加筆が望まれています。 |
国際協力
この節の加筆が望まれています。 |
関連文献
関連項目
脚注
- ^ 「デジタル大辞泉」2012年、小学館
- ^ 「明鏡国語辞典」第二版、2010年、大修館
- ^ “international law”. Houghton Mifflin Company.. 2011年9月13日閲覧。
- ^ The term was first used by Jeremy Bentham in his "Introduction to the Principles of Morals and Legislation" in 1780. See Bentham, Jeremy (1789), An Introduction to the Principles of Morals and Legislation, London: T. Payne, pp. 6 2012年12月5日閲覧。
- ^ 松井芳郎、佐分晴夫、坂元茂樹、小畑郁、松田竹男、田中則夫、岡田泉、薬師寺公夫、 「国際法」第4版、株式会社有斐閣、2002年
国際問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/11 17:05 UTC 版)
イングランド南部では、自然の草地が農地に変わったために1988年までにマルハナバチが激減した。農地はマルハナバチに受粉を依存していたために年間4億ポンドにあたる損失となった。イギリス政府は、2012年に科学者を秘密裏にスウェーデンに派遣して、マルハナバチの女王蜂を無許可で捕獲しようとした。この行為はスウェーデン側に発覚し、地元の環境保護団体や生物学者はイギリス政府を批判した。スウェーデン政府はイギリスの科学者に許可を与えて事態は沈静化し、イギリスはハチの再導入のために野生の花や緑地を作るなどの試みを続けた。
※この「国際問題」の解説は、「マルハナバチ」の解説の一部です。
「国際問題」を含む「マルハナバチ」の記事については、「マルハナバチ」の概要を参照ください。
国際問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 09:06 UTC 版)
ユダヤ人に関連する国際問題は20世紀初頭ロシア帝国のポグロムや1920年代の合衆国移民規制により表面化しだした。この頃はちょうどシオニズムやバルフォア宣言などが過熱した時代でドイツの商業において1930年代に巨大なボイコットを生むと共にヨーロッパではファシズムが台頭し始めていた。ルーズベルト大統領の左翼的政策(外交政策や国連の設置など)は1930年代から40年代にかけ強いユダヤ人の支持を得た。シオニズムに関しては徐々に影響力を見せはじめていたが依然として少数支持であった。1948年のイスラエルの建国で中東の緊張が一気に高まり、アメリカのイスラエル支持はシオニズムの政治的影響を内在していた。イスラエルに関しての初期の問題は地理的なものと宗教的なものであったが、シオニズムとイスラエルの建国について未解決の問題も孕んでいた。第三次中東戦争をきっかけにこの問題は表面化し、ユダヤ系アメリカ人の中にもイスラエル支持派と反対派を生んだ。大半の者はこの戦争は不可欠であると容認する者が多かったがリベラルな思想を持つ左翼派のユダヤ人と右翼派(シオニスト)の対立が生まれた。1960年代において第三次中東戦争はユダヤの複雑で繊細な問題を浮き彫りにする形となった。同様の緊張状態は1977年前後のシオニズム修正主義者の台頭により、1982年レバノン戦争でガザとヨルダン川西岸地区の制圧によっても引き起こされた。1993年のオスロ合意におけるイスラエルの姿勢はユダヤ系アメリカ人の二極化をさらに広めることとなったばかりでなく、イスラエルのロビイストの意見をも分割させることとなった。 2004年の調査では大多数のユダヤ系アメリカ人が独立したパレスチナ国家を作ることを支持している一方、ヨルダン川西岸地区からは撤退するべきだと考えていることがわかった。中東諸国との緊張が絶えないイスラエルだがアメリカのイラク戦争に関してはアメリカ国民同様に反対している。また面白いことにアラブ系アメリカ人の多くがイラク戦争支持派であるのに対しユダヤ系は反対を表明している。
※この「国際問題」の解説は、「ユダヤ系アメリカ人」の解説の一部です。
「国際問題」を含む「ユダヤ系アメリカ人」の記事については、「ユダヤ系アメリカ人」の概要を参照ください。
国際問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 10:17 UTC 版)
2019年1月、国連環境計画や世界経済フォーラムなどは共同で、世界の電子ゴミの年間排出量が4850万トンにのぼるという推計を発表した。ガーナの首都アクラには、不法投棄された電子ゴミが世界中から集まる「アグボグブロシー」と呼ばれる場所があり、「電子ゴミの墓場」とも言われている。アグボグブロシーでは貧困に苦しむ若者らが、そこから得られる金属を売って生活しているが、有害物質の影響で、若くして亡くなる者も多い。
※この「国際問題」の解説は、「不法投棄」の解説の一部です。
「国際問題」を含む「不法投棄」の記事については、「不法投棄」の概要を参照ください。
国際問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 04:25 UTC 版)
「中華人民共和国の政治」の記事における「国際問題」の解説
中国は多くの国際的な領土紛争を抱えている。過去50年の間、1962年の中印国境紛争、1969年の中ソ国境紛争、1979年の中越戦争などそのうちのいくつかは戦争へ繋がった。2001年、中国とロシアは中露善隣友好協力条約を締結し、2004年にはタラバーロフ島と大ウスリー島の国境を確定させ、長年続いたロシアとの国境紛争は終結した。他の東シナ海や南シナ海における国境紛争やインド、タジキスタン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国境紛争は続いている。
※この「国際問題」の解説は、「中華人民共和国の政治」の解説の一部です。
「国際問題」を含む「中華人民共和国の政治」の記事については、「中華人民共和国の政治」の概要を参照ください。
「国際問題」の例文・使い方・用例・文例
- 国際問題を解決する方法
- 昨日のコラムでは国際問題を話題に取り上げていた
- 最近では国際問題ではほとんど一致することがない。
- 国連はその国際問題を扱うだろう。
- 国際問題は戦争ではなく外交で解決されなければならない。
- その国は国際問題には力がある。
- パレスチナ人問題は他のいずれの国際問題よりも大きな一触即発の危機をはらんでいる.
- これは国際問題に発展しそうだ.
- 重大な国際問題となった.
- 国際問題
- その事が国際問題を惹起した
- この事が国際問題の紛議を起こしそうだ
- 政治や国際問題において無謀なこと
- 国際問題における孤立主義支持者
- ナミビアに対する,南アフリカ共和国の不法統治から生じた国際問題
- 国際問題解決の交渉
- 外交による国際問題処理方法
- 南北問題という,先進諸国と開発途上国の格差による国際問題
- パグウォッシュ会議という科学と国際問題に関する国際会議
国際問題と同じ種類の言葉
- 国際問題のページへのリンク