F-22A・F-22J-Ex
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 04:00 UTC 版)
「F-X (航空自衛隊)」の記事における「F-22A・F-22J-Ex」の解説
詳細は「F-22 (戦闘機)」を参照 アメリカの航空機メーカー、ロッキード・マーティン社が開発した世界初の第5世代ジェット戦闘機。圧倒的なキルレシオを持ち、高いステルス性、スーパークルーズ性能を持つことから、「航空支配戦闘機」とアメリカ軍が名付けた戦闘機/戦闘攻撃機。高機能であるため防衛省・航空自衛隊は熱望していたと言われるが、高機能に伴う高い価格や政治的課題を解決できていなかった。 また高額な製造・維持コストがかかるにもかかわらず、イラクやアフガニスタンなどアメリカが直面する戦場では活躍の場がなく、国防予算がひっ迫する中で米政府は当機種の製造中止を決定したため、米政府が政策変更を行わない限りF-Xとして選定される可能性は無かった。 機体 他の候補と比較しても圧倒的な戦闘能力を持ち、ロッキード・マーティン社からの売り込みもあり、日本政府は有力候補として、アメリカ側に輸出解禁を求めている。 政府、省レベルでは、候補のひとつに過ぎない扱いではあるが、空自の現場サイドでは、現状で単機対10機を大幅に超えるキルレシオ、第4世代ジェット戦闘機の約3倍の戦力(単純計算で敵機3機に対し、1機で対抗可能)という絶対的な能力故に、かつて唯一の候補と考えられていた。しかし輸出仕様の性能はF-35程度にされるという一部報道もあり、実際に期待しているだけの戦力になるのか疑問視されている。 日本にとって初のステルス機であるだけでなく、実現すれば現状では米国以外で初となるため、保有には単なる最新鋭機導入以上の意味、価値があるとの声も内外から出ている。 運用 F-22Aはアメリカ空軍仕様。F-22J-Exはロッキード・マーティン社が輸出禁止措置を考慮し立案した航空自衛隊仕様(所謂モンキーモデル)であり、F-22Aに比べ性能面で劣る。 高価であるといわれているF-15J以上に価格が高い機体(単体で約170億円)であるため、たとえ将来価格が下がったとしても、必要数をそろえ運用するにはライセンス料による機体単価の高騰や、ステルスコーティングや一体型のパーツなどによる機体メンテナンスコスト(実際これが一番価格が嵩む要因である)も含め今まで以上に莫大な費用がかかることになる。 旧来の普通の戦闘機に対して強いといわれる当機であるが、電子戦機材を積み、高出力レーダー、赤外線センサーなどで能力向上策を施している第四世代機に対して、どの程度の強みがあるかは全く不明。 日本政府は、国内航空産業の製造・技術基盤の維持という観点から、機体のライセンス生産が望ましいとしているが、米政府内に技術流出(及び、自衛隊における情報流出)を危惧する声があるため難しく、完成品輸入の場合、部品の調達や技術情報の制限から稼働率が大幅に低下する可能性がある。 国産機器である99式空対空誘導弾や04式空対空誘導弾を搭載するには、対象となるミサイル、F-22、どちらかの機体改造が必要となるが、F-22側の改修はコストはもとより技術的側面からも困難である上、技術流出の観点などから米側が認めない可能性がある。また、空対艦ミサイルが搭載できない。 1時間の飛行に対し、30時間のメンテナンスと44,000ドル以上の費用を必要としていた。また、平均1.7時間飛行するごとに重大な障害が発生するとも言われている。 過去において米軍で行われたEA-18G電子戦術機との模擬空中戦において、EA-18GにAIM-120で撃墜されたと判定され、敗北した。 政治・報道 現在、アメリカの国防予算にはF-22Aの海外輸出を禁止する付帯決議があるため、これが撤回されないかぎり取得することはできない。しかし、ロシア、中国などが次世代機を大幅に配備しているため、現在のアメリカ空軍の配備予定数を超えた発注が必要と2008年7月22日のアメリカ合衆国上院軍事委員会で次期空軍長官M. ドンレイと次期空軍参謀長ノートン・シュワルツ空軍大将は証言した。それには2010年11月で閉鎖する予定の生産ラインを維持する必要が生じる。このため、空軍の新規発注までのつなぎとして輸出型のF-22を生産する事も考えられる。 イラク情勢や今後のアメリカ軍の再編次第でF-22の生産が左右されるとされてきたが、2008年アメリカ合衆国大統領選挙でバラク・オバマが当選しF-22の調達の抑制を指示した事から、生産ラインの閉鎖の可能性が高くなった。2008年12月末にはF-22Aを候補から外した事、2009年4月にはF-22の新たな発注を見送る方針を米国防総省とロバート・ゲーツ国防長官が表明。近く生産中止に追い込まれる可能性が濃厚になったことから、本機の導入はほぼ絶望的と見られる。 2009年4月北朝鮮のミサイル発射実験、2ヵ月後の地下核実験の強行を受け、アメリカ合衆国下院で日本への輸出解禁の動きが活発になっている。2009年6月25日、米下院はF-22増産のための初期費用や日本への輸出仕様機の検討を求める条項が含まれた2010年度国防予算の大枠を決める総計5,504億ドルの国防権限法案を圧倒的な賛成多数で可決した。同法案には与党民主党からも多数が賛成に回った。一方、上院軍事委員会もこの日可決した同法案で下院と同様の条項を盛り込んだ。オバマ政権は上下両院で可決された場合には拒否権を発動する方針を示していた。これに対し米上院は、2009年7月21日オバマ政権の方針に同意する形で、日本への輸出仕様機の検討を含んだF-22増産のための追加費用1,750億ドルを求める条項を58対40で否決した。 2009年9月10日、米上院は2010会計年度国防歳出法案にF-22の輸出仕様の研究費を盛り、可決した。F-35を日本に勧めている国防総省が輸出仕様を研究した場合、輸出仕様の性能はF-35よりも劣る可能性もあると一部で報道され、過去には国防総省ではない外部にも輸出仕様について調べさせるべきとの動きもあった。 2009年12月16日、米下院はF-22輸出仕様についての調査、研究を可能とする国防歳出法案の修正案を賛成多数で可決した。
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