熱力学的な状態量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 00:00 UTC 版)
温度 T、圧力 P、物質量 N = (N1, N2, ... ) の完全溶液の熱力学的な状態量は、成分 i の化学ポテンシャル μi(T, P, X) から導くことができる。 ギブズエネルギー G(T, P, N) は、G = ΣμiNi より G ( T , P , N ) = ∑ G i ∗ ( T , P , N i ) + R T ∑ N i ln X i {\displaystyle G(T,P,{\boldsymbol {N}})=\sum G_{i}^{*}(T,P,N_{i})+RT\sum N_{i}\ln X_{i}} となる。すなわち、純物質を定温定圧下で混合して完全溶液を調製したときのギブズエネルギー変化は Δ mix G = R T ∑ N i ln X i {\displaystyle \Delta _{\text{mix}}G=RT\sum N_{i}\ln X_{i}} で与えられる。完全溶液の ΔmixG は成分の化学的性質には依らない。組成と温度が同じであれば、モル当たりの ΔmixG はすべての完全溶液に共通の値になる。 エントロピー S(T, P, N) は、S = −(∂G/∂T)P,N より S ( T , P , N ) = ∑ S i ∗ ( T , P , N i ) − R ∑ N i ln X i {\displaystyle S(T,P,{\boldsymbol {N}})=\sum S_{i}^{*}(T,P,N_{i})-R\sum N_{i}\ln X_{i}} となる。すなわち、完全溶液の混合エントロピー (entropy of mixing) は Δ mix S = − R ∑ N i ln X i {\displaystyle \Delta _{\text{mix}}S=-R\sum N_{i}\ln X_{i}} で与えられる。完全溶液の ΔmixS も成分の化学的性質に依らない。組成が同じであれば、モル当たりの ΔmixS はすべての完全溶液に共通の値になる。 完全溶液の体積 V(T, P, N) は、V = (∂G/∂P)T,N より V ( T , P , N ) = ∑ V i ∗ ( T , P , N i ) {\displaystyle V(T,P,{\boldsymbol {N}})=\sum V_{i}^{*}(T,P,N_{i})} となる。すなわち、完全溶液の体積は混合前の液体の体積の総和に等しい。実在溶液では混合前後で体積が変化することがある。たとえば、純水 50 mL と純エタノール 50 mL を混ぜると、できた溶液の量は 100 mL より少なくなる。 エンタルピー H(T, P, N) は、G = H − TS より H ( T , P , N ) = ∑ H i ∗ ( T , P , N i ) {\displaystyle H(T,P,{\boldsymbol {N}})=\sum H_{i}^{*}(T,P,N_{i})} となる。すなわち、完全溶液の混合エンタルピー (enthalpy of mixing) は厳密にゼロである。2種類以上の液体を混合して溶液をつくるとき、混合物が完全溶液となるなら、混合時に発熱も吸熱もない。実在溶液では混合エンタルピーがゼロとは限らないので、混合時に発熱することもあれば吸熱することもある。 ヘルムホルツエネルギー F(T, P, N) と内部エネルギー U(T, P, N) は、G = F + PV と H = U + PV より、それぞれ F ( T , P , N ) = ∑ F i ∗ ( T , P , N i ) + R T ∑ N i ln X i {\displaystyle F(T,P,{\boldsymbol {N}})=\sum F_{i}^{*}(T,P,N_{i})+RT\sum N_{i}\ln X_{i}} U ( T , P , N ) = ∑ U i ∗ ( T , P , N i ) {\displaystyle U(T,P,{\boldsymbol {N}})=\sum U_{i}^{*}(T,P,N_{i})} となる。
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