試作冷房車(1970年製造)
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「国鉄103系電車」の記事における「試作冷房車(1970年製造)」の解説
1968年(昭和43年)に京王帝都電鉄(現在の京王電鉄)が初代5000系・5100系電車増備車に冷房を装備したのを皮切りに、私鉄において冷房を取付けたロングシート車両が登場したのに呼応し、私鉄とのサービス格差を改善する目的で試作冷房装置を搭載して10両編成1本が山手線に試験投入された。 113系では既存の非冷房車に試作の冷房装置が改造搭載されたが、103系の試作冷房車は113系と異なり新製車の投入となった。 試作車冷房編成車両番号 クハ103-179 モハ103-279 モハ102-434 サハ103-306 モハ103-280 モハ102-435 サハ103-307 モハ103-281 モハ102-436 クハ103-178 冷房装置製造会社 AU75X形三菱電機 AU74X形日立製作所 AU73X形東芝 冷房方式の比較・検討のために以下の仕様となった。 異なるメーカーの試作した3種の試作冷房装置(集中式)を屋根上に搭載。AU73X、AU74X、AU75Xの3種類で、いずれも容量は42,000 kcal/hである。冷房装置の形式の後に付く「X」は「試作品」(eXperimental) を意味するサフィクス(接尾辞、拡張子)。 同じ冷房装置を搭載する車両でも、各車で送風ダクト本数や室内通風口の位置といった風道構造、扇風機の有無などの差を付けた。 冷房電源用のMGは、通常のモハ102形搭載とは別途に編成両端のクハ103形に出力210 kVAのMH129-DM88が1基ずつ搭載され、それぞれ5両給電とした。 冷房装置の本体構造には次の大きな相違点がある。 AU73X形:AU74X形…冷房装置の内部に3基の小型ユニットクーラーを集約 AU75X形…冷房装置の内部に2基の大型ユニットクーラーを集約1ユニット故障時の冷却能力低下が少ないという点では前2が有利であったが、製造・保守費用の点ではAU75X形の方が有利。 後に東芝と日立も2ユニット構成のAU73X形およびAU74X形を試作したが、最終的にもっとも完成度が高かったAU75X形が標準機種として選定された。翌1971年以降、冷房装置と扇風機を併用したAU75系としてこれら3社の手で量産が開始された。 このグループはクハ103形最後の白熱灯式前照灯採用車であるが、冷房搭載のほかに以下の設計変更が行われた。 客室窓を製造工数低減と気密性向上の観点から外ハメ式のユニット窓に変更、運転席下の通風口を省略。 客室座席を人間工学に配慮した新型に変更座面低下・奥行きの延長・背もたれの角度も増大を実施 座席下の客室ヒーターとその設置方法を改良暖房放射面積の増大と暖房能力の強化の観点から、従来7人掛け中央に1基設置→U字型の取付幅が広いタイプを斜めになった座席下蹴込み部に2基設置へ変更 当初は池袋電車区(現在の池袋運輸区)に配置されていたが、1978年(昭和53年)の冷房試験終了後に量産冷房車と同仕様に改造。その際に側面車端部への電動行先表示器の取り付けと前面の行先表示器の電動化も同時に施工された。1979年(昭和54年)以降は山手線のATC化に伴う転配により、各車が転属を繰り返すようになった。 2000年(平成12年)4月3日に習志野電車区(現在の習志野運輸区)配置の4両より廃車が始まり、2005年(平成17年)11月22日に京葉車両センター配置のサハ103-307をもって廃車となった。
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