メディア・リテラシーの原点
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「メディア・リテラシー」の記事における「メディア・リテラシーの原点」の解説
今日のメディア・リテラシーの理論にもっとも大きな影響をもたらしたのはマスターマンの『Teaching the Media』(日本語訳『メディアを教える』世界思想社) である。マスターマンの理論はイギリスのみならず、カナダのAMLやアメリカのCMLおよびNAMLEによって北米のメディア・リテラシー教育運動に大きな影響をもたらした。これらの組織はユネスコによるMIL(メディア情報リテラシー)プログラムの中心的位置を占めており、マスターマンの理論は今日のグローバルなメディア・リテラシー教育運動の土台となっている。 彼のメディア・リテラシー思想の土台として、まず第一に、F・R・リーヴィスとデニス・トムソンらの文芸批評論があげられる。マスターマンは、彼らの『文化と環境』(1933) の出版がイギリスにおけるメディア教育の始まりだったと述べている(マスターマン邦訳前掲、p.53)。しかし、彼らの立場は新たなメディアがもたらす大衆文化から伝統的文化を守ることであった。 マスターマンは、彼らの伝統的なメディア教育論に対して、ロラン・バルトの記号論、スチュアート・ホールらのカルチュラル・スタディーズ、アントニオ・グラムシのヘゲモニー論やパウロ・フレイレの批判的リテラシー論・解放の教育学をもとに、新しいメディア教育学を構想した。その理論構成は、ほぼ同時期に構築されたヘンリー・ジルーの批判的教育学からの影響を見ることができる。実際、カナダ・トロント市にあるAML(メディア・リテラシー協会)は、マスターマンの理論のみならず、批判的教育学(英語版)の理論からも影響を受けたといわれている。 このようにして構築されたマスターマンの理論によれば、メディア・リテラシーのもっとも重要な原則は、「メディアは能動的に読み解かれるべき象徴的(あるいは記号の)システムであり、外在的な現実の確実で自明な反映などではない」という点にある。そして、メディア・テクストを批判的に読み解くこととは、「単に送り出されたメッセージの内容だけでなく、それがどのように構成されどのような効果を生み出しているかに注意を向けること」であり、その教育の目的は「批判的主体」を育てることであった。これがメディア・リテラシーにおける批判的思考の原点である。
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