ラウール‐の‐ほうそく〔‐ハフソク〕【ラウールの法則】
ラウールの法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/11 20:05 UTC 版)
ラウールの法則(ラウールのほうそく、英: Raoult's law)とは、「混合溶液の各成分の蒸気圧はそれぞれの純液体の蒸気圧と混合溶液中のモル分率の積で表される」という法則である。不揮発性の溶質を溶媒に溶かすと溶液の蒸気圧が下がる蒸気圧降下(じょうきあつこうか、vapor pressure depression)の現象について成り立ち、これは束一的性質のひとつである。その名はフランソワ=マリー=ラウールにちなむ。
詳細
ラウールの法則は十分に希薄な溶液について成り立つ。任意のモル分率においてラウールの法則が成立する溶液を理想溶液という。理想溶液では各成分は互いに異なる分子間力を及ぼさない。理想溶液に比較的近い溶液としては、しばしばベンゼンとトルエンの混合溶液があげられる。一般には分子構造の似た物質どうしの混合液が理想溶液に近いとされる。
ラウールの法則が成り立つとき、蒸気圧降下は気液平衡に達すると溶質の種類にかかわらず、モル分率と蒸気圧に比例する。すなわち成分i の蒸気圧Pi は
ラウールの法則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 00:00 UTC 版)
ラウールの法則とは、「溶液の成分 i の蒸気圧 Pi, vap は、その成分が単独で存在するときの蒸気圧 P*i, vap に溶液のモル分率 Xi を掛けたものに等しい」という法則である。この節では、完全溶液がラウールの法則にほぼ完全に従うことを示す。 1成分系の気液平衡、すなわち気相にも液相にも成分 i しかないときの気液平衡では、気相における成分 i の化学ポテンシャル μ*i, gas(T, P*i, vap) は液相における成分 i の化学ポテンシャル μ*i, liq(T, P*i, vap) に等しい。 μ i , gas ∗ ( T , P i , vap ∗ ) = μ i , liq ∗ ( T , P i , vap ∗ ) {\displaystyle \mu _{i,{\text{gas}}}^{*}(T,P_{i,{\text{vap}}}^{*})=\mu _{i,{\text{liq}}}^{*}(T,P_{i,{\text{vap}}}^{*})} ここで P*i, vap は成分 i が単独で存在するときの温度 T における蒸気圧であり、1成分系では系の圧力に等しい。 多成分系であっても、気液平衡では各成分の気相と液相の化学ポテンシャルは等しい。 μ i , gas ( T , P , Y ) = μ i , liq ( T , P , X ) {\displaystyle \mu _{i,{\text{gas}}}(T,P,{\boldsymbol {Y}})=\mu _{i,{\text{liq}}}(T,P,{\boldsymbol {X}})} ここで P は成分 i の蒸気圧ではなく、全圧である。また、多成分系では気相中の成分 i のモル分率 Yi は液相中のモル分率 Xi とは異なるので、気相の組成 Y = (Y1, Y2, ... ) は液相の組成 X = (X1, X2, ... ) とは異なる。 気相が理想混合気体であれば、気相の成分 i の化学ポテンシャルは μ i , gas ( T , P , Y ) = μ i , gas ∗ ( T , P ) + R T ln Y i = μ i , gas ∗ ( T , P vap ∗ ) + R T ln P Y i P i , vap ∗ {\displaystyle \mu _{i,{\text{gas}}}(T,P,{\boldsymbol {Y}})=\mu _{i,{\text{gas}}}^{*}(T,P)+RT\ln Y_{i}=\mu _{i,{\text{gas}}}^{*}(T,P_{\text{vap}}^{*})+RT\ln {\frac {PY_{i}}{P_{i,{\text{vap}}}^{*}}}} で与えられる。また、液相が完全溶液であれば、液相の成分 i の化学ポテンシャルは μ i , liq ( T , P , X ) = μ i , liq ∗ ( T , P ) + R T ln X i = μ i , liq ∗ ( T , P vap ∗ ) + ∫ P vap ∗ P v i , liq ∗ d P + R T ln X i {\displaystyle \mu _{i,{\text{liq}}}(T,P,{\boldsymbol {X}})=\mu _{i,{\text{liq}}}^{*}(T,P)+RT\ln X_{i}=\mu _{i,{\text{liq}}}^{*}(T,P_{\text{vap}}^{*})+\int _{P_{\text{vap}}^{*}}^{P}v_{i,{\text{liq}}}^{*}\,\mathrm {d} P+RT\ln X_{i}} で与えられる。ただし v*i, liq は純物質 i の液体のモル体積である。 以上の4つの等式から、理想混合気体と完全溶液の気液平衡では次式が成り立つ。 ln P Y i P i , vap ∗ = 1 R T ∫ P vap ∗ P v i , liq ∗ d P + ln X i {\displaystyle \ln {\frac {PY_{i}}{P_{i,{\text{vap}}}^{*}}}={\frac {1}{RT}}\int _{P_{\text{vap}}^{*}}^{P}v_{i,{\text{liq}}}^{*}\,\mathrm {d} P+\ln X_{i}} 溶液の成分 i の蒸気圧 Pi, vap は、溶液と気液平衡にある気体中の成分 i の分圧 PYi に等しいので、上式から P i , vap = P Y i = P i , vap ∗ X i exp ( 1 R T ∫ P vap ∗ P v i , liq ∗ d P ) {\displaystyle P_{i,{\text{vap}}}=PY_{i}=P_{i,{\text{vap}}}^{*}X_{i}\exp \left({\frac {1}{RT}}\int _{P_{\text{vap}}^{*}}^{P}v_{i,{\text{liq}}}^{*}\,\mathrm {d} P\right)} で与えられることが分かる。圧力 P が 1 気圧程度かそれよりも低ければ Pv*i, liq ≪ RT となるので、右辺の指数関数はほぼ exp(0) = 1 となる。この近似の下では、溶液の成分 i の蒸気圧 Pi, vap は溶液中のモル分率 Xi に比例する。比例係数 P*i, vap は、この成分が単独で存在するときの蒸気圧である。 P i , vap = P i , vap ∗ X i {\displaystyle P_{i,{\text{vap}}}=P_{i,{\text{vap}}}^{*}X_{i}} すなわち、完全溶液の蒸気圧はラウールの法則にほぼ完全に従う。
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