拉致事件の発覚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 23:17 UTC 版)
1997年(平成9年)1月21日、失踪事件を調べていた国会議員秘書兵本達吉より、横田めぐみが北朝鮮に拉致されていたことが発覚し、平壌で生きているという情報が日本に入った。1997年2月3日、「産経新聞」が彼女は「北朝鮮に拉致されている可能性が高い」と報じ、つづいて日本国内のマスコミがこれを一斉に報道した。実名を出すかどうかは苦悩の末、父親の滋が実名を出すことを決断した。 これに対し、北朝鮮は1997年2月10日の平壌放送で「月を見て吠える狂犬の声」と日本の報道を強く非難し、横田めぐみ拉致の事実を完全に否定した。父の横田滋らは、3月25日、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(通称、「家族会」)を結成し、滋はその代表となった。なお、この日は、めぐみをかわいがっていた彼女の祖父が北海道で死去している(93歳)。 横田滋・早紀江の夫妻が街頭活動を開始したのは4月のことであった。4月28日には、北朝鮮外務省のスポークスマンが「日本から中学生を拉致するいかなる必要も利害関係もない」と断言し、「日本が、わが方と対決方向に進むなら、相応の対抗措置を取らざるを得ない」との立場を示した。日本では警察庁の伊達警備局長が、同年5月に衆議院予算委員会で横田めぐみに関し、「総合的に検討した結果、北朝鮮に拉致された疑いがある」と答弁した。横田夫妻は各機関・政治家にめぐみの救出をはたらきかけ、陳情活動を展開した。世論の反応は大きく、8月には50万筆以上の署名を集めて首相官邸に届けた。 2002年(平成14年)9月17日、日本の小泉純一郎首相が訪問して金正日国防委員長と会談を行い、日朝平壌宣言を発表した。同時に開かれた第1回日朝首脳会談において、北朝鮮側はそれまで「事実無根」と主張してきた拉致問題を一転して正式に認め、謝罪した。 70〜80年代に特殊部署が妄動主義、英雄主義に駆られ、工作員の日本語教育と、日本人に成りすまして韓国へ侵入するために日本人を拉致したが、このような誤った指示をした幹部を処罰した…。工作船は軍部が訓練の下でした。私は知らなかった…。再びないようにする。 金正日はこのように述べて「責任ある者」としてチャン・ボンリムとキム・ソンチョルを処罰したと説明した。北朝鮮側はまた横田めぐみを含む13人の拉致を認め、うち5人が生存、彼女を含む8人が死亡したと発表した。めぐみは「キム・チョルジュン」なる朝鮮人と結婚、一女を出産したのち自殺したと説明した。このとき、駐英公使の梅本和義がめぐみの娘キム・ヘギョンに面会した。外務省飯倉公館で「横田めぐみ死亡」を両親に宣告したのは官房長官の福田康夫と外務副大臣の植竹繁雄であった。政府は、北朝鮮が示した死亡日時も告げず、単に死亡したという結論だけを伝え、「死亡情報」については何の裏付け作業もしていなかった。 2002年10月25日にフジテレビが日本国内に流したキム・ヘギョン(当時15歳)のインタビュー報道では「おじいさん、おばあさんに会いたい」と涙を流す一方、母めぐみについては自分が5歳のときに「死亡した」と淡々と述べた。また、ヘギョンが「母の形見」として示したバドミントンのラケットは、チームメイトたちによれば間違いなく「ヨコ」が中学生のときに使っていたものであった。 2004年(平成16年)11月、北朝鮮が夫が保管していたという横田の「遺骨」や写真、自筆メモ等を提出した。すべての鑑定結果が出たのは2004年12月24日であった。警察庁科学警察研究所と帝京大学法医学研究室による鑑定の結果、警察庁科学警察研究所は「遺骨が高温で焼かれていたため、DNAを検出できなかった」とした一方、帝京大は「横田めぐみさん以外の人のDNAを複数発見した」と報告。政府はこれを受け、「『遺骨』の一部から横田のものとは異なるDNAが検出された」と発表した。提出された写真については、背景に金正日政治軍事大学が写り込んでいるものがあり、また、影の映り方が不自然で合成と思われる写真もあった。「遺骨」の鑑定について横田滋は「国家間の交渉でニセの遺骨を渡すなど、どう考えても許せることではない」と語った。 しかし、その直後、横田めぐみの遺骨鑑定を担当した帝京大学医学部の医師は、英科学誌「ネイチャー」において、「遺骨は何でも吸い取る硬いスポンジのようなものだ。もし、遺骨にそれを扱った誰かの汗や脂がしみ込んでいたら、どんなにうまく処理しても、それらを取り出すことは不可能だろう」、「自分が行った鑑定は断定的なものではない」と語っている。
※この「拉致事件の発覚」の解説は、「横田めぐみ」の解説の一部です。
「拉致事件の発覚」を含む「横田めぐみ」の記事については、「横田めぐみ」の概要を参照ください。
- 拉致事件の発覚のページへのリンク