採用凍結・不採用国
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 06:07 UTC 版)
「F-35 (戦闘機)」の記事における「採用凍結・不採用国」の解説
トルコ トルコ空軍のF-4E約40機、および改修機である54機のF-4E 2020の後継機としてA型の導入を計画している。100機の導入を予定しているが、2014年-2023年にかけての引き渡し予定は遅れた。2013年1月12日に2012年に決定していた最初の2機の調達の延期を表明したが、全体で100機の調達に変更はないという。2014年2月27日、トルコはF-35の調達を2015年に開始すると発表した。 機体納入に先駆けて、2008年より国内のトルコ航空宇宙産業(TAI)のアンカラ工場にてF-35の中央胴体を含む部品製造を始めており、完成品はロッキード・マーチンのフォートワース工場やイタリアのFACOに400機分納品する予定である。2017年7月12日にはトルコ機となる中央胴体をフォートワース工場へ出荷した。 2018年06月18日、ロシア製対空ミサイルシステムS-400など理由に、アメリカ上院はF-35製造におけるトルコの参加中止を規定した2019年国防予算案を承認した。しかし、6月21日にはトルコ空軍の1号機のロールアウト式典が行われており、今後は米国アリゾナ州ルーク空軍基地での訓練を開始するとしていた。トルコのメンテナーは既にフロリダのエグリン空軍基地で訓練を開始しているという。 7月13日、マティス国防長官はトルコへの参画中止は国際的なサプライチェーンの混乱を引き起こし遅れと1億ドルのコスト増を招くと主張し反対を表明した。 8月13日にはトランプ大統領は、ペンタゴンが90日間でトルコ・アメリカ関係に関する報告を出すまで、F-35のトルコへの販売を禁止する内容を含んだ2019会計年度の国防権限法(NDAA)案に署名した。この報告にはトルコのF-35プログラムへの参加の評価、ロシアのS-400ミサイル防衛システムの購入によるリスクが含まれていると予想される。他トルコが2016年10月からスパイ容疑で拘束されているアメリカ人のアンドリュー・ブランソン牧師のことも影響しているとされている。 2019年4月1日、S-400防衛システムの調達を着々と進めるトルコに対して、米国防総省はF-35の維持・補修部品やマニュアル等の関連機器の出荷を停止したと発表した。さらに、トルコが担うF-35の中央胴体や着陸装置等の部品生産の代替供給元を探している事を明らかにし、トルコをF-35の生産網から排除する姿勢も見せた。実現した場合、F-35の生産が遅れるリスクは避けられず、50~75機の生産に影響を与え、部品調達の遅れを取り戻すには最大2年かかると指摘されている。アリゾナ州空軍基地でのパイロット訓練は継続され、年中のトルコ本土配備は目指されていたが、6月10日にはパイロットへの訓練が打ち切られ、フロリダ州エグリン空軍基地で保守要員の一部訓練が行われるだけとなった。 2019年7月12日、トルコに配備される最初のS-400が搬入された。これに対して、7月17日に米ホワイトハウスは、トルコへのF-35の売却を凍結(購入契約が済んでいる30機のF-35A)、多国間生産体制からトルコ企業を排除する方針を示した。訪米しているトルコ人パイロット20人は7月末までに国外退去。トルコ企業が生産してきた約900種類の部品は2020年3月末までに参画を打ち切るとしている。 トルコは別途ステルス戦闘機TFXを開発中であり、F-35売却凍結を受けてこちらの開発に発破がかかる可能性がある。 中華民国 中華民国空軍では、有事の際に中国の先制攻撃によって空軍基地が開戦数時間以内に無力化される可能性があるとして、一部高速道路を代替滑走路に指定し、定期的に訓練を実施しており、以前から内陸から滑走路なしでも航空戦力を展開できるV/STOL機の導入が望まれていた。このため、早い段階から統合打撃戦闘機計画のV/STOL能力を持つ最新の高性能ステルス機F-35Bに関心を示しており、導入に意欲的だった。 しかし、アメリカ政府は中国との軍事バランスを考慮して、F-16C/Dの販売やF-16A/Bの改修ですら躊躇しており、F-35の販売は実現困難である。代案としてアメリカ海兵隊でF-35Bへの機種転換により余剰となった中古のハリアーIIを販売する案が出ているが、中国がJ-20、J-31等の第5世代ジェット戦闘機や独自のV/STOL機を開発している現状で、空対空戦能力に劣り、機体寿命・改修コスト・部品調達に不安のあるハリアーIIに中華民国側は否定的である。また、アメリカは中国のスパイに対する懸念から、スパイ対処法律の強化を交渉の条件に求めていた。 結局、2019年8月に中華民国はF-16Vの導入を行うこととなりF-35の導入断念された。ただし、将来F-35を持つ必要性はあるとしており、期間は10~15年は必要として、依然強い購入意思を示している。 アラブ首長国連邦 導入を希望しており、2017年のドバイ航空ショーでは採用が確定的と噂されていたこともあった が、中国製のUAVを導入していることや、プログラム参加国であるイスラエルの懸念などから、当時のアメリカ側は交渉の実施を否定していた。その後、2020年にUAEとイスラエルが国交正常化したことで、アメリカ合衆国の態度が軟化、国務省はUAEへF-35を含む各種兵器を販売する意向を議会へ通知し、2021年1月20日に正式に契約を行った。FMSによる契約で、F-35Aを最大50機を調達する予定。この契約は、2020年アメリカ合衆国大統領選挙において敗北したドナルド・トランプ大統領(当時)が大統領任期を満了する1時間前に行われた。 アメリカ国内では、UAEが行ったイエメンとリビアに対する違法な空爆を黙認するという懸念から反対する意見もある。2020年アメリカ合衆国大統領選挙において反対の立場を明らかにしたジョー・バイデン候補(当時)は、大統領就任後、自身の大統領就任前に行われたFMS契約による兵器売却を一時停止することを決定しており、契約の見直しの可能性が懸念されている。 2021年12月14日、UAEはF-35取得のための協議を中断したと発表した。
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