メディア・リテラシーの基本原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 04:52 UTC 版)
「メディア・リテラシー」の記事における「メディア・リテラシーの基本原理」の解説
最初のメディア・リテラシーの基本原理は、AMLのバリー・ダンカンらによるメディア・リテラシーの8つのキー・コンセプトである。ダンカンらはマスターマンの理論の影響を強く受け、メディアの内容よりも伝達形態の重要性の指摘した「メディアはメッセージ」 の言葉で著名なマクルーハンのメディア論と融合させながら、1987年にこれらのキー・コンセプトを作り上げた。この8つのキー・コンセプトはオンタリオ教育省発行の「メディア・リテラシー・リソース・ガイド」に収録されている。さらにオンタリオ州のみならずカナダ全国の教職員研修に用いられた。同書では、メディア・リテラシーを次のように定義づけている。 「メディア・リテラシーはマスメディアの性質、マスメディアによって用いられたテクニック、およびこれらのテクニックの影響を十分かつ批判的に理解できるよう生徒たちを支援することに関わっている。さらに言えば、メディアがどのように機能し、メディアがどのように意味を作り出し、メディアがどのように組織され、そしてメディアがどのように現実を構成するのかということを生徒がより理解し、楽しむことができることを目的にしている。メディア・リテラシーはまた、生徒に対してメディア作品を創造する能力をもたらすことも目的としている。」 AMLによる8つのキー・コンセプトは以下の通りである。 8つのキー・コンセプト メディアはすべて構成されたものである メディアは現実を作り出す 視聴者はメディアを探りつつ意味を解釈する メディアは商業的な意味を含む メディアはイデオロギー的、価値的メッセージを含む メディアは社会的、政治的意味を含む メディアにおける形式と内容は密接に関連する メディアはそれぞれ独自の美的形式を持つ しかし、これらのコンセプトにおけるメディア概念にはあいまいさがあるため、このコンセプトの作成に関わったジョン・プンジェンテは、メディアの概念をより明確にした改訂を行った。さらに現在のAMLはメディアとメディア・テクストを概念的に区別した新たな改訂版を公表した。その内容は以下の通りである。 8つのキー・コンセプト(改訂版) メディアは、現実のリプリゼンテーションを構成する メディアは、多様な現実をリプリゼンテーションする オーディエンスは、メディア・テクストの意味を探りつつ解釈するために過去の経験とスキルを用いる メディア・テクストは、経済的な意味を持つ メディア・テクストは、価値観を持ったメッセージを伝える メディア・テクストは、政治的、社会的メッセージを伝える メディア・テクストの形式と内容は、意味を伝えるために相互に結びつく メディアは、それぞれ何が印象的で何が好ましいかを決定する独自の美的形式を持つ AMLがメディア・テクストと呼ばれる用語を用いるのは、AMLの活動がマスターマンの理論の影響を強く受けており、その内容がオンタリオ州のカリキュラムにも反映されているからである。オンタリオ州のカリキュラムでは、メディア・リテラシーは、「多様なフォーマットのメディア・テクストの技とメッセージ交換に対する学習の結果」とされており、メディア・テクストは、オーディエンスに意味を伝える印刷、口語、映像などあらゆるフォーマットを含み、意味を伝えるための「言語」を持つ。 アメリカの研究者や活動家は1990年にトロント近郊のゲルフで開催されたAMLの会議に参加し、自分たち自身のセッションを開いた。ここから実質的なアメリカのメディア・リテラシー運動が始まった。参加者はマリリン・コーヘン、デビッド・コンシダイン、レネ・ホッブス、ダグラス・ケルナー、ロバート・クーベイ、キャスリン・モーディ、ジム・ポッター、レネ・チェロウオレアリー、マリエリ・ローウェ、エリザベス・トーマン、キャスリン・タイナーの11名であった。この参加者グループが中核となり、アメリカでCMLやAMLA(現在のNAMLE)を設立することになる。 まず、フランシス・デイビスはAMLの8つのキー・コンセプトをもとにテレビを見るためのメディア・リテラシーの5つのアイデアを整理した。ただしこの5つのアイデアは保護者や子どもにもわかるように、テレビにのみ焦点を当てて作られたものであった。