非正規雇用の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 06:11 UTC 版)
雇用者側(雇う側)のメリット 需要や収益の変化に対応した調整を、職員の増減で行いやすい。企業は非正規雇用の従業員を優先的に雇用契約の更新をしないことで、景気の悪化による需要現象に対応する収益悪化に伴う人員削減の際に調整弁として貸倒れなどによる倒産でおこる全社員の失業や利害関係者への被害を防げる。日本では正社員の解雇は実務的には極めて難しく、正社員の雇用は景気悪化の際に余剰な労働力を抱え込むリスクを負うことになる。 単純業務に対する安価な労働力としてリスク回避できる。退職金や社会保険料、さらに非常時に契約の更新停止で人件費を抑制しやすい。 雇用者側(雇う側)のデメリット 知識・技術を社内に蓄積しづらい。製造業では技術者・熟練工、サービス業ではいわゆるベテランが育ちにくい。特に派遣社員は社外の人間であり、派遣先企業や所属事務所が異なる派遣社員同士で情報交換などは必要ないため。 正社員と比べ会社に対する忠誠心・責任感が低い(特に派遣社員は派遣先の社員ではないため、他社の人間の派遣社員へ忠誠心・責任感を求めること自体ミスマッチといえる)。 被雇用者側(雇われる側)のメリット 自分の都合に合わせて仕事の時間や期間を調整できる。契約形態によって、正社員と同じ時間働くか、短時間で働くかの選択ができる。また正社員のようなサービス残業を強いられないことが多い。 副業・兼職(ダブルワーク)がやりやすい(正社員に対しては就業規則で従業員の副業・兼業を禁止するか、または上司の許可制にしているところがほとんどである)。 転職が容易であり、多くの企業に触れて経験を積むことができる。 すぐに代替の人材が確保できるため、採用されやすい(現金、個人情報、その他機密事項を扱う作業でなければ、保証人を要求しない場合もある)。 賃金の支払い方法を月払いの他にも週払い(例:毎週金曜日締め、翌週金曜日支払いなど)や、一部の仮払いにも対応している企業もあり、賃金を分割して受け取ることで必要最低限の生活費が枯渇する不安を軽減できる。 被雇用者側(雇われる側)のデメリット 時給に換算した場合の賃金が安いうえ、基本的にボーナス(賞与)や退職金が支払われない(支払われるとしても、正社員より少額になる)。日本では同一労働同一賃金の原則が義務化されておらず、正社員と同じ内容の仕事であっても、正社員よりも低賃金である。 非正規雇用のブルーカラーが、正社員のホワイトカラーより安い場合もある。 例えば、女性の出産に伴う就業パターン変化による生涯賃金の推計を行見ても、正社員として働き続ける場合と出産退職後パートタイマーとして再び働き出した場合では、賃金だけで2億円近い差が生まれるとしている。 勤続年数が増え、業務遂行能力が上がっても昇給はほとんどない(=使用者にしてみれば人件費を抑制できる)。正規雇用の多くが年齢給あるいは職能給であるのに対し、非正規雇用の多くは定期昇給のない職務給である。 新卒一括採用の慣行が根強い日本では、学卒時に非正規雇用となると、そこから正社員になることは困難である。 フリーターも参照。 企業が非正規労働者に対してスキルアップの機会を与えることは少なく、常に自分自身でスキルアップをはからねばならない。 雇用形態が、1か月〜1年単位の有期雇用であり、長くても3年程度しかないため(労働基準法第14条)、雇用が不安定である。雇用契約を更新し、継続して5年を超えた場合は、企業は無期雇用に切り替えなければならない(労働契約法第18条。ただし、これは必ずしも雇用形態を正社員にしなければならないということではない)。 総じて若いうちは多くの求人があるが、高齢になるにつれ新規の求人は少なくなり、将来への展望が不安定。 福利厚生が正社員に比して充実していない。所定労働時間の短い非正規労働者は、社会保険(健康保険・厚生年金)・労働保険のうちの雇用保険の適用から外れる。社会保険や雇用保険が適用されると、それらの保険料(原則労使折半)が労働者の賃金から差し引かれるため、最終的な手取り額が一層低くなる。 短期雇用かつ低賃金であるため、数百万円から1000万円以上の資金(住宅・自動車ローンなど)の借り入れが不可能か、可能であっても高額な頭金を要する。年数十万円単位を要する、自動車の維持費(自動車税・重量税・自賠責および自動車任意保険料・車検代・燃料代・駐車料金など)を、終生にわたって支払える保証がない。 1年間の収入合計が103万円(平均月収約85,800円)を超えた場合、所得税を納める義務が発生する(ただし学生の場合、勤労学生控除でそれを超えるだけでは所得税を収める義務は発生しない)ため、特に既婚女性であるパート・アルバイトは年収を103万円以下に抑えようとすることが多い(配偶者控除)。年収調整のため年末繁忙期にシフトを空ける現象も見られ、人事労務管理の配慮点の一つである。 男性は、結婚率が低い。 結婚#未婚化・晩婚化についての結婚アドバイザー等の見解も参照。 などが挙げられる。
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