代表的な民族料理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 03:41 UTC 版)
キャベツ料理に強い愛着を抱いている民族は多い。キャベツを主材にした料理には、ゴウォンプキ(ポーランドのロールキャベツ)、シチー(ロシア料理)、カプシニャック(ポーランド料理)、ガルビュール(フランス南西部の料理)、ロートコール(ドイツ料理)、キムチ(朝鮮料理)、コルカノン(アイルランド料理)、コーンビーフとキャベツ(アメリカ料理)、ザウアークラウト(ドイツ料理)などがあり、いずれも家庭的な伝統料理のイメージがある。料理の主材でキャベツが使われているのは北半球地域のみで、南半球の地域では料理の主役になっている例はひとつもなく、シチューやスープ、あるいはピラフやペイストリーの一具材としての使用にとどまる。 キャベツ・スープ スープは英語で、もとは「すする」「浸す」を意味するデンマーク語に由来し、ヨーロッパ中世以降に、深皿にパンを入れてその上からスープを注いだ習慣から名付けられた。キャベツ・スープは、裕福層から貧民層まで一緒に使われる具材に多少の違いはあるが、19世紀以降のフランスでは様々なレシピ本が出されるほど国民的に食べられていた料理で、ベーコンや他の野菜と一緒に煮込んでパンに浸して食べるスープである。ガルビュールもフランスの伝統的なキャベツ・スープの一種である。シチーはロシアのキャベツのスープで、肉などで出汁を取ったスープに粗く刻んだキャベツかザウアークラウトと挽き割りオオムギを入れて、サワークリーム、香草などで風味づけしたもの。カプシニャクはウクライナやポーランドで食される、ザウアークラウトとポーク・ソーセージに他の野菜を入れて小麦粉でとろみづけしたスープである。ポルトガルのカルドヴェルデ・スープはポタージュで、キャベツの他にジャガイモ、タマネギ、ブロスとトロンシューダ・ケールというアプラナ属の野菜を使う。さらにスペインにはカレドガジュゴという、カルドヴェルデの変形でトロンシェンダー・ケールの代わりにカブの一種であるグレロを入れたスープと、同じくキャベツが主役のコシード・マドリレーニョという豚肉・ソーセージ・ヒヨコ豆入りのスープがある。 ロールキャベツ ロールキャベツを表わすキャベツの巻き物と、その反対の詰め物の料理は、バルカン半島諸国から北極圏までの広範囲に分布している。バルカン半島と中東にはサルマ(トルコ語の「包む」に由来する)があり、一握りのコメをキャベツの葉で包んだ料理である。また、北欧のスウェーデンにはドルマ(トルコ語の「詰め込まれる」に由来する)があって、キャベツの玉の芯をくり抜いてコメを詰め込んだ料理である。ポーランドのゴウォンプキ、ウクライナのホロブツィ、リトアニアのバランデーリ、ロシアのゴルゥツィなど、東欧諸国の肉とコメを包んだロールキャベツには、いづれも「小さなハト」を意味する名前がつけられている。ロシアのロールキャベツは甘酸っぱいソースとサワークリームとともに食卓に出し、ウクライナのロールキャベツは具にソバ・アワ・コーンスターチなども一緒に詰める。ロールキャベツの中に詰める具材は諸国ごとに変化し、バルカン半島の住人はザウアークラウトの葉で肉だねを包み、中東には肉が全く入っていないサルマもある。使われるスープは、ベースにトマトソースやブイヨンなど、普段家庭にストックしてあるものが使われる。フランスでは、キャベツの葉でパン生地を包んで鍋に入れるという伝統料理があり、ガスコーニュ地方ではブラゼールというキビのパンが使われている。キャベツ芯をくり抜いて具を詰めたヨーロッパの詰め物料理は、たいてい酸っぱくて塩気がある。キャベツの詰め物はハンガリーでは国民的料理として親しまれているが、詰め物料理の場合、キャベツの玉を調理が終わるまでそのままの形で扱うのは大変なので、大半の国ではその代品としてロールキャベツが作られている。 ザウアークラウトと肉の煮込み ザウアークラウトとソーセージをよく食べる地域では、この2つを煮込んで料理する。バルカン半島諸国のポドヴァラクと、ポーランドのビゴスは、ほぼ同じ内容の料理であり、タマネギとザウアークラウトを炒めて、肉で煮込んだ料理である。フランスでは、ソーセージとザウアークラウトをワインで煮込むことが多い。アメリカのペンシルベニア州に移民したドイツ人のあいだで作られるグンビスまたはクナブルスとよばれる料理は、肉と千切りキャベツが層になっているビゴスに似た料理とされる。 ダンプリング モンゴル帝国時代にモンゴル人によって広められたといわれるダンプリングは、丸く延ばした小麦粉の生地を半分に折って具材を包んだ料理である。南は中国の餃子、西はロシア、ポーランドのピエロギ、ウクライナのヴァレーニキまで広がり、高緯度地域になるほど具材は肉に加えてキャベツ(もしくはザウアークラウト)を包む傾向が強い。 ジャガイモとキャベツを使った料理 ヨーロッパ北部地域は、ジャガイモとキャベツを組み合わせた料理が多岐にわたる。ジャガイモをざく切りのキャベツとともに炒めた料理に、イギリスのバブル&スクイーズ、カタロニアのトリンチャットがある。スコットランドのランブルディサンプスは、マッシュポテトに千切りキャベツを混ぜてオーブン焼きした料理である。また、茹でたキャベツとジャガイモを合わせて潰した料理に、アイルランドのコルカノン、オランダのスタンポット、フランドル地域のストゥンプがある。 その他 コールスローは18世紀のアメリカで呼ばれ始められたサラダで、粗みじん切りのキャベツをサラダと一緒にドレッシング・マヨネーズと混ぜて作る。ドイツ人、チェコ人、北欧人は秋になると、赤キャベツと肉を使った甘酸っぱい蒸し煮料理を作る風習がある。北欧では真冬に「グリュンコールエッセン」「コールファート」とよばれる、大酒を飲むために一緒にキャベツなどを食べることを口実に連れ立って居酒屋へ出歩く風習がある。ニュージーランドでは、マオリ族の伝統料理ハンギで、蒸し焼きにする肉などの食材を包むためにキャベツの葉を使う。朝鮮人は白菜以外にもキムチに用いる。中米エルサルバドルにはクルティドというキャベツの酢漬けがあり、ププサという軽食に付け合わせる。
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