瓜二つ
『鎌倉三代記』7段目 佐々木四郎高綱と百姓藤三郎は見まがうばかりよく似ていたので、北条家を欺くために高綱は藤三郎の命を買い取り、身代わりのにせ首とする。
『千一夜物語』「『ほくろ』の物語」マルドリュス版第268夜 教王ハルン・アル・ラシードの寵臣「ほくろ」は、財宝を盗んだとの濡れ衣を着せられ、絞首刑を宣告される。警吏長は「ほくろ」の親友だったので、獄中の死刑囚の中から「ほくろ」にそっくりの男を捜し出し、身代わりに絞首台につるす。
『捜神記』巻16-4(通巻379話) 尋陽の司令官宅に寄宿する居候が、冥府に連れて行かれそうになる。居候は必死で命乞いし、身代わりに、彼に容貌の似た司令官幕下の都督が死ぬ。
『壇浦兜軍記』2~5段目 井場十蔵は、妹阿古屋の愛人景清に瓜二つであるため、間違って捕らわれそうになるが、やがて自らすすんで景清の身代わりをつとめ、命を捨てようとする。
『独裁者』(チャップリン) トメニア国の独裁者ヒンケルは、アーリア民族による世界支配を目指し、ユダヤ人を迫害する。ユダヤ人の床屋は、たまたまヒンケルにそっくりの風貌だったため、ヒンケルに間違えられる。本物のヒンケルもまた、ユダヤ人と間違えられて逮捕される。床屋はヒンケル総統になり代わり、自由・平和・民主主義を説く大演説をする。
『南総里見八犬伝』第8輯巻之3第78~79回 長尾景春の母・箙大刀自が、犬川荘介・犬田小文吾を捕らえて首を討つよう命ずる。しかし長尾家の執事稲戸津盛が荘介・小文吾をかくまい、彼らの身代わりとして、山賊酒顛二の手下で荘介・小文吾に容貌の似た2人の首を斬る。
『二都物語』(ディケンズ) チャールズ・ダーネーは、民衆の犠牲の上に成り立つ貴族の生活を嫌い、侯爵の甥としての身分を捨てて生活していた。しかしフランス革命がおこり、ダーネーは逮捕され死刑を宣告される。ダーネーの妻ルーシーに思いをよせていた弁護士シドニー・カートンが、ダーネーを脱獄させ、自分の容貌がダーネーと瓜二つであることを利用し、身代わりに断頭台にのぼる。
『日本書紀』巻10応神天皇9年4月 「大臣武内宿禰が筑紫で謀叛をたくらんでいる」との讒言があり、応神天皇は、宿禰を殺すための使者をさしむける。臣下の真根子が、武内宿禰によく似ているため身代わりをかって出、自刃する。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第1日第9話 フォンツォ王子は瓜二つの親友カンネローロと見間違えられ、カンネローロの妃と床をともにする。フォンツォ王子は2人の間に抜き身の剣を置く。
『レ・ミゼラブル』(ユーゴー)第1部第6~7編 前科者ジャン・ヴァルジャンは過去を隠し、「マドレーヌ」と名乗る。彼は、貧しい人々を助けるなど数々の善行の結果、市長に推挙される。しかし、彼によく似た男がジャン・ヴァルジャンと見なされ逮捕されたため、マドレーヌ市長は法廷に乗りこみ、「自分こそジャン・ヴァルジャンだ」と名乗る。
*→〔演技〕4の『南総里見八犬伝』第4輯巻之3第36回~巻之4第37回。
*→〔三者択一〕5の『源平盛衰記』巻16「あやめの前の事」。
*→〔誓い〕2の『七賢人物語』「皇帝の息子の語る第八の物語」。
★2.神・仏・悪魔などが、ある人間と瓜二つに化ける。瓜二つの人間を造る。
『古本説話集』下-56 吝嗇な留志長者の留守中、帝釈天が長者そっくりの姿になって、財物を人々に分け与える。そこへ本物の長者が帰宅するが、2人の長者のどちらが本物か誰も見分けられない。これは、長者を物欲から解放するための方便だった〔*『今昔物語集』巻3-22に類話〕。
『西遊記』百回本第39回 文殊菩薩の乗用の獅子が道士に化け、孫悟空と闘うが到底かなわないので、三蔵法師そっくりの姿になり、本物の三蔵の横に並ぶ。悟空が棒で打ちかかると、2人とも「悟空や、打つんじゃない。私だ」と言い、見分けがつかない。本物の三蔵は緊箍呪を唱えて悟空の頭の金環を締めつけ、自分が本物であることを示す。
『西遊記』百回本第58回 六耳の猿が孫悟空そっくりに化け、本物の悟空と「あいつこそ偽者だ」と争う。南海の観音菩薩が緊箍呪を唱えると、2人とも「頭が痛い」と訴える。天界の照魔鏡に映しても区別がつかない。霊鷲山雷音寺の釈迦如来が偽悟空の正体をあばき、本物の悟空が鉄棒で偽悟空を打ち殺す。
『未来のイヴ』(リラダン) エワルド卿の恋人アリシャは、美貌とは裏腹の卑俗な魂を持っていた。発明家エディソンが、アリシャと瓜二つで高貴な魂を持つ人造人間ハダリーをつくる。エワルド卿ははじめてハダリーと語り合った時、それをアリシャだと思う→〔人造人間〕1。
*→〔にせ花嫁〕2の『白鳥の湖』(チャイコフスキー)・〔婿選び〕1の『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」。
★3.瓜二つの集団。
『古事記』下巻 雄略天皇が、紅紐に青摺の衣の百官を率いて葛城山に登る。向かいの山に、まったく同じ服装の一団が現れる。「誰か」と問うと「誰か」と答え、矢をつがえると相手方も矢をつがえる。それは一言主の神であり、雄略天皇は拝礼する。
『七賢人物語』「妃の語る第七の物語」 騎士が秘密の抜け穴を利用して、王妃と密通する。騎士は王妃を抜け穴から連れ出し、着飾らせて、「私の恋人です」と言って王に紹介する。王は「我が妃と瓜二つだ」と驚く。王は騎士の頼みにより、騎士と恋人(実は王妃)を教会で結婚させ、花嫁に「誰よりも騎士を愛せよ」と教える。騎士と花嫁が船で去った後に、王は妃を奪われたことを知る。
『カター・サリット・サーガラ』「愚者物語」第15話 夫の旅中に妻が情夫の所に行く。妻の腹心の下女が、帰宅した夫に「奥様は亡くなられた」と告げ、夫は嘆く。夫が妻の追善供養をすると、バラモンに扮した情夫が妻とともにやって来て、供養のご馳走を幾月もの間、食い荒らす。下女が「奥様は霊界からおいでになり、バラモン様と食事をなさっています」と言い、夫はそれを信じる。
品詞の分類
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