目黒寄生虫館とは? わかりやすく解説

目黒寄生虫館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/24 23:20 UTC 版)

目黒寄生虫館
Meguro Parasitological Museum
外観
目黒寄生虫館 (東京都区部)
施設情報
専門分野 寄生虫
収蔵作品数 標本 約60,000点(模式標本 約1,500点を含む)(※公式ながら時期不明[1]、図書文献 約16,000冊(※公式ながら時期不明[1]、論文別刷 約50,000部(2009年時)[2]
館長 倉持利明
事業主体 公益財団法人目黒寄生虫館
管理運営 公益財団法人目黒寄生虫館
開館 1953年昭和28年)[3]
所在地 153-0064
日本 東京都目黒区下目黒四丁目1番1号
位置 北緯35度37分54秒 東経139度42分24秒 / 北緯35.63167度 東経139.70667度 / 35.63167; 139.70667座標: 北緯35度37分54秒 東経139度42分24秒 / 北緯35.63167度 東経139.70667度 / 35.63167; 139.70667
外部リンク http://www.kiseichu.org/
プロジェクト:GLAM
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目黒寄生虫館(めぐろ きせいちゅうかん、称:Meguro Parasitological Museum頭字語:MPM[4])は、日本東京都目黒区下目黒に所在する、寄生虫学専門の私立博物館[5]公益財団法人目黒寄生虫館が運営している。

概要

寄生虫に関する研究活動を行い、標本や資料を収集し、広く一般に向けて展示することで啓発活動等を行っている。寄生虫学専門の博物館は世界でも珍しいため海外からの来訪者も多く[6]、多くの解説文は11言語に翻訳できるQRコードがついている。2017年12月[7]韓国ソウル江西区にて寄生虫博物館[8][注 1]が開館[9]するまでは、寄生虫専門の博物館として長らく「世界で唯一」[6]の存在だった。

現在の当館の建物は、床面積があまり広くない地上6階・地下1階のビルで、さらに展示スペースは1階と2階のみという、小さな施設である。上層階は研究室、収蔵庫、事務室等となっている。寄生虫形態学および分類学を中心とした地道な研究活動や、定期的な特別展示や講演会、外部での講演など教育活動も行う研究博物館である。

利用情報

  • 開館時間:午前10時から午後5時まで (10:00 - 17:00) [10]
  • 休館日:毎週月曜日・火曜日(月曜日または火曜日が祝祭日の場合は開館し、翌平日を休館日とする[11]。)、および、年末年始(12月29日~1月4日[11][10]
  • 見学時間:おおよそ30分から40分程度[10]

入館料

  • 無料。
  • 任意で寄付を募っており、1階展示室の脇にパンフレットとともに募金箱が置かれているほか、寄附金控除が認められる公益財団法人であることから、来館者へ積極的に寄付を呼びかけている。

交通アクセス

バリアフリ―情報

  • 車いす用リフトと、貸出用の車椅子が1台がある。
  • 貸出用ベビーカーが1台ある。
  • 車いす対応トイレ(ベビーシートつき)が1か所ある。
  • 筆談具対応。
  • ほじょ犬同伴可(他のペット類は入館不可)。
  • AED設置施設


所蔵品

  • 標本:約60,000点(模式標本 約1,500点を含む)(※公式ながら時期情報なし)[1]。2009年時点では、標本 約45,000点(模式標本 約1,500点を含む)[2]
  • 図書文献:約16,000冊(※公式ながら時期情報なし)[1]
    • 図書:約5,000冊。[12]
    • 刊行物:約340種、約13,700
  • 論文別刷:2009年時点で約50,000部[2]
  • 特筆性の高い資料
    • 日本の寄生虫分類学に多大な業績を遺した山口左仲(1894年-1976年)が論文などの執筆時に使用した寄生虫の原図の一部[13]
    • 大鶴資料:琉球大学医学部長を務めた寄生虫学者の大鶴正満(1916-2008年)が遺した1,000点以上の膨大な資料[13][14]
    • 小宮文庫:国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)の所長を務めた寄生虫学者・小宮義孝 (1900-1976年)を中心とする研究者が保存してきた寄生虫病感染症に関する研究資料[13]。その一部が2017年(平成29年)に研究所から当館に寄託されたもので[13][15]、様々な言語で書かれた約8,000件の学術論文や会議報告集などからなる[13]

主な展示物

全長8.8メートルの日本海裂頭条虫の標本
全部で約300点あるが、全長8.8メートルに及ぶ長大な日本海裂頭条虫サナダムシの一種)は当館を代表する展示物である[16]1986年(昭和61年)から展示されているこの標本は、約1メートルずつに折り曲げて展示されているが、同じ長さのが標本の横に設置されており、それを手に取ることで長さを実感できるようになっている。
  • 寄生虫や昆虫細工模型
  • 寄生虫罹患者の写真等のパネル