CMLの設立者の一人であるトーマンは、このアイデアをさらに発展させ、5つのコンセプトとしてまとめた(Thoman, 1993)。さらに、トーマンはフレイレの理論をもとに、アウェアネス、分析、リフレクション、アクションの4つのステップを含む「エンパワーメント」の過程を描き、それをアクション・ラーニング・モデルとした。(Thoman, Ibid.) その後、2002年にトーマン、ジョルズ、ジェフ・シェアらは、CMLから『21世紀へのリテラシー:メディア・リテラシー教育の概要とオリエンテーション・ガイド』(現在は第二版)を公表する(Thoman, Jolls, and Share, 2008)。このガイドには、5つのコア・コンセプトに加えて5つのキー・クエスチョンが追加された。その理由は、子どもたちにコア・コンセプトを直接理解させることが難しいため、質問の形にする必要があったからである。キー・クエスチョンは読解と制作の二種類があり、どちらもコア・コンセプトと関係付けられている。さらに、メディア・リテラシーの5つのスキル(アクセス、分析、評価、創造、参加)、エンパワーメントのスパイラル(アウェアネス、分析、リフレクション、アクション)が追加された。 なお、同ガイドは、メディア・リテラシーを「教育への21世紀を志向するアプローチであり、多様なフォーマットのメッセージを使用するための、アクセス、分析、評価、創造、参加の枠組みをもたらすとともに、社会におけるメディアの役割の理解と民主主義社会の市民に求められる探究と自己表現のスキルを構築するもの」と定義している。コア・コンセプトとキー・クエスチョンは以下の通りである。 メディア・リテラシーのコア・コンセプト メディア・メッセージはすべて「構成された」ものである メディア・メッセージは創造的言語とそのルールを用いて構成されている 多様な人々が同じメディア・メッセージを多様に受け止める メディアは価値観と視点を含んでいる ほとんどのメディア・メッセージは、利益を得るため、および/または権力を得るために作られる 5キー・クエスチョン:読解 誰がこのメッセージを作ったのか? どんな創作テクニックが私の関心を引くために使われたのか? このメッセージの他の人々の理解はどのように異なっているか? このメッセージにはどんな価値観やライフスタイル、視点が表現されているか、あるいは排除されているか? なぜこのメッセージは送られたのか? 5キー・クエスチョン:制作 私は何を制作しているのか? 私のメッセージはフォーマット、創造性、テクノロジーに意見が反映されているか? 私のメッセージはターゲット・オーディエンスの心を捉え、動かしているか? 私はコンテンツの中で、価値観やライフスタイル、視点を明確かつ一貫して構成したか? 私は目的を効果的に伝えたか?
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「メディア・リテラシー」の記事における「メディア・リテラシーの基本原理」の解説
メディア・リテラシーの概念をより正確に理解するためには、その基本原理と発展過程を理解する必要がある。メディア・リテラシーの基本原理の多くはイギリスのメディア・リテラシー研究者のマスターマン(Len Masterman)の研究に負っている。それに加えて、マスターマンに影響を与えた理論や思想、さらにはカナダのメディア研究者マーシャル・マクルーハンの影響についても考慮する必要があるが、本項では主としてメディア・リテラシーの基本原理に焦点を当てる。メディア・リテラシーの基本原理にとって重要な概念は、プロダクション(生産・制作)、リプリゼンテーション(テレビや演劇など、構成された表現・表象)、オーディエンス(視聴者)であり、これらの基礎概念の理解が求められる。また、用語としてのメディアがより具体的な表現であるメディア・テクストやメディア・メッセージといった用語に変化していった過程や、社会化の主体(エイジェント)としてのメディアという表現にも注目するとよいだろう。さらに、メディア・メッセージと情報の違いについても考えてみるとよい。メディア・リテラシーの基本原理は、メディア・リテラシーとは何か、メディア・リテラシーにおけるメディアとは何か、メディア・リテラシー教育はどのようにされるべきかといった原理的な問いに答えるものである。
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