治療標的として
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β-カテニンはがんの発生に関与しているため、β-カテニンの阻害には大きな関心が注がれ続けている。しかし、ARMドメインの結合部位の標的化は、結合表面が広範囲にわたり比較的平坦であるため容易ではない。一方で、効率的な阻害を行うためには、表面のより小さな「ホットスポット」への結合で十分である。LEF1のβ-カテニン結合モチーフに由来するヘリカルペプチドはそうした結合を行い、β-カテニン依存的な転写の完全な阻害に十分である。近年、ARMドメインの同じ強く正に荷電した領域を標的にした低分子化合物もいくつか開発されている(CGP049090、PKF118-310、PKF115-584、ZTM000990)。さらに、β-カテニンのレベルはWnt経路の上流の構成要素やβ-カテニン分解複合体の標的化によっても影響を受ける。さらにBCL9のリクルートに必要なN末端の結合ポケットもWntの標的遺伝子の活性化に重要である。この部位はカルノシン酸などの標的となっており、こうした補助的結合部位も薬剤開発の魅力的な標的となっている。精力的な臨床前研究にもかかわらず、治療薬として利用可能なβ-カテニン阻害剤はまだ存在しない。β-カテニンの核内への蓄積を減少させる他のアプローチとしては、ガレクチン-3(英語版)の阻害によるものがある。ガレクチン-3阻害剤GR-MD-02は現在進行性黒色腫の患者に対して、FDA承認用量のイピリムマブとの併用臨床試験が行われている。
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治療標的として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 08:44 UTC 版)
がんの進行におけるオートクリンシグナルの機構に関する知識の蓄積によって、治療のための新しいアプローチが明らかになってきた。例えば、オートクリン型Wntシグナルは、WntのアンタゴニストやWnt経路のリガンド-受容体相互作用を阻害する他の分子を用いた治療介入のための新たな標的となりうる。さらに、乳がん細胞の表面でのVEGF-A(英語版)の産生とVEGFR-2(英語版)の活性化は、乳がん細胞がVEGFR-2のリン酸化と活性化によって自身の成長と生存を促進するオートクリンシグナルループが存在することを明確に示している。このオートクリンループも魅力的な治療標的の一例である。 HER2を過剰発現している乳がんでは、HER2/IL-6/STAT3シグナルが新たな治療戦略の標的となる可能性がある。ラパチニブなどのHER2キナーゼ阻害剤は、HER2過剰発現乳がんにおいてニューレグリン1(英語版)(NRG1)を介したオートクリンループを破壊することで臨床的有効性を示す。 PDGFRシグナルの場合、優性阻害型PDGFRの過剰発現や抗がん剤イマチニブの投与によって転移を防ぐ治療効果の研究がマウスで行われている。 さらに、他では起こらないようながん細胞のオートクリンシグナルを活性化する薬剤が開発される可能性がある。例えば、アポトーシスの阻害に対抗するSmac/Diablo(英語版)の低分子模倣化合物は、自己分泌されるTNFαを介して引き起こされる化学療法薬によるアポトーシスを亢進することが示されている。Smac模倣化合物は、オートクリン型TNFαシグナルに応答して、RIPK1(英語版)依存的なカスパーゼ-8活性化複合体の形成を促進し、アポトーシスをもたらす。
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治療標的として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/08 05:02 UTC 版)
「3C様プロテアーゼ」の記事における「治療標的として」の解説
プロテアーゼ3CLproは、ウイルスRNAから翻訳されたポリタンパク質をプロセシングするのに不可欠な役割を果たしているため、コロナウイルス感染症の潜在的な創薬ターゲットである。リガンド非結合SARS-CoV-2プロテアーゼ3CLproと、α-ケトアミド阻害剤との複合体のX線構造は、SARS-CoV-2感染症の治療のためのα-ケトアミド阻害剤の設計の基礎となる。3CLproおよび相同3Cpro(英語版)に対して開発されているプロテアーゼ阻害剤(英語版)には、CLpro-1(英語版)、GC376(英語版)、ルピントリビル(英語版)(rupintrivir)、PF-07304814、PF-07321332、化学物質11a(chemical 11a)、化学物質11b(chemical 11b)がある。2020年9月、静脈内投与のプロドラッグ PF-07304814 が臨床試験に入り、2021年2月、経口投与のフォローアップ薬PF-07321332が被験者の募集を開始した。長期分子動力学シミュレーション(1.50 µs)の研究では、ウーロンホモビスフラバンA(茶の生理活性物質)が、これまでに提案されていた再開発の抗HIV薬よりも強力なSARS-CoV-2のMpro阻害剤として報告された。報告では、堅牢な計算戦略によって、研究室内で合成されたアクリジンジオンアナログDSPD-2およびDSPD-6は、抗ウイルス剤(サキナビル、saquinavir)よりも有利なMM-PBSA相互作用エネルギーを示し、Mproの結合ポケット内の奥深くに収まったと述べている。これらのアクリジンジオンアナログは、許容できるADMET値と低毒性プロファイルを持っている。SARS-CoV-2 Mproの結合部位への分子の結合能は、結合ポケットのS1サブサイトの残基とより効率的に相互作用するように分子を標的化することで高めることができる。 SARS-CoV-2の3CLpro阻害剤の設計戦略と、化学構造11aおよび11b。 3CLpro阻害剤と化学物質11a 3CLpro阻害剤と化学物質11b
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治療標的として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/12 17:28 UTC 版)
RasとB-Rafの変異はどちらも腫瘍形成に重要であるため、特にV600E変異を有するB-Rafを標的としたいくつかのRaf阻害剤ががんに対する治療薬として開発されている。ソラフェニブは臨床的に有用な最初の薬剤であり、腎細胞がんや悪性黒色腫など、それまでほとんど治療不能であった悪性腫瘍に対して薬理学的な代替手段をもたらした。ベムラフェニブ、レゴラフェニブ、ダブラフェニブなど、いくつかの分子が続いて開発されている。 ATP競合型のB-Raf阻害剤は、K-Ras依存的ながんに望ましくない影響を与える可能性がある。これらはB-Rafの変異が主要因である場合にはB-Rafの活性を完全に阻害するが、それとともにB-Raf自身のホモ二量体化やc-Rafとのヘテロ二量体化も促進する。そのためRafの遺伝子には変異が存在せず、Rafの共通の上流活性化因子であるK-Rasに変異が生じている場合には、c-Rafを阻害するのではなく活性を高めることとなる。この「逆説的」なc-Rafの活性化が起こる可能性があるため、B-Raf阻害剤による治療を始める前には遺伝子診断によって患者のB-Rafの変異のスクリーニングを行う必要がある。
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