刊行物

書籍
論文
日本における寄生虫学の発展史が、研究者86名の成果を綴る形で編纂されている[17]。和文版は1961年(昭和36年)から1999年(平成11年)までに全7巻が刊行された。PDFファイルは公式ウェブサイトから無料ダウンロードが可能[17]
英文版は1964年(昭和39年)から2003年(平成15年)までに全8巻が刊行された[18]。和文版と同じく無料ダウンロードが可能[18]
その他
  • 開館以来発行してきた『目黒寄生虫館月報』および『目黒寄生虫館ニュース』(1998年〈平成10年〉12月発行の通巻第179号まで)は、公式ウェブサイト上で閲覧可能[19]2000年(平成12年)に『むしはむしでもはらのむし通信』に改題した[19]
  • パンフレット『目黒寄生虫館ガイドブック』(和文版、英文版)[19]

歴史

前史

南満洲鉄道株式会社の衛生研究所に勤務していた医学博士亀谷了は、1947年昭和22年)7月に中国奉天[注 2]から日本への引き揚げを果たすと[13]1948年(昭和23年)4月、目黒区に診療所を開設した[13]。亀谷はその頃から寄生虫を専門とする研究所を設立したいと考えていた[13]

年表

関係者

理事長

  • 第2代:亀谷俊也(かめがいしゅんや):1997年(平成9年)就任。2000年(平成12年)退任。
  • 第3代:亀谷みどり(かめがい みどり):2000年就任[29]。現任[20][3]

館長

  • 初代:亀谷了(かめがい さとる)
1953年(昭和28年)就任。1997年(平成9年)退任。
  • 第2代:亀谷俊也(かめがい しゅんや)
1997年(平成9年)就任。2000年(平成12年)退任。
2000年(平成12年)就任。2006年(平成18年)退任。当時、麻布大学教授を兼任。現在、ヤマザキ動物看護大学動物看護学部動物看護学科 教授[人 4]
  • 第4代:町田昌昭(まちだ まさあき)[人 5]
2006年(平成18年)就任。2011年(平成23年)退任。前職は、国立科学博物館動物研究部部長[30]
2011年(平成23年)就任。2021年(令和3年)3月31日退任。前職は、東京大学大学院農学生命科学研究科 教授[人 8]
2021年(令和3年)4月1日就任。現任。前職は、国立科学博物館動物研究部部長。

公益目的事業[31]

  • 寄生虫学の研究等に関する事業:研究・調査活動、学術資料の収集と整理、指導・助言、外部研究者との連携協力。
  • 寄生虫学に関する普及啓発事業 :「目黒寄生虫館」の設置運営、教育普及活動、出版活動、教育用標本の頒布、ミュージアムショップの運営。

ミュージアムグッズ

入館料を徴収しない当館にとっては、来館者による寄付金とともに貴重な収入源である。当館の珍しい特色を生かしたオリジナル商品が用意されている。館内のショップ[32]とオンラインショップ(ECサイト[33]がある。

関連作品

書籍
当館を初めて「面白スポット」として紹介した文献。その内容は、1981年(昭和56年)に創刊された雑誌『写真時代』の掲載物であるため、1981年の頃に記述されたものと推定される。

 作品中、登場人物が博物館に見学に訪れる記載がある(コミカライズ版では館内が忠実に再現されている)。博物館のロゴマークになっているフタゴムシが作品の中で重要な意味をもつ[35]

参考文献

書籍、ムック
論文

関連文献

論文

脚注

注釈

  1. ^ 기생충박물관. 韓国健康管理協会朝鮮語版により設置されている。
  2. ^ 1945年(昭和20年)までの満州国奉天市、1947年(昭和22年)6月までの中華民国瀋陽市、亀谷が引き揚げた同年7月時点での中華民国奉天市。現在の中華人民共和国遼寧省瀋陽市。
  3. ^ 熱膨張する発泡剤入りインクを使ったシルクスクリーン印刷。
  4. ^ サナダムシの一種。
  5. ^ オンラインショップのページではパッケージを取り除いた状態で紹介されているが、館内ショップのページでは青を背景色にした標本瓶を印刷した台紙と一緒にパッケージされた状態で紹介されており、後者はホルマリン固定標本瓶の雰囲気を醸し出している。

