理想溶液
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 00:00 UTC 版)
理想溶液(りそうようえき、英語: ideal solution)とは、混合熱が厳密にゼロで、任意の成分の蒸気圧がラウールの法則にほぼ完全に従う溶液のことである[1]。完全溶液 (perfect solution) ともいう[2]。2種類以上の液体を混合して溶液をつくるとき、混合物が完全溶液となるなら、混合時に発熱も吸熱もない。また、完全溶液中の任意の成分の蒸気圧は、その成分が単独で存在するときの蒸気圧に溶液のモル分率を掛けたものに等しい。
注釈
- ^ 単に希薄溶液ということも多い。例えば 加藤 (2001)、横田 (1987)、田崎 (2000)、佐々 (2000)。
- ^ 前節の最後の式。
- ^ 過加熱状態や過冷却状態などの準安定状態を考えるなら、沸点や融点でもテイラー展開できる。準安定状態を考えないときの議論は、田崎 (2000) pp.191-194 を参照のこと。
- ^ a b この近似による相対誤差は ΣXi < 0.02 であれば 1% 以下である。
- ^ 溶液中の溶質の部分モル体積の大きさは、おおよそ凝縮相のモル体積の程度であるから、気相を理想混合気体とみなせるほど十分に低い圧力のもとでは v1
i, liq ≪ RT/P である。
出典
- ^ 加藤 (2001) p.131, p143.
- ^ a b 横田 (1987) p.112.
- ^ a b アトキンス第8版 p.150.
- ^ 例えば 加藤 (2001)、アトキンス第8版。
- ^ 例えば 横田 (1987)、ムーア第4版。
- ^ ムーア第4版 pp.244-245.
- ^ 加藤 (2001) p.130.
- ^ ムーア第4版 p.125.
- ^ ムーア第4版 p.245.
- ^ 佐々 (2000) p.116.
- ^ 田崎 (2000) p.175.
- ^ 佐々 (2000) pp.112-113.
- ^ キャレン (1998) p.146.
- ^ 田崎 (2000) p.176.
- ^ 横田 (1987) p.111.
- ^ 横田 (1987) p.116.
- ^ a b 横田 (1987) p.119.
- ^ 田崎 (2000) p.194.
- ^ アトキンス第8版 p.159.
- ^ 加藤 (2001) p.147.
理想溶液
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熱力学的には液体は分子が分子間力により束縛し合っているものの、固体のように秩序だった構造をとらない。すなわち無秩序な物理的状態を示す。したがって、溶液の液体の中で溶媒分子と溶質分子との間での束縛が等価であり、それぞれが区別されないような無秩序な混合状態の液体となっている溶液を理想溶液(ideal solution)と呼ぶ。理想溶液は熱力学的な概念であり、その理論から理想溶液の挙動としてラウールの法則が導かれる。言い換えると、いずれの溶液濃度においてもラウールの法則が成立する溶液が理想溶液である。 経験的に理想溶液となる溶解(あるいは混合)は次のような場合が該当する。 構成分子の分子の大きさがほぼ等しい 混合熱はゼロ 混合による容積変化はゼロ 近似的に理想溶液と見なされる例としては、重クロロホルムとクロロホルムとの混合やトルエンとベンゼンとの混合などがある。 それら以外の場合でも希薄溶液は溶質分子同士の相互作用の影響は無視しうるので理想溶液に近似可能であり、ラウールの法則やヘンリーの法則が成り立つ。その場合蒸気圧あるいは沸点や凝固点など溶液の熱力学的状態量は束一的性質を示す。 二種類の液体が混合する場合、成分2のモル分率を X 2 {\displaystyle X_{2}} と置くと成分2の部分モル溶解エントロピーは以下のようになる。ここで R {\displaystyle R} は気体定数である。 Δ S ¯ 2 = − R ln X 2 {\displaystyle \Delta {\overline {S}}_{2}=-R\ln X_{2}} また理想溶液においては溶解エンタルピー変化は0であるから、成分2の部分モル溶解ギブス自由エネルギーは以下のようになる。ここで T {\displaystyle T} は絶対温度である。 Δ G ¯ 2 = R T ln X 2 {\displaystyle \Delta {\overline {G}}_{2}=RT\ln X_{2}} 二成分溶液において、各成分のフガシティー(理想系を仮定した蒸気圧) f 1 {\displaystyle f_{1}} 、 f 2 {\displaystyle f_{2}} は各成分のモル分率 X 1 {\displaystyle X_{1}} 、 X 2 {\displaystyle X_{2}} と以下の関係にある。 X 1 ( ∂ ln f 1 ∂ X 1 ) P , T = X 2 ( ∂ ln f 2 ∂ X 2 ) P , T {\displaystyle X_{1}\left({\frac {\partial \ln f_{1}}{\partial X_{1}}}\right)_{P,T}=X_{2}\left({\frac {\partial \ln f_{2}}{\partial X_{2}}}\right)_{P,T}} 蒸気圧が充分に低圧で理想気体と近似できる場合は各成分のフガシティーを蒸気圧 P 1 {\displaystyle P_{1}} 、 P 2 {\displaystyle P_{2}} で置いてよく以下のようになる。ここで P 1 ∘ {\displaystyle P_{1}^{\circ }} 、 P 2 ∘ {\displaystyle P_{2}^{\circ }} は各成分の純液体の蒸気圧である。各成分の蒸気圧は各成分のモル分率に比例する。(ラウールの法則) P 1 = P 1 ∘ X 1 = P 1 ∘ ( 1 − X 2 ) {\displaystyle P_{1}=P_{1}^{\circ }X_{1}=P_{1}^{\circ }(1-X_{2})} P 2 = P 2 ∘ X 2 = P 2 ∘ ( 1 − X 1 ) {\displaystyle P_{2}=P_{2}^{\circ }X_{2}=P_{2}^{\circ }(1-X_{1})} また成分2の希薄溶液において、 X 2 {\displaystyle X_{2}} が0に近いときその近傍で微分学により以下の式が成立する。成分2のフガシティーは成分2のモル分率に比例する。(ヘンリーの法則) ∂ f 2 ∂ X 2 = f 2 X 2 = const {\displaystyle {\frac {\partial f_{2}}{\partial X_{2}}}={\frac {f_{2}}{X_{2}}}={\mbox{const}}}
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