理想的な不可視インク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 06:56 UTC 版)
「不可視インク」の記事における「理想的な不可視インク」の解説
普通の不可視インクは機密保持には不十分である。第二次世界大戦中のイギリス特殊作戦執行部 (Special Operations Executive, SOE) のエージェントは、主に第一次世界大戦で使い古された、機密性が不確かなインクに頼って自らの命を危険にさらさないよう教育を受けていた。SOEの訓練マニュアルは理想的な不可視インクが具える条件として以下の物を挙げている。 非常に水溶性が高い、すなわち油性でないこと。 揮発性を持たない、すなわち無臭であること。 紙に結晶を出さない、すなわち多少の光が当たっても目立たないこと。 紫外線を照射しても発光しないこと。 紙を分解・脱色させないこと。例えば硝酸銀は不可。 ヨウ素などの一般的な発色剤と反応しないこと。 可視化に必要とするものができるだけ少ないこと。 熱で発色しないこと。 容易に入手でき、所持していても怪しまれない用途があること。 複数の化合物の混合物でないこと。7と矛盾しないようにするため。 実際には、通常6と9が同時には満たされない。SOEは日用品から即席に得られるような化学薬品には頼らず、そのエージェントに特殊なインクを与えていた事が知られている。 不可視インクは本質的に「安全」なものとはいえないが、郵便物の全検査を行うのは技術的に難しい、という点も斟酌する必要がある。何百万もの電気通信を露見しないように大がかりに検閲する方が、少量の伝統的な封筒入りの手紙を手作業で検査するよりも容易である。組織として多数の保安要員を抱える独裁国家でないならば、郵便物の検閲は特殊な状況下、例えば特定の容疑者の手紙や、特定の施設に出入りする際の検査にとどめるべきである。 機密性の指針としていえば、ここで挙げたインクのほとんど全ては第一次世界大戦の終わりには知られていた。アメリカ中央情報局 (CIA) は、1999年、不可視インクは安全保障にいまだ必要であるという、論争の余地ある主張に基づき、第一次世界大戦時の不可視インク技術に関して機密情報リストからの除外命令を行わないでおくようアメリカ合衆国情報安全保障監督局に要請し、これが認められた。
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