党大会の推移
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「朝鮮労働党第7次大会」の記事における「党大会の推移」の解説
2016年5月6日午前、第7回党大会は4・25文化会館で開幕した。出席者は、各級党代表会で選挙により選ばれた3,467人の議決権代表者と、200人の発言権代表者の全員。金正恩は公式の場では初となるスーツ姿で登場し、このほか髪型やメガネ、体型、手のしぐさなどは祖父の金日成国家主席を意識したものだとされている。開会の辞では金正恩が水爆実験と地球観測衛星光明星4号の打ち上げ成功に言及。その後、金正恩を党の最高位に推戴すべきか議論を行うことが予告された。 5月6日から7日にかけて行われた中央委員会事業総括報告では、金正恩が以下のような内容の発言を行った。 軍事・南北統一関連北朝鮮は責任ある核保有国であり、敵対勢力が先制攻撃を仕掛けてこない限り核を使用することはない。 北朝鮮は核拡散防止の義務を誠実に履行し、非核化された世界を実現するため努力する。 南北朝鮮の自主的統一は朝鮮労働党の確固たる意志であり、「祖国統一三大憲章」を守りながら統一の道を切り開く。 朝鮮半島の平和統一のため、南北の軍事当局間の対話が必要である。両者による会談を行うことで、衝突の危険の除去、緊張状態の緩和、双方の関心事項について解決が可能となる。 敵対勢力が戦争を起こすなら侵略者を無慈悲に懲罰し、祖国統一を成し遂げる。 アメリカは対北朝鮮制裁を解除し、朝鮮半島問題から手を引くべき。 経済関連北朝鮮経済は先端水準に達した分野がある一方で、著しく遅れている分野があると指摘し、2016年から2020年にかけて遂行すべき「国家経済発展5カ年戦略」を提示。 核開発と経済発展を並行して進める「並進路線」を取る。 4大先行部門(石炭、電力、金属、鉄道)と基礎工業部門を正常軌道に乗せる。 農業と軽工業の生産量を増やすことで国民生活を向上させる。 特に電力問題の解決は、経済発展と国民生活の向上のため重要であり、力を注ぐ。 朝鮮労働党関連党や国の最高権力を狙い、党内に分派を作った現代版宗派分子を断固粛清(2013年12月の張成沢粛清事件を指す)することで、主体革命の命脈を守った。 権勢や官僚主義、不正腐敗行為が根本から消えるまで、戦いを根気強く強力に続ける。 並進路線については、これは一時的な対応策ではなく、恒久的な戦略的路線であり、最も正当で革命的な路線としている。金正恩は党大会3日目(5月8日)に、並進路線を貫徹するよう改めて強調している。また、「現代版宗派分子の粛清」などは党中央委員会行政部長だった張成沢ら幹部の粛清を正当化し、今後も粛清が続くことを予見するものとされた。 続いて行われた討論では10人ほどの参加者全員が金正恩の政治功績を賞賛し、事業総括報告に対する賛同を表明した。主な発言内容は以下のとおり。 金己男党中央委員会書記局書記 - 朝鮮労働党と革命の百年の大計の進むべき道を明るく照らした歴史的な報告であり、全面的に支持・賛同する。 李明秀朝鮮人民軍総参謀長 - 主体の軍建設思想と戦略戦術、卓越した錬金術で革命武力強化の最全盛期を広げた。 趙延俊党組織指導部第1副部長 - 歴史的報告で提示した綱領的な課題を高く掲げ、朝鮮労働党を偉大なる金日成・正日・正恩の党として強化発展することに積極的に貢献することを誓う。 朴奉珠内閣総理 - 社会主義強盛国家建設にあたり生じる全ての問題の完璧な解答を示した綱領的旗印であり、闘争の旗印である。全面的に支持・賛同する。 またこの討論では、李明秀総参謀長が、既に韓国全土、アジア太平洋地域のアメリカ軍基地、アメリカ本土を攻撃するための準備は整っており、金正恩の命令が下れば敵対勢力の頭上に核の雷声を鳴らし、アメリカという土地自体を地球上から完全になくすと威嚇する発言を行った。ただし、この発言は翌8日の労働新聞には掲載されておらず、行き過ぎを是正したのではないかという推測もなされた。 5月9日に決定書が採択され、金正恩が行った事業総括報告に対して支持・賛同が表明された。決定書の主な中身は以下のとおり。 金正恩の事業総括報告は偉大な綱領であり、全幅的に支持賛同する。 金正恩を最高位と位置付ける。 北朝鮮は責任ある核保有国であり、先制攻撃されない限り、先に核兵器を使用しない。 世界の非核化実現に向け努力。 強力な核抑止力によってアメリカによる核戦争の危険を除去する。 核兵器の小型化、多種化を高い水準で実現することで、核戦力を質的・量的ともに強化し、北朝鮮を「東方の核大国」として輝かせる。 北朝鮮と友好的な国との協調関係を拡大させる。 連邦制による平和的な南北朝鮮統一を目指す。ただし、韓国が制度統一に固執し戦争を起こすならば、正義の統一戦争で反統一勢力を無慈悲に払いのけ、統一を達成する。 この報告書で金正恩は最高位に奉るとされた。5月9日の会議では第7期中央委員会を選出したほか、党規約が改正され、党を代表し、領導する最高領導者の職名を朝鮮労働党委員長とした。また、朝鮮労働党が「偉大なる金日成・金正日主義党」であるとし、金正日を「朝鮮労働党の象徴、永遠なる首班」とすることや、党大会中に金正恩が繰り返した「並進路線」も党規約に盛り込まれた。金永南最高人民会議常任委員長が金正恩を党委員長に推戴することを提案し、金正恩が約9分にわたって閉会の辞を閉会の辞を述べて党大会は閉幕した。 党大会が終了した翌5月10日には平壌の金日成広場で党大会開催を祝う群衆大会、市民によるパレードが開催され、金正恩をはじめ金永南、黄炳瑞、朴奉珠、崔竜海といった最高幹部も壇上に姿を見せた。金正恩はこの場で演説を行い、その中で今回の党大会を「党を一層強化し、革命の偉業を完成させるための戦いにおいて新たな分水嶺となる、勝利と栄光の大会」であるとした。
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