国際金融経済分析会合の開催と増税の2年半延期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 14:45 UTC 版)
「第3次安倍内閣 (第1次改造)」の記事における「国際金融経済分析会合の開催と増税の2年半延期」の解説
2016年2月第2週の株価の週間下げ幅が、リーマン・ショック直後の2008年10月以来の大幅下落となった。年明けから続く中国や資源国経済減速懸念に加え、イエレンFRB議長発言を受けてのアメリカ経済減速懸念などにより、リスク回避による円高が進んだ。一連の売りの発端となったのはドイツ銀行で、2015年決算が巨額赤字となり、自己資本に充当している偶発転換社債が自己資本が目減りすると利払いが停止される債券であるため「巨額赤字が続けば利払いが打ち切られる」との臆測がパニック売りにつながった。また、中国の貿易統計も外需、内需ともに振るわず、1月の貿易総額は2年連続の大幅縮小となった。 このような情勢を受けて、政権内で消費増税凍結の声が大きくなった。2月15日に発表された2015年10~12月期の国内総生産は年率換算は1.4%減、個人消費が前期比0.8%減となり内需の不振が確認(消費総合指数では2015年10月から12月の3ヶ月間で消費指数がマイナス0.7)された。経団連会長の榊原定征は、政府に対し「来年に消費税の引き上げが予定されており、これを乗り切るだけの経済の自力、底力をつけることが重要」と要求したが、14日には朝日新聞が企業向けの「政策減税」の恩恵の約6割を資本金100億円超の大企業が占め、「果実」が家計に回っていない事を批判的に報じた。また、世界経済の減速を受けて米財務長官のジェイコブ・ルーは、各国に対して成長促進と雇用創出のため政策を総動員するよう求め、OECDも株価の急落や新興国の資本流出・債務問題など金融システムに相応の不安があるとし、日本には財政再建に代わる新しい戦略を求めた。 2月26日の会見で、官房長官の菅は消費増税について「橋本龍太郎首相の時代に、税率を引き上げて税収が下がった経験がある」と指摘した。橋本はかつて「私は平成9年から10年にかけて緊縮財政をやり、国民に迷惑をかけた。私の友人も自殺した。」と消費増税を後悔していた経緯があり、安倍も周辺には増税で景気が冷え込んだことをぼやいているとされる。長引く消費の低迷に加えて年初来からの円高・株安の進行もあり、世論調査では産経新聞と朝日新聞の調査で共に増税反対が60%、日本経済新聞でも58%が反対となった。一方、財務省はファッションの世界で活躍する十河ひろ美や消費増税に関する集中点検会合のメンバーに選ばれていた武田洋子、中空麻奈らとともに財政問題に関する啓蒙活動を展開した。 3月2日、首相の安倍は「世界経済の持続的な力強い成長に貢献していきたい」とし、伊勢志摩サミットに向けて「国際金融経済分析会合」の開催を表明した。ただ、2014年秋に首相サイドは財務省の「増税容認」で固めようとする根回しに激怒し「点検会合」の後に増税を延期した経緯がある。今回も財務省側は消費税12%を公言するといった活動を既に行うなど、首相サイドを強くけん制している。2014年の点検会合では「増税反対」を唱えている学者・エコノミストは財務省主導で外されてしまい、首相サイドが片岡剛士、若田部昌澄らを急遽復活させたが増税賛成派が多かった。中にはエボラ出血熱を理由に挙げて景気後退を擁護したメンバーもいたが、ポール・クルーグマンの助言などを受けて増税延期が決定した。安倍は2013年の点検会合の際に有識者・専門家60人のうち増税の予定変更すべきという意見が1割超しかおらず、予定どおり増税を実行したところ点検会合で出された意見の多くは見通しを外して景気が失速し、不信感を持ったとみられている。3月16日の初会合ではジョセフ・スティグリッツが参加することになった。22日の会合にはポール・クルーグマンの参加も決まった。 「日本の消費税議論#消費税率8%への引き上げに関する集中点検会合での意見一覧」も参照 16日の会合でスティグリッツは「2、3年前は世界経済がここまで弱くなるとは誰も予想していなかった」と述べ消費増税への反対を進言。同日、貿易総額の収縮が鮮明となっている中国では、首相の李克強が「景気下押し圧力は引き続き増している」と表明した。17日の会合ではデール・ジョルゲンソンが「投資から消費に負担をシフトさせるべきだ。」とし、消費増税は必要と述べた。22日にはクルーグマンが消費増税への反対を表明した。4月7日の会合ではジャン・ティロールが、気候変動やヨーロッパ経済の不安定性などについて説明したが消費税には言及しなかった。 3月31日の日米首脳会談では、G7が世界経済を牽引していくべきとの考えで両首脳が一致した。4月1日に発表された日銀短観では先行きの見通しの厳しさが確認され、6日からは山本幸三らによる議員連盟「アベノミクスを成功させる会」の会合が開催されることになった。また世論調査では、予定通リの増税に反対する声がJNNで82%、FNNでは81.3%に達した。5月31日、増税を2年半延期する方針が与党で了承された。
※この「国際金融経済分析会合の開催と増税の2年半延期」の解説は、「第3次安倍内閣 (第1次改造)」の解説の一部です。
「国際金融経済分析会合の開催と増税の2年半延期」を含む「第3次安倍内閣 (第1次改造)」の記事については、「第3次安倍内閣 (第1次改造)」の概要を参照ください。
- 国際金融経済分析会合の開催と増税の2年半延期のページへのリンク