出典

  1. ^ a b c d brief, 2022年8月22日閲覧.
  2. ^ a b c 谷川 (2009), p. 126.
  3. ^ a b c d https://biz-maps.com/item/vx1jKo9ElG”. BIZMAPS. 株式会社アイドマ・ホールディングス. 2022年8月22日閲覧。
  4. ^ disclosure, 定款.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w brief.
  6. ^ a b 小島 (2010), p. 185.
  7. ^ <제1화> "기생충병연구소는 어떤 곳일까?" - 한국건강관리협회장 채종일”. 기생충박물관. 2022年9月3日閲覧。
  8. ^ 「日韓共同展示 済州島の象皮病-リンパ系フィラリア症の制圧をめぐる日韓の協働-」を開催”. 公式ウェブサイト. 公益財団法人目黒寄生虫館 (2022年1月10日). 2022年8月22日閲覧。
  9. ^ 飯島渉 (2019年10月22日). “世界で二つ目の寄生虫博物館 < ソウルの寄生虫博物館(2019年10月22日)”. 感染症アーカイブズ (AIDH). 2022年8月22日閲覧。
  10. ^ a b c info.
  11. ^ a b disclosure, 規程.
  12. ^ [[#CITEREF|]].
  13. ^ a b c d e f g h i j k l AIDH.
  14. ^ 大鶴資料(旧琉球大学医学部寄生虫学教室)”. 感染症アーカイブズ (AIDH). 2022年8月22日閲覧。
  15. ^ 感染研小宮文庫”. 感染症アーカイブズ (AIDH). 2022年8月22日閲覧。
  16. ^ 谷川 (2009), pp. 125–126.
  17. ^ a b archive-PDF.
  18. ^ a b Progress of Medical Parasitology in Japan (PDF files)” (英語). official website. Meguro Parasitological Museum, Archives. Meguro Parasitological Museum. 2022年8月22日閲覧。
  19. ^ a b c publication.
  20. ^ a b J-GLOBAL.
  21. ^ 『日本における寄生虫学の研究』.
  22. ^ a b c 谷川 (2009), p. 125.
  23. ^ J-GLOBAL, ただし「1月」とある.
  24. ^ a b 亀谷了 (1994).
  25. ^ “名誉館長亀谷了氏,名誉区民に選ばれる”. 目黒寄生虫館ニュース (財団法人目黒寄生虫館) 179: 4. (1997-12). 
  26. ^ Bill Gates [@BillGates] (2022年8月20日). "I'm at my happiest when I'm learning – no matter how gross the subject matter. Today, I experienced the Meguro Parasitological Museum in Tokyo, and saw what is believed to be the world's longest tapeworm. 10/10 would visit again" (英語). X(旧Twitter)より2022年8月21日閲覧
  27. ^ ビル・ゲイツ氏が目黒寄生虫館を訪問、一番幸せな時について語る”. LIMO. 株式会社ナビゲータープラットフォーム (2022年8月20日). 2022年8月22日閲覧。
  28. ^ 吉原知也 (2022年9月1日). “70年無料を貫く「目黒寄生虫館」に訪れた予想外の夏 ビル・ゲイツ氏来館、寄付金増加”. ENCOUNT. 2022年9月2日閲覧。
  29. ^ brief, 典拠は、当人の挨拶「【2013.04.01】公益財団法人に移行しました。」.
  30. ^ 谷川 (2009).
  31. ^ 公益財団法人目黒寄生虫館定款”. 2025年4月24日閲覧。
  32. ^ shop.
  33. ^ online-shop.
  34. ^ 公益財団法人目黒寄生虫館:ミュージアムショップ”. 目黒寄生虫館公式サイト. 2025年4月24日閲覧。
  35. ^ 三秋縋(原作)・ホタテユウキ(漫画)『恋する寄生虫1』KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉、2018年、100-109頁。 
人物情報
  1. ^ a b 館長 倉持利明 (2021年4月7日). “【2021.04.07】新館長就任のごあいさつ”. 目黒寄生虫館. 2022年8月22日閲覧。
  2. ^ 内田 明彦”. researchmap. 科学技術振興機構 (JST). 2022年8月21日閲覧。
  3. ^ 寄生虫学研究室の内田明彦教授が日本獣医寄生虫学会誌に学術論文を発表しました(2021/12/3 配信) < ニュース”. ヤマザキ動物看護大学 (2021年12月3日). 2022年8月21日閲覧。
  4. ^ 内田 明彦”. 教育・研究業績データベース. ヤマザキ動物看護大学 (2019年8月2日更新). 2022年8月21日閲覧。
  5. ^ 町田 昌昭”. KAKEN. 文部科学省日本学術振興会. 2022年8月21日閲覧。
  6. ^ 小川 和夫”. KAKEN. 文部科学省、日本学術振興会. 2022年8月21日閲覧。
  7. ^ 小川和夫”. 日本の研究.com. 株式会社バイオインパクト. 2022年8月21日閲覧。
  8. ^ 目黒寄生虫館館長 小川和夫. “「寄生虫は人間の生まれるずっと前からライフサイクルを確立して、今日まで生きてきたのです。」”. creare(クレアーレ). 2022年8月22日閲覧。
  9. ^ 倉持 利明”. KAKEN. 文部科学省、日本学術振興会. 2022年8月21日閲覧。
  10. ^ 倉持利明”. 日本の研究.com. 株式会社バイオインパクト. 2022年8月21日閲覧。
  11. ^ 小島 荘明”. KAKEN. 文部科学省日本学術振興会. 2022年8月21日閲覧。
  12. ^ 谷川 力”. 教育・研究業績データベース. ヤマザキ動物看護専門職短期大学 (2022年8月16日更新). 2022年8月22日閲覧。

外部リンク

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