船外実験プラットフォーム (EF)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 04:28 UTC 版)
「きぼう」の記事における「船外実験プラットフォーム (EF)」の解説
船外実験プラットフォーム (Exposed Facility:EF)は、微小重力・高真空の宇宙曝露環境を利用して、科学観測、天体観測、地球観測、通信、理工学実験、材料曝露実験などを行う多目的実験空間を提供する装置。船外実験装置や衛星間通信装置を取り付けるための能動的な結合部である船外実験プラットフォーム側装置交換機構(Exposed Facility Unit:EFU)が設けられており、これに実験装置側にある受動的なペイロード側装置交換機構(Payload Interface Unit:PIU)が接続を行い、両者を含む一連の仕組みを船外実験プラットフォーム装置交換機構(Equipment Exchange Unit:EEU)と呼ばれている。船外実験プラットフォーム側装置交換機構(EFU)は船内実験室から見て右端側面にEFU#1・EFU#3・EFU#5・EFU#7の4か所、左端側面にEFU#2・EFU#4・EFU#6・EFU#8の4か所、前端側面にEFU#9・EFU#10の2か所、上面前端付近にEFU#11・EFU#12の2か所の計12か所あり、この結合部に各実験装置を取り付けることで様々な実験が行える。実験装置は、基本的に標準ペイロードと呼ばれるJEM曝露部搭載型共通バス機器部(APBUS)に搭載された上で各EFUに設置され、APBUSの大きさは0.8m×1.0m×1.85mで、最大で重さ500kgまで搭載可能となっている。EFU#2とEFU#9は2.5トンまでの実験装置を設置可能なため、より大きな寸法の実験装置が容認される可能性はある。 曝露実験装置の設置場所は米、露、欧州も有しているが、電力・通信(MIL-1553Bによる低速系のバスライン)のみの供給に留まり、これらに加えて中速系のイーサネットと光ファイバーによる高速系の光通信や能動的な熱制御能力(排熱・冷却)まで提供可能なのは「きぼう」の船外実験プラットフォームだけである。受動的な船外実験プラットフォーム結合機構(Exposed Facility Berthing Mechanism:EFBM)が設置されており、きぼう船内実験室側の能動的なEFBMと結合している。ロボットアームが掴む把持部であるグラプルフィクスチャー(Grapple Fixture)は上面中央両端に1つずつ計2か所あり、子アーム保管装置は上面手前右にある。 船外実験プラットフォームの構造は、内部は「Spar」と呼ばれる格子状のアルミ合金製フレームに「Bulkhead」と呼ばれる板状のアルミ合金製フレームが組み合わさってできており、それらのフレームの周囲を上面が「Upper Panel」、下面が「Lower Panel」、手前側面が「Forward Panel」、前方側面が「Aft Panel」、両端側面が「Side Panel」のアルミ合金製パネルで覆われ、その四隅と下面前端の計5か所に、スペースシャトルの貨物室に固定するための「トラニオン(Trunnion)」または「STS取付構造(STS(Space Transportation System) mounting structure)」と呼ばれる、棒状の「Support Leg Assembly-Keel」とキール結合部の「Scuff Palate」で構成された3点支持架があり、その内前方両端2か所のトラニオンには照明、雲台、カメラで構成された曝露部視覚装置Visual Equipment:VE)が搭載されている。 船外実験プラットフォームの内部機器は、円滑な運用が行えるよう故障時に交換ができる軌道上交換ユニット(Orbital Replacement Unit:ORU)化されており、ORUは上面に8個設けられているロボットアームで交換が行えるロボティクス対応軌道上交換ユニット(Robot essential ORU:R-ORU)と、下面に4個設けられている宇宙飛行士が船外活動で交換を行う船外活動対応軌道上交換ユニット(Extravehicular activity ORU:E-ORU)の2種類ある。 R-ORU化されているのは、曝露部電力分配箱(Exposed Facility-Power Distribution Box:EF-PDB)、サバイバル電力分配箱(Survival Power Distribution Box:SPB)、曝露部制御装置(Exposed Facility System Controller:ESC)、ビデオスイッチャー(Video Switcher:VSW)、ポンプパッケージ(Fluid Pump Package:FPP)の5種類で、E-ORU化されているのは、熱制御系インターフェースユニット( TCS( Thermal Control System) Interface Unit:TIU)、ヒーター制御装置-a(Heater Control Equipment-a:HCE-a)、ヒーター制御装置-b(Heater Control Equipment-b:HCE-b)、船外実験プラットフォーム装置交換機構(EEU)ドライバーユニット(EEU Driver Unit:EDU-a/b)の4種類となっている。 各EFUの接続機器の内訳(実験に使えるのはEFU#7、EFU#10、EFU#12を除く残りの9か所で、実験装置の重量はEFU#2、EFU#9が2.5トン以内で他の所は500kg以内となっている) EFU#1に全天X線監視装置(MAXI) EFU#2(大型重量用2.5トン以下)にアイスクリーム(ISS-CREAM) EFU#3は未設置(以前は超伝導サブミリ波リム放射サウンダ(SMILES)が設置されていて、その後キャッツ(CATS)が設置されていた。) EFU#4にナノラックス船外プラットフォーム(NREP) EFU#5に中型曝露実験アダプター(i-SEEP) EFU#6にジェダイ(Global Ecosystem Dynamics Investigation:GEDI、アメリカの地球観測用レーザー。以前は沿岸海域用ハイパースペクトル画像装置および大気圏/電離圏リモート探知システム実験装置(HREP)が設置されていたが、2018年7月に撤去されている。) EFU#7に衛星間通信システム曝露系サブシステム(ICS-EF)(EFU#7の不具合時はEFU#5を優先使用) EFU#8にキャッツ(CATS、以前はポート共有実験装置(MCE)が設置されていた。) EFU#9(大型用2.5トン以下)に高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET) EFU#10にエコストレス(ECOSTRESS、本来はHTVの曝露パレットが設置される場所で普段は空いているが、エコストレスが設置された2018年7月の時点で、9号機までとなっている打ち上げ予定のHTV7-9号機の曝露パレットはISS用新型リチウムイオンバッテリーを搭載するため、実験機器設置のためEFU#10を使う予定はない。かつては船外パレットの使用箇所でもあったが後述の通り1回のみの使用で終わった。EFU#10の不具合時はEFU#9を優先使用。) EFU#11は未設置(以前は宇宙環境計測ミッション装置 (SEDA-AP)がEFU#9からここに移設されていたが2018年12月21日に廃棄されている。) EFU#12は実験装置交換時の仮置場(普段は使用不可) 主要諸元 形状 - 箱形 幅 - 5.0m 長さ - 5.2m(EFBMと前端EFUまでの長さ、トラニオン上の曝露部視覚装置を含めると5.6m) 高さ - 3.8m(曝露部視覚装置を含めると4.0m) 質量 - 4.1t 実験装置取付け場所 - 12箇所システム機器用 - 2箇所 実験装置設置用 - 9箇所 実験装置仮置き用 - 1箇所 電力 - 直流120V・最大11kWシステム機器用 - 最大1kW 実験装置用 - 最大10kW 個別の実験装置 - 最大3kW 通信制御 - 16ビット計算機システム、データ伝送速度:最大100Mbps 環境制御性能 - なし 寿命 - 10年以上
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