政教分離法
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政教分離法(せいきょうぶんりほう、フランス語: Loi de séparation des Églises et de l'État)は1905年12月9日、フランス共和国(フランス第三共和政)によって公布された、ライシテ(教会と国家の分離の原則、政教分離原則)を規定した法律。これにより、フランスの反教権主義(反カトリック主義)は完成し、国家の宗教的中立性・無宗教性、信教の自由の保障が図られた。
注釈
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ドレフュス事件とは、1894年、フランス陸軍参謀本部の将校アルフレド・ドレフュス大尉がドイツのスパイ容疑で告発されるという事件。彼がアルザス出身のユダヤ人であったことから、ジャーナリズムを中心に反ユダヤ主義的世論が興るとともに、それに対して自然主義文学の作家エミール・ゾラがフェリックス・フォール大統領への公開質問状「私は弾劾する」を新聞紙上で発表して再審を求めるなど、一個人の冤罪事件から自由と民主主義をめぐる議論や国家体制をめぐる議論へと発展した。1899年、ドレフュスは再審の結果、有罪判決が下されたうえで大統領令によって特赦されるという政治決着が図られて世論は沈静化し、1906年、ドレフュスに対し無罪判決がくだされた。
- ^ 急進党(急進共和・急進社会党)は、フリーメイソン、自由思想協会、人権同盟などを基盤に急進派の大同団結によって1901年に成立した、ジョルジュ・クレマンソーを党首とする急進共和主義・自由主義の政党で、その名から、社会主義政党と考えられがちだが、実際には中南部の農民層を支持基盤とする中道政党で、また、フランス初の本格的政党である。フランス革命が政党も含め結社全般を危険視したのに対し、第三共和政では、1884年に労働組合結成を認めるなど結社全般に対し寛容であった。社会主義者たちも1905年に統一社会党を組織した。なお、急進党は第一次世界大戦後には社会党・共産党を中心とした、いわゆる「人民戦線内閣」に加わっている。長井(2006)p.164
- ^ コンブ自身は、かつて神学を専攻し、修道会系コレージュで教授した経験をもっていた。谷川(1999)p.186
- ^ ガリカニスム(ガリカン教会主義、フランス教会自立主義)とは、フランスのカトリック教会のローマ教皇庁からの独立、教皇権の制限を求める政治的、宗教的立場のことであり、フランスの古名「ガリア」に由来する。ガリカニスムの絶頂期はフランス絶対王政下のいわゆる「アンシャン・レジーム」といわれた時期で、フランス革命によって打撃を受けたが、ナポレオンによる第一帝政とウィーン体制下のフランス復古王政において復活を遂げ、その後も大きな影響力をもった。ガリカニスムは、ポリティークの思想や王権神授説にささえられ、イエズス会などの教皇至上主義(ウルトラモンタニズム)とは激しく対立した。
- ^ 第一次世界大戦直前には「挙国一致」の名のもとに、無認可だった修道会の復活が公的に承認されるにいたった。谷川(2001)p.367
- ^ ライシテの語源は、ギリシャ語の「ラオス (laos、民衆)」「ライコス(laikos、民衆に関すること)であり、トルコの「ライクリッキ」も同一起源である。意味合いとしては、「政教分離」「教育・婚姻など市民生活における法制度の宗教からの独立」「国家の宗教的中立性」を含んでいる。なお、フランス第四共和政憲法にみえる「ライック」とは、「ライシテ」の形容詞形である。
出典
- ^ a b 谷川(1999)pp.179-185
- ^ 谷川(2001)pp.350-353
- ^ a b c d 谷川(2001)pp.362-364
- ^ a b c プライス(2008)pp.282-286
- ^ a b c d e f 長井(2006)pp.164-165
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 谷川(2001)pp.364-367
- ^ 満足圭江「現代フランス社会における『ライシテ』概念の変容』(東洋哲学研究所)
- ^ a b c 金七(2011)p.97
- ^ a b 小泉洋一, 「トルコの政教分離に関する憲法学的考察 : 国家の非宗教性と宗教的中立性の観点から」『甲南法学』 48巻 4号 p.297-345, 2008年, 甲南大学法学会, NAID 110007119662, doi:10.14990/00000673 。
- ^ 小泉洋一, 「トルコにおけるライクリッキの原則と憲法裁判所 : 2008年の二判決におけるライクリッキ」『甲南法学』 51巻 3号 p.213-237, 2011年, 甲南大学法学会, NAID 120005577035, doi:10.14990/00000721。
- 1 政教分離法とは
- 2 政教分離法の概要
- 3 政教分離法の影響
- 4 脚注
- 政教分離法のページへのリンク