蒸気圧
【英】: vapor pressure
液体と平衡状態にある蒸気の圧力をいう。蒸気圧は一般に温度が高いほど高くなる。物質はそれぞれ固有の沸点を持つが、沸点におけるその物質の蒸気圧は 1 気圧である。1 気圧のもとで沸点以上の温度が維持されていればその物質は全部気体になってしまうし、密閉容器内の温度が内容物の沸点以上に保たれれば容器内圧力は 1 気圧以上になる。逆に沸点以上の温度でも蒸気圧以上に加圧すれば液体と蒸気が平衡に達した状態で容器に収容できる。天然ガス(主成分はメタン)の沸点は -160 ℃であって、常温付近での蒸気圧は極めて高く、超低温冷却によらないかぎり液化できない。LPG として取り扱われるプロパンとブタンの混合物は、両者の沸点がそれぞれ -42 ℃、-0.5 ℃と常温に近く、常温(15 ℃)における蒸気圧は約 7 気圧、約 2 気圧と比較的低いので、多少の冷却あるいは加圧によって容器内に液体として保持できる一方、常温常圧では全量が気体となり容易に燃焼する。LPG 以外の石油製品で蒸気圧が特に問題になるのはガソリンで、蒸気圧が大き過ぎれば貯蔵、運搬、その他取扱い時に蒸気の損失を起こしやすく、引火の危険も大きくなる。また、使用時にベーパー・ロックなど不都合な現象を起こすおそれがある。一方、小さ過ぎるとエンジンが始動しにくくなり、特に冬期や寒冷地での使用に具合が悪くなる。そのために蒸気圧が一定範囲内にあることが要求される。石油類の蒸気圧は、一般にリード法によって測定され、日本工業規格(JIS)K2258(原油および燃料油蒸気圧試験方法〈リード法〉)にその規定がある。試験器は試料を入れる試料室と、その4倍の容積を持つ空気室、蒸気圧を示す圧力計の三つの部分からなる。試料を試料室に満たし、これに圧力計を付けた空気室を接続したのち、試験器を逆さまにして上下に激しく振ってから 37.8 ℃の恒温水浴に漬ける。圧力が平衡に達するまで定期的に振り、圧力計の読みに必要な補正を加えて蒸気圧の値とする。得られたリード蒸気圧(RVP)は、外気圧が空気室内の最初の圧力で打ち消されるので、37.8 ℃における絶対蒸気圧の近似値になる。 |

蒸気圧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/30 09:49 UTC 版)
蒸気圧(じょうきあつ、英語: vapor pressure)あるいは平衡蒸気圧(へいこうじょうきあつ、英語: equilibrium vapor pressure)とは、液相あるいは固相にある物質と相平衡になるような物質の気相の圧力のことである。蒸気圧は物質に特有の物性値であり、温度に依存して決まる。
物質の沸点とは、その物質が液相にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度である。また、物質の昇華点とは、その物質が固相にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度である。さらに物質が液相と固相の平衡状態にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度は三重点と呼ばれる。
液体の物質の周囲でのその物質の蒸気の分圧が液相の蒸気圧に等しいとき、その液体は蒸気と気液平衡の状態にある。 気液平衡から温度を上げると蒸気圧が上がり、蒸気の分圧より大きくなる。蒸気を理想気体とみなせば、分圧は蒸気量に比例する。液体が蒸発することで蒸気量が増えて分圧も上がり、新たな温度での蒸気圧と等しくなることで再び気液平衡となる。逆に温度を下げると蒸気圧が下がる。このときは蒸気が液体に凝縮することで分圧が下がり、新たな温度で気液平衡となる。気相と固相の相平衡でも同様に、温度の変化に対して物質が昇華して分圧が蒸気圧と等しくなるように蒸気量が変化して平衡が保たれる。
純物質の蒸気圧はクラウジウス・クラペイロンの式によって近似される。溶液であれば蒸気圧降下が起こり、これはラウールの法則で近似される。
理想的な水の蒸気圧

他の液体と同様に蒸気圧が周囲の大気圧まで達すると水は沸騰する。高度が高い場所では大気圧が低くなるため、水は低い温度で沸騰する。大気圧 P と水の沸点 θbp の関係は