婿選び
『詩語法』(スノリ)第3章 アース神たちが、巨人の娘スカジに「われわれの足だけを見て、その中から夫を選べ」と言う。スカジはいちばん美しい足に目をとめ、それを光の神バルドルと思って、その持ち主を夫に選ぶ。ところがそれは海の神ニョルズの足であった。
『露団々(つゆだんだん)』(幸田露伴) 米国の大富豪「ぶんせいむ」が、1人娘「るびな」の花婿募集の新聞広告を出す。世界中から求婚者が集まり、「ぶんせいむ」は彼らを様々に試験する。「るびな」には相思相愛の青年「しんじあ」があるが、「しんじあ」は、試験に勝ち抜いての結婚というやり方を嫌い、求婚競争に加わらない。実は「ぶんせいむ」は、「しんじあ」の心を試そうとして婿選びの広告を出したのであり、結局「ぶんせいむ」は、「るびな」を「しんじあ」と結婚させることになった。
『殿集め』(落語) 某大家(たいけ)の妙齢の娘が清水の舞台から飛び降りるというので、大勢が見物に来る。しかし娘は舞台上から人々を見回しただけで、飛び降りずに帰ってしまい、皆不思議がる。娘は供の者に「あれだけ殿御を集めても、良い男はないものじゃなあ」と言う。
『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」 ダマヤンティ姫の婿選びの儀式に、神々がナラ王そっくりに変身して現れ、瓜二つの5人の中から、姫は本物のナラ王を見出さねばならない。姫は、ナラ王への一途な愛を神々に訴えかけ、心を動かされた神々が本来の姿に戻ったので、姫はナラ王の首に花輪をかける。
★2.婿にしたい男に毬を投げる。
『西遊記』百回本第9回 陳光蕋(こうずい)は科挙の試験に合格し、帝から「状元」の称号を賜って、長安の街を3日間練り歩く。ちょうど、宰相の1人娘温嬌が婿選びのため、刺繍をした毬を楼上から道行く人に投げる折であり、温嬌は陳光蕋を一目見て、彼に向け毬を投げ下ろす。2人は結婚し、玄奘が生まれる。
『西遊記』百回本第93~95回 三蔵法師(=玄奘)一行が天竺国の街に入った時、国王の公主(=娘)が婿選びの儀式を行なっているところで、公主は楼の上から刺繍をした毬を三蔵に投げつける。実は公主の正体は妖精で、三蔵を夫として彼の元陽真気を奪い、太乙上仙になろうとしたのだった。しかし孫悟空がこれを見破り、妖精を退治した。
★3.心ひかれる美男に果物を投げるのは、婿選びの変形であろう。
『蒙求』44「岳湛連璧」 晋の潘岳(=安仁)はたいへんな美男だった。若い頃、洛陽の道を行くと、出会う女性たちが手をつないで彼を取り巻き、果物を投げ与えた。潘岳は車を果物いっぱいにして、帰って来た〔*『唐物語』26では、「道で出会う女が恋慕のあまり、橘の枝を折り取って投げつけた。女たちが皆そうしたので、橘の実が車いっぱいになった」と記す〕。
『会議は踊る』(シャレル) ウィーン会議のために訪れたロシア皇帝アレクサンドル一行の馬車に、街の娘クリステルが歓迎の花束を投げる。それが爆弾と誤認されて、現場は大騒ぎになる。クリステルは、罰として鞭で尻を25回打たれることになるが、執行直前にアレクサンドルが来て、クリステルを赦免する〔*アレクサンドルはウィーン会議出席の合間に、クリステルとのデートを楽しむ。しかし「ナポレオンが流刑地エルバ島を脱出した」との急報があり、アレクサンドルはクリステルに別れを告げて、ロシアへ帰る〕。
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